欧州司法協力機構(Eurojust)がウクライナを支援する共同捜査チーム (Ukraine joint investigation team :JIT) に参加している 7 か国の国家当局は、ウクライナで犯された疑いのある中核的な国際犯罪について、米国司法省との間で了解覚書 (以下、MoU) に署名した。この MoU は、ウクライナでの戦争に関連するそれぞれの調査において、JIT パートナー国と米国当局との間の調整を強化する。
このMoU は 3 月 3 日(金)に、7 つの JIT パートナー国の検察当局のハイレベル代表者と米国連邦司法長官メリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)によって署名された。
筆者は2022年9月23日のブログ 「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!(その3完)」の中で国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏の声明内容等を紹介した。
以下でEurojustのリリース文を補足しながら仮訳する。
President Volodymyr Zelenskiy and ICC Prosecutor Karim A. A. Khan QC(ロイター通信から引用)
1.ウクライナでのJITメンバーと米国が覚書に署名
(ウクライナ)のICC検事総長室内の模様;MoU署名時
中央が米国ガーランド司法長官、右手がICCの主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏
MoUの調印について、Eurojust のラディスラフ・ハムラン(Ladislav Hamran)執行委員会・委員長は次のように述べている。「我々は野心のために団結する一方で、努力においても協調する必要がある。それこそまさに、この覚書が私たちの達成に役立つものである。JIT パートナー国と米国は、協力の恩恵を十分に享受するために、Eurojustの継続的な支援に頼ることができる。」
米国司法長官のメリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)氏は「米国が 7 つの JIT メンバー国全員と覚書に署名する最初の国になることを嬉しく思う。この歴史的な了解覚書は、ロシアのウクライナ侵攻に起因する残虐行為の捜査と訴追に関して、米国と JIT 加盟国との間の調整を正式なものにし、促進するものである。また、この侵略の加害者が、自由で民主的な社会という私たちの共通の価値観を損なうことはないという、世界へのシグナルでもある。」と述べた。
米国との MoU の主な目的は、関係するすべての国家当局によって実施される捜査と起訴の間のより緊密な調整を促進することである。MoU は、協力、情報交換、およびEurojustの支援により開催される調整会議への米国当局の参加のための実際的な取り決めを可能にする。
ウクライナでの戦争開始から 1 か月以内に、Eurojustは2022 年 3 月 25 日にリトアニア、ポーランド、ウクライナ当局による JIT の設立を積極的に支援した。国際刑事裁判所の検察局は、2022 年 4 月 25 日に JIT に参加した。エストニア、ラトビア、スロバキアは2022 年 5 月 30 日に JIT に加盟し、ルーマニアは2022 年 10 月 13 日に加盟した。
JIT は、すべての国家当局が、ウクライナで犯されたとされる核心的な国際犯罪の証拠を確保し、責任者を裁判にかけるためにあらゆる手段を講じるというメッセージを増幅させる。
〇米国の戦争犯罪説明責任捜査チームの立ち上げ
2022 年 6 月 21 日、米国ガーランド司法長官は、ウクライナで戦争犯罪やその他の犯罪を犯した人々の責任を追及する連邦司法省の進行中の作業を強化するために、戦争犯罪説明責任チームの立ち上げを発表した。このチームは、とりわけ、戦争犯罪と人権侵害を含む調査における部門の主要な専門家を集める。
このチームは、刑事訴追、証拠収集、フォレンジック、および関連する法的分析に関する運用支援とアドバイスを含む、幅広い技術支援を提供する。チームの任務の中心的な要素は、ウクライナでの戦争を報道するアメリカ人ジャーナリストの殺害や負傷など、アメリカが管轄する潜在的な戦争犯罪の進行中の調査をさらに進めることである。
米国当局との協力と調整は、Eurojustの米国連絡検察官*によって促進される。
〇Eurojust内にコアとなる国際犯罪証拠データベース(CICED)の設置
JIT や主要な国際犯罪に関するその他の調査をサポートするために、Eurojust は Core International Crimes Database (CICED) を設置した。詳細については、この科学的知見に基づく概要書であるファクトシート(full reportは ダウンロードする)を参照されたい。
ウクライナでの戦争の勃発以降、Eurojust が取ったすべての行動の詳細については、専用の Web ページを参照されたい。
* 次の 10 か国には、Eurojust との連絡検察官がいる: アルバニア、ジョージア、モンテネグロ、北マケドニア、ノルウェー、セルビア、スイス、英国、ウクライナ、米国。
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