Civilian Watchdog in Japan-IT security and privacy law-

情報セキュリティ、消費者保護、電子政府の課題等社会施策を国際的視野に基づき提言。米国等海外在住日本人に好評。

スイスの銀行合併に端を発したインサイダー取引疑惑と年金基金運用の金融監督のあり方論議(その1)

2006-12-02 15:32:02 | 金融機関等の法令遵守

 

Last Updated:April 30,2024

  スイスの年金基金業界は、2005年9月12日に公表された民間投資銀行スイス・ファースト銀行(Swissfirst Bank)とベルヴュー銀行(Bellevue Bank)の合併に伴うインサイダー取引を巡るスキャンダルは、連邦議会、連邦金融監督委員会(Eidgenössischen Bankenkommission EBK)(筆者注1)、規制監督機関(連邦財務省金融局:Eidgenössisches Finanzdepartement: EFD )(筆者注2)証券取引所(SWX Swiss Exchange)、州検察当局、株主、金融業界団体(スイス銀行協会:Schweizerische Bankiervereingungスイス・ファンド協会:Schweizericher Anlagefondsverband:SFA)等の動きや、この問題に関するメディアの過剰反応(有罪・無罪か、利害関係者が得た金額の大きさ等)をも巻き込んで依然、混沌とした状況にある。

 筆者は2006年8月末に「swissinfo」(筆者注3)でこの記事を読んでいたが、CEO等による個人的なスイス刑法等の違法行為(インサイダー取引)の問題と理解していた。しかし、①Swissifirst BankのCEOのトーマス・マター氏(Thomas Matter)(筆者注3-2)

Thomas Matter氏

の2006年10月末の辞任、②合併公表前にスイスの世界的有名企業が管理していた年金基金のファンド・マネージャーが同行の株式をマター氏に売却したことから、これらマネージャー自体に対しても州検察当局の捜査が行われていること、③EBKや連邦議会(筆者注4)が法規制の強化を明言していること、④基金の監督機関であるチューリッヒ州(canton)やバーゼル州も独自に調査を行っていること、⑤スイスの法制度や伝統的に強固な基盤をもつ関係業界の自主規制ルール(行動規範)ではどのように考えられまた教育が行われているか、等につき個人的な関心が強まった。

 詳しく調べてみると、これらの問題について各メディアの取り上げ方、視点、関係者の意見等まさに「百科騒乱」である。これでは何が本質的な問題か良く分らないように思えて、素人ながら①スイスの証券取引に関する規制・監督法制の現状、②業界の自主規制の現状と在り方、③本件についての関係者の意見の整理を試みる次第である。
 このような問題は世界中どこの国でもありうるし、英米等ではきっとこのような不公平な株主の扱いはクラス・アクションを引き起こすであろうし、また今話題の米国企業改革法(SOX法)における法令遵守に抵触する問題と言える。

 一方、さる11月21日に、わが国の金融庁は「金融商品取引法(通称:日本版SOX法)」で求められている「財務報告にかわる内部統制の評価及び監査」に関する実施基準の公開草案(筆者注5)を発表し、12月20日を期限として同草案に対するパブリック・コメントを受け付けている。この実施基準は、日本版SOX法に基づいて企業が内部統制を実施する際に留意すべき事項を取りまとめた実務上のガイドラインとでも言うべきものであるが、以下紹介するスイスの金融機関の役職員の行動規範や業界自主ルールの評価と立法強化を巡る議論の内容は、無視しえない重要な課題を提起していると言えよう(特に4.(3)⑦参照)。

 なお、関係する問題が多く、1回でまとめ切れなかった。2回に分けて登載するので通しで読んで欲しい。

【2022.2.22 補追】

 このグループは、2006年12月にBellevue GroupAGとなった旧SwissfirstAGで構成されていた。 メディア報道の結果として既存および潜在的なスイス・ファーストに対する顧客が失ったという信頼は、この名前で銀行を運営し続けることを不可能にした。
 同じくグループに所在する旧スイス・ファースト銀行AGは、スイス・ファーストAGの旧プライベートバンキング部門であり、2006年12月にBanque Pasche SAに売却され、2007年5月に解散した。
以前はスイスファーストバンクAGのプライベートバンキングで活動していた旧スイスファーストバンクAGバーゼル支店は、2006年11月にアドラーアンドカンパニーに売却された。(Wikipedia(https://de.wikipedia.org/wiki/Swissfirst)から 抜粋、仮訳する )

1.事実関係
①2005年9月12日にスイスの上場企業であるSwissfirt bankとBellevue bankの合併が公表された。この合併では新株の発行が行われていない。このため株価は必然的に上昇するのである。
②スイスの世界的企業(名前が上っているのは、ジーメンス(Siemens AG))、Roche(製薬会社)、Coop(大手スーパー)、リーター(Rieter:繊維機器メーカー)等が管理していた年金基金がSwissfirst銀行株を株価上昇前の9月8日、9日にかけてマター氏に売却した。(筆者注6)
③同行の株価は2005年9月から2006年3月にかけて約50%値上がりしたが、他方各基金合計で約2,000万スイス・フラン(約18億8,500万円)の得べかりし利益に対する損失が発生した。
④一方、マター氏が得た株価上昇による利益は5,000万スイス・フラン(約47億1,300万円)といわれている。なお、マスコミに対し同氏は「合併時の株取引の問題についてインサイダー取引の問題が生じないよう予めチューリヒ州当局から許可を得ていた」と述べているが、チューリヒ州検察当局の検察官は明らかにこの点を否定している。
⑤チューリヒ州の検察当局は刑事訴訟手続きに入るため、2006年8月以降マター氏や前記大手企業のファンド・マネージャー(リーターの基金運用マネージャーであるユルグ・マイヤー (Jürg Maurer)、ジーメンスの運用マネージャー等)はいったん逮捕され事情聴取を受けていたが、その後、釈放されている。また司法省関係者は、8月17日にマター氏に関する捜査(筆者注7)のため同行に警察の家宅捜査が行われた旨公表している。

2.スイスのインサイダー取引を巡る法的な規制
(1)スイスのインサイダー取引と刑法の規定
 インサイダー取引の処罰規定はスイス刑法(1987年12月18日改正法成立、1988年7月1日施行)第161条(筆者注7-2)である。同条は証券取引におけるディーラー等関係者が知りうる特権を悪用して利益を得たり損失の発生を回避する行為を犯罪行為として処罰するものである(筆者注8)。証券専門用語も含まれ、わが国や欧米ではあまり紹介されない条文の内容なので、ここで同条原文(スイス連邦政府サイトを含め公式な英語バージョンはない)を仮訳しておく(わが国を始め欧米主要国の法律を読み慣れた人は、同条の極めて文学的な内容に戸惑うであろう。したがって、ここではあえて内容は変えないが一部意訳した)。なお、2009年時点のスイス刑法第161条のローファームの解説論文「 Revised Swiss Insider Rules—A Change of Paradigm   」が参考になる。

 【補追】2022.2.26

刑法第161条は2013年に廃止(Re­pealed by No II 3 of the FA of 28 Sept. 2012, with ef­fect from 1 May 2013 (AS 2013 1103BBl 2011 6873).)され、その後、スイスはインサイダー取引につき数次にわたり抜本的な法改正を行っている。単なる補追ではできない作業なので2022.2.26に新規ブログをアップした。

【第161条第1項】取締役会(Verwaltungsrates)、執行役員会の構成員、監査役(Revisionsstelle)または会社等の代表権を有する者ないし子会.社に対し経営管理権を行使できる者または官庁や公務員ならびにこれらの者を支援する立場にある者が、有する機密性の高い情報を利用した事実(Tatsache)の提供行為を行った場合は、禁錮または罰金に処す。 
① 自己または他人の利益を得る目的で、スイス証券引所の取引時間内または時間外を問わず株価(Kurs)を公開すること。


② 特定の会社の証券(Wertschriften)または相当する有価証券報告書(Bucheffekten)の内容の公表すること。
③ 取引に影響する重要な予測手段となる株価やオプション情報を第三者に知らせること。
【第161条第2項】第1項に挙げた事実(Tatsache)に関する情報を直接または間接において得た者または違法に情報を得るため、金銭的利益の提供を行った者は、1年以下の禁錮または罰金に処す。(筆者注9)(筆者注10)
【第161条第3項】第1項および第2項の規定する事実(Tatsache)について、直前の新出資権(Beteilingungsrechte)の発行または会社の合併または同等の事実についても同一の犯罪の事実とみなす。
【第161条第4項】合併する両株式会社の計画されている場合において、その両社について第1項から第3項を準用する。
【第161条第5項】第1項から第4項の規定は、出資証明書、その他証券、有価証券報告書または会社に関するオプションまたは外国会社に関する情報の誤用について準用する。

(2)スイス刑法第161条に解する法律専門家の意見
筆者は同条に関するスイスの弁護士の見解を調べてみた。限られた時間しかなかったので方向感のみ参考としてもらいたいが、おおよそ正しい内容と言えよう。
① 161条が制定される以前は、スイスの関係者は外国の捜査当局のインサイダー容疑捜査手続きを支援することはなかった。これは、スイスではインサイダー取引きに関する捜査対象行為が犯罪とはみなされなかったことによる。本条は、外国(米国を意識した)に対しインサイダー捜査の相互協力について法的根拠を与えることになる。しかしながら、連邦最高裁判所(Federal Tribunal)の解釈を始め、本規定の適用範囲は極めて狭い(機密情報の範囲や金融取引上の利益を得ること、株式市場への影響等の意義の判断等)。
② 同条に基きインサイダー取引で捜査を受けた人の数は少なく、最終的に有罪となった者もいない。
③インサイダー取引と関連して「スイスの銀行の機密保持義務(Banking Secrecy)」
について補足しておく。銀行法第47条がその根拠条文であるが、顧客との委任契約(contract of mandate)に基づくものであり、その違反行為者(取締役会等経営機能を有する機関の構成員、従業員、代理人、清算人およびコミッション・エージェント(第三者たる銀行に代って証券の売買を行うディーラーを言う))は民事責任を負うが刑事責任は問われない。

(3)スイスの証券取引に関する主な法令
 以下の法令が中心となるが、スイスではあくまで自己規制(self-regulation)原則が働いている。(筆者注11) 証券取引所のサイトでは連邦法、連邦規則、証券取引規則(指令)等の相関関係のスイス連邦議会サイトで一覧を見ることができる。なお、スイスでは公式には英語版はしようできないので、以下のリンクはドイツ語版で行った。またスイス連邦議会法令サイトで関連法にあたられたい。(筆者注11-2)

1995年3月24日証券取引所および証券取引に関する連邦法(証券取引所法、BEHG) (RS954.1)

・1996年12月2日証券取引所及び証券取引に関する政令(証券取引所令:BEHV(SR 954.11)

・1997 年 6 月 25 日証券取引所および証券取引に関するスイス連邦銀行委員会規則 (証券取引所条例- EBK、BEHV-EBK)(SR 954.193)

 また、EU独自の対応として次の4つのEU指令がスイスでも重要である。特に③および④指令が重要である。
Directive 79/279/EEC(上場に関するEU指令)
Directive 82/121/EEC(中間暫定報告に関するEU指令)
Directive 2003/71/EC(EU規制市場への発行目論見書に関するEU指令)
Directive 2003/6/EC(インサイダー取引と相場操作に関するEU指令)
 なお、スイス以外の国でも一般的に「front running」は違法行為である。これは
株式ブローカーが債券市場が動くことを予想して(その結果、株価に影響する)、顧客の注文の受ける前に自分の注文を先に執行する非倫理的な違法行為である。front runningは「買い」(その場合ブローカーは自分の勘定で買って顧客が買い注文を出す前に株価を押し上げる)また「売り」(その場合ブローカーは顧客が売り注文を出す前に自分で売って株価を引き下げる)が含まれる。これらの行為は
インサイダー取引または市場操作(market manipulation)とされる。他方、ブロカーが顧客勘定に関し買いと売り同時に行う「parallel running」取引もスイスでは違法とされる。(スイス金融アナリスト協会のベスト・プラクティス・ハンドブック(Handbook of Best Practice)第4編12~13頁参照。ただし、この解釈はメディアでは一般的でない。)
 
(4)スイスにおける金融機関の自主規制の在り方と内容
①スイス金融アナリスト協会(SFAA)は、2004年6月に「Handbook of Best Practice」をまとめ公表している(筆者注12)。5編からなるものであるが、これは金融機関そのものと言うよりアナリスト個人が自ら役職員や従業員として遵守すべき基本行動原則をまとめたものである。特に参考になると思われるのは、第3編「スイスにおける金融アナリストに関する法的枠組み(Legal Framework)」と第5編「スイス銀行協会、証券取引所、スイス経済団体連合会(Economiesuisse)(筆者注13)、スイス・ファンド協会、スイス年金基金協会(Association Suisse des institutions de prévopyance:ASIP、)の定めた行動規範サイトの言語別URL一覧」である。
②前記ハンドブックでは、各業界団体の代表的自己規制ルールの概要を紹介している
・ スイス銀行協会:現在、銀行・証券会社とともに働くファィナンシャル・アナリスト、投資アドバイザーおよびポートフォリオ・マネージャーに関する自己規制については次の3つの文書が定められている。
「2003年金融調査の独立性に関する指令」、「1997年証券ディーラーのための行動規範」、「2003年ポートフォリオ・マネジメント・ガイドライン」
・証券取引所:「コーポレート・ガバナンスに関する情報統治指令」
・スイス・ファンド協会:「スイス・ファンド業界における行動規範」

3.関係機関の動向と意見
 前述した通り、各機関が今回のインサイダー取引問題についてそれぞれの立場から意見を述べている。なお、スイス銀行協会やスイス社会保障基金は連邦政府が進めようとしているより厳格な規制監督立法については両者とも否定的である。

(1)金融監督委員会および財務省金融監督局
現在検査中と言うこともあり対外的なコメントはない。しかし、銀行監督委員会の強力な監督権限に基づく銀行や基金の法執行行為への懸念は、民間金融機関のすべてが持っているといえる。

(2)銀行協会
スイス銀行協会やスイス・プライベート銀行協会(筆者注14)は、本件についてメディア等に対し冷静な対応を求めている。スイス銀行協会の事務局長であるミシェル・Y・デロベール(Michel Y. Dérobert)氏は次のように述べている。
「スイスの年金基金分野は従来行動規範により規制されてきたが、銀行がすべての分野で規制されているのと比較すると、厳しい規制は行われていないと言える。年金は、個人が退職時にその後の生活に必要な資金確保が目的であり年金基金の運用等取扱いは極めて重要である。一方、銀行はどちらかといえばより資産家が余裕資金を再投資することを前提に運用している。その意味で、同様の規制が年金基金に適用される必要があろう。」

(4)ファンド協会
ハンスペーター・コンラッド(Hanspeter Konrad)部長は、「基金は銀行や保険会社と異なり、目下政府が考えているような法執行にあたる中央機関の設置は不要である、各基金は、自己規制原則に基づく行動規範のより厳格化を目指すべきである」と述べている。

(5)独立機関であるスイス社会保障基金(Swiss Social Security Fund )の理事長ユーリッヒ・グレーテ(Ulrich Grete)はスイスの基金運用部門に対する監督が、連邦社会保障局(Federal Office for Social Security )と各州の機関とに二元化している点が問題であると指摘している。
 さらに、「現行の連邦による法令の規制は複雑すぎ柔軟性がなく、また基金にとって非生産的であり、国の干渉を範囲の限定を求めるべきであり、あるべき論としては、年金基金の運用責任者の選任並びに運用が外部から干渉されないという意味の厳格なガイドラインを設定すべきである。すなわち、現在の制度的基本問題を解決するためには、基金におけるトップレベルの管理責任者として企業の雇用者側と従業員の双方からなる代表により構成するといった法的な根拠を明確化すべきである。」旨述べている。

***************************************************************************************

(筆者注1)EBKは2000年1月1日に施行された1999年4月18日の連邦憲法第98条において、EBKの監督活動に関する憲法上の枠組みがある。

EBKの活動とその実施規定を支配する最も重要な法的規律は、連邦法に記載されており、EBK自体も通達回状ニュースレターを発行している。

また、EBKの監督活動に関連する他の機関の特定の規制がある。さらに、EBKは、連邦財務局と連邦民間保険局と共に、規制プロセスに組み込まれた効果的な金融市場規制に関するガイドラインを策定した。(EBKのHPを仮訳)

  EBKは邦行政機関であるが、連邦参事会(Schweizerischer Bundesrat:大統領をトップとする連邦行政執行機関:わが国ではいわゆる内閣)から個別の支持を受けず独立性を持ち、また中央行政政府の一部でもない。しかしながら、行政機能上は連邦財務省に統合されており、金融部門に対する独立した幅広い監督機能を有している。具体的には次の業務を行っているが、わが国で言うと金融監督庁の機能に近いと言えよう。

 EBKの機能強化はこれだけに止まらない。EBKが発した「金融機関監督および内部統制に関する回状(circular:法令の内容に関するに基づく立法・行政機関の解釈通達のことである)」の施行日は2007年1月1日である。同回状の施行によりその内容が取り込まれたため、スイス銀行協会は自ら定めていた「内部統制に関するガイドライン」を廃止した。
 EBKは2006年10月4日に銀行、証券取扱事業者およびこれらの金融コングリマリットに対し、効果的企業統治(とりわけ法令遵守条項や説明義務条項)の重要性を強調した。しかし、一方で世界的に法制度化されている「内部通報者保護(whistlebrowing)」について、連邦議会が支持したにもかかわらず同ガイドラインではその取込みを否定している点である。

① 銀行・債券ディーラーに対する監督
② 銀行・債券ディーラー・投資ファンド業者に対すると同程度の監査法人に対する監督
③ 投資ファンド(基金)に対する監督
④ 担保付債券業務(mortgage bond business)の監督
⑤ 証券取引所と債券市場の監督
⑥ 上場企業の持株と公的な株式公開買付けの開示
⑦ マネロンに関する銀行監督、債券ディーラーおよびファンド・マネージャーの監督
⑧ 銀行および証券ディーラーの倒産と再建に関する決定

以上の関係から、SFBCは財務省金融局とともに中央銀行であるスイス銀行(Schweizerische Nationalbank)との連携を保っている。


【補追】2022.2.23

  スイスの銀行は連邦金融市場監督機構(Eidgenössische Finanzmarktaufsicht FINMA)によって規制を受ける。2007 年 6 月22日に成立した「連邦金融市場監督機構法」(Federal Act on the Swiss Financial Market Supervisory Authority, FINMASA)に基づき、2009 年 1 月に FINMA が設立され、前身の連邦銀行委員会(Swiss Federal Banking Commission)が実施していた銀行監督業務を継承した。
同時に、連邦民間保険局(Federal Office of Private Insurance)、マネーロンダリング取締機構(Anti-Money Laundering Control Authority)も FINMA に統合され、ここに銀行、保険会社、証券取引会社、投資信託会社等の金融仲介機関及びマネーロンダリング等を横断的に規制・監督する体制が構築された。FINMA は規制対象の金融機関へ免許の発出権限を有し、法律、命令等の遵守状況を監督する。また、組織的、機能的、財政的にも連邦政府から独立し、連邦議会に直接報告を行う。(FINMAのHPを仮訳)

FINMAサイトの注書き連邦憲法、連邦法規制、SFBCガイドラインの公式テキストに関する限り、英語では入手できない。したがって、ドイツ語またはフランス語で相談することができる。英語は公用語ではないため、SFBCは英語で公式翻訳を行っていない。

(筆者注2)連邦財務大臣のハンス・ルドルフ・メルツ(Hans-Rudorlf Merz)氏は、インサイダー取引・情報管理に関する規則強化を明言している。また、スイス連邦財務省の組織図を掲げる。

(筆者注3)Swissinfoニュースは世界的な観点で比較すると珍しいことに日本語バージョンがある(ドイツ系のメディアでは比較的日本語バージョンが多い)。ただし、同ニュースでは、法律や金融制度に関する専門的な解説はない。誰がいくら儲けたといった偏ったメディアの視点がぬぐいされないといった方が正確か。

(筆者注3-2)トーマス・マター氏はその後政界に移り、すなわち2011年5月、チューリッヒ州のスイス国民党(SVP)の代表者から国民評議会の候補者として指名され、選挙では25位から14位に上がることができた。2014年5月末にクリストフ・ブロッチャーが驚くほど辞任したため、私は2014年6月2日に国民評議会のメンバーとして宣誓され、2015年10月に再選された。2016年4月からは、スイスの党指導部の一員であり、財政担当も務めている。(トーマス・マター氏のHP から抜粋)。

(筆者注4)連邦議会(下院)は、2006年8月末に行った年金基金のファンド・マネージャの銀行口座内容に対する年次監査において、基金の運用管理面のより厳格な透明性確保を求めている。

(筆者注5)http://www.fsa.go.jp/news/18/singi/20061121-2.html

(筆者注6)スイス連邦年金協会(Pensionkasse des Bundes:PUBLICA)はインサイダー騒ぎの中、保有していたスイス・ファースト銀行株を2005年2月28日から同年9月7日までにすべて売却しているが、株価の下落を予想した取引きかどうかについては否定している。なお、PUBLICAは分かりやすく言うと「連邦公務員等共済年金基金協会」である。連邦司法機関・行政機関・議会の官吏、その他政府関係機関の従業員が加入している年金基金である。
http://www.publica.ch/publica/de/news/artikel/00095/index.html
PUBLICAの年金は3本柱からなっている。詳しくは以下のURL(独語、仏語のみ)を参照されたい。
http://www.publica.ch/publica/fr/unternehmen/versichertenkreis/index.html

(筆者注7)新聞記事によれば、家宅捜査により押収された文書は、詐欺、着服、不適切な商取引およびインサイダー取引に関する立件証拠となりうるものとされている。

(筆者注8)http://www.admin.ch/ch/d/sr/311_0/a161.html

(筆者注9)わが国では第194回国会で「証券取引法等の一部を改正する法律」が成立し、2006年7月4日から施行された。この改正によりインサイダー取引は5年以下の懲役、500万円以下の罰金(併科もある)が科されることとなった。また、行為者が法人の業務や財産に関してインサイダー取引を行った場合は、当該法人に対し5億円以下の罰金が科されるといった罰則強化が行われた。特に上場会社に関する重要情報や株価に影響を与える各種内部情報(内部者情報)に接しうる人間が公表前にそれら情報を基に株式の売買を行うケース等が要注意であろう。

(筆者注10)罰則の内容について証券取引所の研修テキストや法曹家による解説では、インサイダー取引の情報提供者(insider)は禁錮3年以下または罰金(併科もある)、情報を得た者(tippee)は禁錮1年以下または罰金と説明している。正確を期す意味でスイス刑法におけるインサイダー取引の罰則規定に関し連邦政府に直接確認するつもりである。

(筆者注11) 金融規制機関であるFINMA  (スイス連邦金融市場監督機構)が、「Self-regulation in Swiss financial market law」と題して詳しく解説している。

(筆者注1-2) 参考として主な金融法名称とコードをあげる。

950 金融業務

951 スイス国立銀行

951.2 公法に基づくその他の信用機関

952 銀行および貯蓄銀行

954 証券

954.1 連邦金融法(FINIG)

954.11 金融機関法施行規則(FINIⅤ)

955 資金洗浄

(筆者注12) http://web.sfaa.ch/web/gw_svfv.nsf/TreatAsHTML/id_8820CCBD040D476FC1256FC000402976/$File/Handbook_of_ethics_binder_version_june_04_final.pdf

(筆者注13) http://www.economiesuisse.ch/d/webexplorer.cfm?ms_sid=0&ddid=BDE0BDCE-5B22-46B8-ADF77B91E1AE597E&id=351&lid=1

(筆者注14) スイスのプライベート・バンクは小さい銀行を含めると400位あるといわれているが、現在も吸収合併が進んでいる(同協会のサイトでは加盟行数は14行である)。老舗プライベートバンクとして有名なのが、ピクテ(Pictet & Cie)とダリエ・ヘンチ(Lombard Odier Darier Hentsche & Cie)等であるが、いずれも200年以上の歴史を持つ。
 スイスのプライベート・バンクは顧客の資産に対してどこまでも責任を負う(無限責任)パートナー・シップ形態をとっている。このパートナー・シップ形態のプライベート・バンクの顧客は顧客資産の3分の2は銀行に運用を任せる一任勘定業務が占めている。資産の保全にも力を入れて何世代にもわたる顧客を持ち、非居住者の利益収入に税金がかからない。スイスのプライベート・バンクのサービスが通常の銀行業務と違う点は一任勘定業務も含め、トラスト(信託)、ファンデーション(財団)の設立、管理、運営の一切を委託可能なことと、銀行名義で取引ができることが挙げられる。

**************************************************************************************************

Copyrights @ 2006-2023  芦田勝(Masaru Ashida ) All rights Reserved



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ドイツにおける電子マネー(e... | トップ | スイスの銀行合併に端を発し... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

金融機関等の法令遵守」カテゴリの最新記事