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オーストラリアの連邦ブロードバンド・通信・デジタル経済省(DBCDE)サイトに見る詐欺電話被害の急増

2010-10-24 11:01:58 | Phishing ・新型詐欺問題

  

Last Updated: Feburary 20,2021


 筆者は本ブログで「スケアウェア詐欺」「トロイの木馬:ゼウス型」を取上げる一方で、10月6日には北米における「高齢者を対象とする振込め詐欺」について紹介した。

 筆者の手元にオーストラリアの連邦通信監督機関である「ブロードバンド・通信・デジタル経済省(Department of Broadband,Communications and Digital Economy:DBCDE)」大臣スティーブン・コンロィ(Stephen Conroy)からのリリース・メールが届いた。
(筆者注0)

 最近数ヶ月だけ見てもDBCDEや同国の競争規制機関である「競争・消費者委員会(Australian Competition and Commission:ACCC)」に対する消費者からの1ヶ月あたりの「電話詐欺」苦情件数が200件から2000件に急増しているという。

 また、今回のブログでは主要国の“Don’t Call Registry”の実施状況について簡単にまとめておく。この種の基本的なデータが審議会等ごく限られた場でしか公開されていないわが国の実態を踏まえて、このような作業を行う趣旨を理解して欲しい。

 筆者の自宅にも、ひっきりなしにワンギリ電話や時間を問わないセールス電話が絶えない。
 わが国でも“Don’t Call Registry”による規制強化論議が喫緊の課題となりつつある状況なのではないか。


1.詐欺電話の内容
 ACCCや「連邦通信メディア庁(Australian Communications and Media Authority:ACMA)」が公表した詐欺師からの通話内容は次のような内容である。

(1)「あなたのPCはコンピュータ・ウィルスが感染しています。直ちに問題を解決するため、検索用ソフトウェアをダウンロードするので、あなたのクレジットカード情報を送ってください」といって金融取引情報を入手する。
(2)政府からの給付(grant)と称して偽の製品、サービスや現金の給付を受け取るための手続に必要であるとして、資金の提供を求めたり金融取引情報の提出を求める。
(3)銀行手数料や税金の還付が受けられることになったので、その手続のためにあなたの金融取引情報を提供してくださいと呼びかける。
(4)“Do Not Call Registry”(筆者注1)(筆者注2)の登録を有料で代行しますと呼びかける。
(5)録音ガイドで「あなた×××からの休日の無料パッケージ・サービスをうける権利が当りました。すぐに「ダイヤル9××」に電話してください。」と呼びかける。
 この手口はわが国であまり聞かないものなのでACCCサイトの説明で補足する。
①あなたはこのたび×××休日無料パッケージ・サービスに当選されました。
ついてはすぐに「ダイヤル9で始まる」または「1900等19で始まる番号」(筆者注3)に電話してください。
②「ダイヤル9××」等に電話すると今度はオペレータが出てホリデイ・パッケージのセールスを始める。そこではオペレーターはこの権利を生かすには税金分と関連諸手数料として598ドル(約46,000円)を請求する。その際、オペレータはこのお金は一定期間内は全額払い戻される旨説明する。
⑤被害者はクレジットカード情報や金融取引情報を提供して後日、この権利は偽もので詐欺に遭ったことを知る。

2.米国を除く主要国における“Do Not Call Registry”の実施機関とポータル概要
(1)オーストラリア
 連邦通信メディア庁(ACMA)が運営する「Do Not Call Register」
(2) ニュージーランド 
 ニュージーランド・マーケティング協会が運用する任意登録制度“Do Not Mail and Do Not Call Service”
(3)英国
 “Telephone Preference Service(TPS)” は、個人や法人が求められていない営業通話を受けないという彼らの要求を登録できるオプト・アウト制度である。 TPSに番号が登録された会社は登録者に電話をかけないという法的義務が発生する。もともとの根拠法は1999年5月に成立した“Telecommunications (Data Protection and Privacy) Regulations 1999”である。法執行機関は「情報保護委員」である。最新の根拠法は“Privacy and Electronic Communications (EC Directive) (Amendment) Regulations 2004” である。
(4)カナダ
 カナダのラジオ・テレビ・通信委員会が運営する“National Do Not Call List”
(5)オランダ
 オランダが2009年10月1日施行開始した“Do-not-call register”
 なお、オランダの英文ニュースリリースは概要を理解する上で参考になる。

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(筆者注0)“DBCDE”は2007年に設立され、2013年に解散、その機能は、新しく設立された「コミュニケーション・芸術省(Department of Communications and the Arts)」によって引き継がれた。さらにこの部門は、2020年1月31日に、コミュニケーション・芸術省およびインフラ、運輸、都市および地域開発省が合併し、通信、放送分野の政策立案のほか、ブロードバンドの普及や地上デジタル放送への移行等、情報通信の普及・振興に関する施策を実施する「インフラ・運輸・地方開発・通信省(DITRDC)」が発足した。

(筆者注1) 現在、主要国で “Do Not Call Registry”を導入しているのは米国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、英国、およびオランダである。
 米国の“Do Not Call Registry”制度については筆者ブログで詳しく説明している。

(筆者注2)  国民生活審議会消費者契約法評価検討委員会〔不招請勧誘]等で次のような論議されている。しかし、これらの議論を踏まえた今後の明確な見通しはいまだに見えないし、被害は広がるばかりである。
「不招請勧誘については、今回の調査対象とした諸国では、「不招請勧誘」という一般的な形で取り上げて民事ルールを論じる国は見出されなかった。むしろ、郵便、ファックス、電子メールといったような個別媒体を用いた勧誘についての禁止規範をどのように設計するかという、個別問題対応型での処理をする傾向が強い。いずれの諸国においても、契約法や消費者法にかかる一般的な教科書・体系書においても、「不招請勧誘」という一般的な観点から項目を立てて論じるものは、まれである。さらに、とりわけ、アメリカでは、不招請勧誘に関する個別問題対応型のルールは、民事ルールというよりも、事業規制の観点から、業法ルールとして整備されるという傾向にある。・・・、既に不招請勧誘禁止の個別ルールがほぼ確立している領域(なかでも、EU指令において不招請勧誘制度が導入されている電話勧誘、ファックスによる勧誘、Eメールによる勧誘の場面)については、わが国でも早急にこれに対応する制度を準備するに値するものと思われる。」
 なお、わが国のこの種の審議会資料の公平性、専門性は疑わしい。

(筆者注3) 9や 19で始まる電話番号は「プレミアム・レート・電話番号」である。海外では一般的に手数料稼ぎビジネスとなっているものである。プレミアム・レート・電話番号は、ある一定のサービスが提供されるときに適用されるもので、標準より高い通話料が請求される通話のための電話番号をさす。通常の呼び出し電話と異なり、通話料の一部をサービス・プロバイダーに支払うため、呼び出しそのものでサービス企業は収入が得られることが可能となっている。

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