Civilian Watchdog in Japan-IT security and privacy law-

情報セキュリティ、消費者保護、電子政府の課題等社会施策を国際的視野に基づき提言。米国等海外在住日本人に好評。

英国の運輸省民間航空局によるUAS規制の現状と航空安全面やプライバシー面からの新たな課題

2015-03-17 19:47:15 | 個人情報保護法制



 筆者はブログ(その1その2その3完)で米国におけるUAS(Unmanned Aviation System:無人航空機)(またはUnmanned Aerial Vehcles:UAS)の軍や国境警備等におけるこれまで取組やFAA(Federal Aviation Administration)や連邦議会等における法規制の動向等を紹介した。 (筆者注1)
 このような国家レベルやオンライン・ビジネスの問題は別に「ハイテクかつ違法な玩具」としての側面を3月1日付けの英国メデイア「Dairy Mail Online」が論じている。その記事タイトルは「観光客等によるやっかいものドローンの流行:小型カメラつきドローンの無制限な飛行実態は「のぞき魔(Peeping Tom)」として警察等も有効な取締りもできないことから市民等の大きな苦情の原因となっている」である。

 世界レベルで話題となっているDIJ社製小型カメラ搭載型ドローン



 今回のブログは大人用の玩具とはいえ観光客の無差別的な小型カメラつきドローンの無制限な利用の実態には目に余るものがある一方で、警察等による警告は効果があがっていないというのが英国メデイア記事を読んだ印象である。


 さて本論であるが、筆者が本ブログで意図するのはその点ではない。わが国のメデイア等も論じているとおり、ドローンの利用は原発施設検査等社会経済的活動における重要性はいうまでもない。しかし、その半面で前述のブログで述べたとおり、その利用範囲を逸脱した結果は身体生命や経済的等に大きな損失を伴う問題でもある。

 今回は第一部として英国における運輸省・民間航空局(Civil Aviation Authrity:CAA)に見るUASシステムに関する規制の実態を概観する。筆者はこの分野の専門家ではないが、UAS規制の実態としては主要国のなかで先進的かつ明確な制度を有しており、わが国でも法規制制度の検討にあたり参考になりうると感じた。

 第二部として英国メデイアの記事等を参考にして観光客等による無秩序なドローン飛行の実態と警察等による警告の内容等を見る。

 第三部として英国議会の超党派ドローン問題議員連盟の取組みにつき概観する。世界的に見てもこの種の取組例は少ないと思われるし、重要な問題提起を行っている点からあえて取り上げる。

 本ブログでは詳しく立ち入らないが、わが国で最近も話題となっている監視カメラ(CCTV)撮影情報の漏洩問題等はこの問題に対する取組みの曖昧さが背景にあろう。最後に第Ⅳ部で英国の情報保護委員(ICO)サイトの解説内容と比較しつつ気になる問題点を述べておく。
 
 なお、CAAガイダンス中で引用されているEU(欧州連合)の民間航空機産業における安全に関する分野での規制やその管理機関である「欧州航空安全庁(EASA:European Aviation Safety Agency)」 (筆者注2)UAS規制

(Regulations on UAS (drone) explained)の実態を見ておく必要がある。この点については別途まとめる予定である。


Ⅰ.英国における運輸省・民間航空局(Civil Aviation Authrity:CAA)に見るUASシステムに関する規制
1.英国CAAのUASに関する解説サイト「無人航空機と航空機システム(Unmanned Aircraft and Aircraft Systems)」の概観

 なお、英国では「レクリエーション上の模型飛行機の安全使用ガイドライン(CAP 658: Model Aircraft: A Guide to Safe Flying)」 (筆者注3)を別途定めている。

(1)はじめに
 従来、UASは熱心なマニアによるレクリエーション目的の模型無人航空機として使われるだけであった。
 しかし、それらはその後、監視や情報収集といった専門的な利用目的の使用が増えてきている。それに伴い、それらのUASは一般市民により大きな危険をもたらす方法で操縦されてくるようになった。しかし、レクリエーション目的の有人飛行機や模型飛行機と異なり、UASには明確な操縦ガイドラインがないため、その操縦者はかれらが市民を危険にさらす潜在的危険性や本来負うべき責任につき知らない場合がある。
 さらに、現在はより大型のUASが開発されている。これらは、各国家レベルの国内法またはEU法等により指定されかつ承認された標準化された中で製造されており、しばしば飛行するためにひろい空間を必要とする。このため、大型のUASは他の空域利用者と空域や地上で容易に統合して利用できるよう追加的な手段をとることが必要となる。
 2010年1月、CAAは(1)航空機使用業務(aerial work)目的で使用する小型UASの操縦者に求められる条件、および(2)人や資産に接近した「密集地域内」でデータの収集や監視の装備を有し商業目的での飛行する前にACCに許可を得ることについて、新たな規則を導入した。
 その詳細は、以下の点にある。

○小型の無人航空機の操縦にかかるガイダンス
一般的・初歩的ガイダンス
 航空機市場の小型化の最後といえる無人航空機の操縦に関し、その許可(permission)や承認(approvals)に関する決定的な要素は航空機の重量(weight)であり、具体的には20kg以下である。
 また、立法の中で最も重要かつ包括的な条文はANO138条である。常に航空活動において危険にさらすことに関する規定である。すなわち、「人は無謀または過失により人や財産に対し危険にさらす原因をつくったり認めてはならない」と定める。
・用語の定義(255条)
 「小型無人航空機(Small unmanned aircraft)」とは、風船や凧以外のものでその飛行の開始時に取り付けられる品物や備品を含み燃料を除く重量が20kgを上限とする航空機をいう。
「混雑した地域(Congested Area)」とは、市街地、町やコミュニティにおいて住居、商業、産業またはレクリエーションで利用されるすべての地域をいう。

「電気的に推進する航空機」
電気的に推進する航空機では、バッテリー自体が航空機の一部であることに留意すべきである。バッテリーの充電自体が燃料である。すなわち、バッテリーは基本的に「燃料タンク」であり、換言するとバッテリーが上がったときでも重量は変わらない。

特別な規則
 2009年航空規則(Air Navigation Order 2009:ANO)166条および167条につき後記3.で詳しく述べる。

安全性に関する基本ガイド 
 ”You have control”Remember , when you fly an unmanned aircraft(or drone),the responsibility is yours Be safe,be legal )と題するリーフレットである。その裏面に留意事項8つが分かりやすく分類されている。

○CAAの許可手続
私はCAAの使用許可を得なくてはならないか?
② 略す。

○基本用語の定義
「無人航空機(Unmanned Aircraft:UA)」または「遠隔操縦航空機(Remotely Piloted Aircraft:RPA)」は航空機そのものを記述するものとして用いられる。これに対し、「無人航空機システム(Unmanned Aircraft System:UAS)は一般的に航空機のほかに、航空機の操縦にかかる無線データとリンクする管制センターなど操縦にかかるすべての装置を記載するものとして使用される。また、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)の用語は、なお一部の分野で使用されるているが、航空機の定義分類が明確化する中で次第に消えていくものといえる。

○ガイダンス
 無人航空機の諸活動に関する英国のガイダンスは次のものである。ここでは逐一訳さないが、基本的に関係する項目は網羅されているといえる。
基本原則

空域の定義と衝突事故の回避ガイド 

耐空性 (筆者注4)

2.2004年4月更新の英国CAAのUAS(Unmanned Aircraft System Operations in UK Airspace – Policy and Guidance(CAP 722 | Ninth Edition Amendment 2)

全149頁にわたるもの。2023年11月22日に広く規制のあり方につき意見具申した結果を踏まえガイダンスとして見直したものである。

3.英国事務弁護士会のUASs法規制の解説
 英国の事務弁護士(solicitor)協会(Law Society) (筆者注5)の機関紙「Law Gazette」の解説文「Unmanned aircraft systems」がよく論点を整理しているので、ここで引用・仮訳する。

(1)現行のUAS規制
 英国では、UASsは重量と使用目的により規制されている。重量が150kg以下のUASsは運輸省管轄の
「2009年航空規則(Air Navigation Order 2009:ANO)」「2007年航空規制規則(Rules of the Air Regulations 2007)」および「CAP 722 Unmanned Aircraft System Operations in UK
Airspace – Guidance」
により規制される。
 CAAは、これらの重量20kg超150kg以下のUASsをさらに細分規定化する。また150kg超のUASsについては、EU域内の場合は規制機関である
「欧州航空安全庁(EASA:European Aviation Safety Agency)」
が規制・監督する。

A.重量20kg以下のUASs
 前記ANO253条にもとづき、重量が20kg以下のUAS(small unmanmed aircraft)については、有人航空機に適用されるほとんどの規定が除外される。例えば操縦者の登録義務が免除されたり、耐空性要件の免除である。ただし、
ANO138条「人は無謀または不注意による原因を引き起こしたり他人やその資産を危険にさらしてはならない」は小型UASを含むすべての航空機の操縦者に適用される。

CAAの規則等を簡単に表にまとめると以下のとおりとなる。

  (注)BNUC-S      Commercial Pilot Licence CPL (A)  

 小型無人航空機に関する特別な規定は、ANO166条167条に定める。すなわち、操縦者は直接視界内での操縦を維持・コントロールすること、次の範囲内での飛行は禁止される。
①地上400フィート(約122メーター)以上
②密集地では地上150メーター超または以内
③1,000人以上が集まる屋外集会での150メーター超または以内
④航空機につき責任を負う操縦者のコントロール下で50メートル以内に船、車両および構造物(structure)がある場合
⑤50メートル以内に人がいる場合
⑥いかなる意味でも営利目的を持つ場合

B.重量150kg以下、20kg超のUASs
「軽量(light)の無人航空機」と定義され、有人航空機と同様の規定が適用される。従って、それらは耐空性、操縦者の登録、飛行許可およびパイロット資格が必要とされる。もし航空機がこれらのすべての要件を満たさない場合は、CAAはANO242条に基づき例外免除証を発行する用意がある。

C.重量150kg超のUASs
 これらはEASAにより規制監督されるとともに、小型無人航空機や軽量無人航空機よりも厳格な規則が適用される。欧州連合規則(EC Regulation 216/2008)は、関係する諸規定を定めるもので、耐空性証明、継続的な耐空性、操縦、パイロット免許、航空交通管制、飛行場等を規定する。
これらのUASsの大規模な飛行または貨物に関する能力の公表の前に、実質的な投資コスト(現時点では商業的に見て魅力を失わせる)は下げられなければならない。

D.Amazon等のUASs新規事業化と英国の法規制問題
 2013年12月、AmazonはUASの最高2.3kg(5ポンド)の商品の配送サービス計画を公表した。このアイデアにつきUASについての規則はUASがパイロットの有視界になければならないという差し迫った障害が英国の規則上生じる。また、貨物の配送する空域(国内と国際の両面)利用問題との統合問題が生じるといえる。
 2014年4月8日、EUの行政機関である欧州委員会はUASの欧州空域での統合に関する政策報告書「COMMUNICATION FROM THE COMMISSION TO THE EUROPEAN PARLIAMENT AND THE COUNCIL:A new era for aviation:Opening the aviation market to the civil use of remotely piloted aircraft systems in a safe and sustainable manner」を採択し、また同年10月8日にはEUの「輸送、電気通信およびエネルギー評議会(Transport Telecom and Energy Council)」 (筆者注6)は、統合が可能になる前に以下の問題が解決されねばならないことを明確化した。

①安全性対策
一度UASsが人、建造物、地形および他の航空物との衝突を回避するための十分な高度な技術が得られたら、1組の最小限のシステム要件が成文化される必要がある。現時点ではCAP 722 は「もし、UAS産業界がすべての飛行空域で操縦を可能とするUASを製造するつもりならば問題の発見とその回避に向けた取組みを行うべきであり、そのことは有人飛行機について定める規制や耐空性に関する標準につき同等とすべきであることを証明すべきである」と明記している。

②犯罪セキュリティ対策
 バーミンガム大学の政策委員会の委員長でまた元英国政府通信指令本部(GCHQ)の部長であったデビッド・オマンド(David Omand)教授は、UASsの一般犯罪、テロリスト、故意犯罪者による使用の潜在可能性を強調している。この点につき、英国上院特別委員会は犯罪立法による対応をすべきか否かなどにつき議論を行っている。

 UASsは、自身が分離した電波スペクトル(radio spectrum:無線周波数帯)を必要とする。そのような通信自体、ハッキング、電波妨害(jamming)、なりすまし(spoofing:そこではUASsは間違った方向に向けた指示が行く)から保護されねばならない。また、極めて小型のためまたはその素材により、レーダーでの確認が困難という不確実性問題がある。

 なお、筆者なりに英国議会の委員会での論議をフォローしてみた。特に際立ったのは英国議会上院特別委員会「国内市場、インフラストラクチャーおよび雇用問題小委員会」の議論報告書である。



 同小委員会はEU域内でのドローンのよるニュービジネスの新規創造予想を2050年までに15万件と見込むなど、「保険の付保義務」および「プライバシー問題」を中心に取り上げている。

③プライバシー面からの懸念
 UASsによる監視問題が懸念されている。英国にはプライバシー侵害にかかる刑事罰規定はないが、スパイ行為は2003年性犯罪法のもとで潜在的に「のぞき」の罪にあたりうる。一般的にUASの監視能力は、既存の「1998年情報保護法(Data Prtection Act 1998)」といったCCTV規制法で対処しうる。上院特別委員会は同法がより活発な活動を行うであろうUASに関し、さらに改正する必要があるかどうかの審議を行っている。  なお、筆者なりに米国のローファーム(Covington Burling LLP)の記事でUASによる監視活動に伴うプライバシー侵害リスクに対処すべく、2014年10月15日、 英国情報保護委員(ICO)はドローンが撮影したビデオ記録に関する「行動規範ガイダンス」の改定内容を固めた旨を確認した。

 そのポイントを簡単に引用する。
「ICOはドローンの使用が必要以上に極めて高いプライバシー侵害の可能性を持つことから、商業的使用や撮影専門家によるドローンの使用(CCTVカメラの使用にかかる規則を含む)につき、次のとおりいくつかの点で勧奨項目をまとめた。
()ドローンの使用は、個人の画像イメージを捕らえる他のエリアを飛行する記録行為を避けるため限定的に行わねばならない。
()そのような環境下でドローンを使用する団体等はその使用についての強固な正当性事由(strong justification)を提示しなければならない。
()団体等はドローンの使用に先立ち当該正当性事由の作成およびプライバシーへの影響を軽減するための手段を開発すべくプライバシー影響調査(privacy impact assessments)を実施しなければならない。
()かなりの高度からのドローン撮影は継続して行ってはならない。
()団体等は、プライバシーなど影響を受ける個人に対し、たとえば、ドローンの操縦者は明るく着色された衣服を着るなどドローンによる記録の事実を通知すべきであり、また影響を受けるエリア内にサインを送るなど画期的な手段を用いて通知行為をなすべきである。またドローンで収集した情報につき掲載ウェブサイト上でプライバシー通知を継続して行わねばならない。」

④保険問題
 EUにおける航空会社や航空機の操縦者に対する保険付保義務規定(Mandatory Insurance Requirements)は「EU 785/2004」である。この付保義務規定は、航空機の重量に応じた第三者賠償責任(third Party liability) (筆者注7)に関するものである。同規則2条2(b)条は同規則は20kg未満の模型飛行機には適用されずと定めることから、法律問題としては英国では現在小型無人航空機(small unmanned aircraft)に関する最小付保要件はないことになる。

Ⅱ.観光客等による無秩序なドローン飛行の実態と警察等による警告や罰金の内容等
 2月28日の英国メデイア”Dairy Mail Online”の記事に基づき、英国やフランスで話題となっているドローン違法飛行の問題およびドローンによる写真例を紹介する。

・昨年のクリスマス以降、新型小物である小型カメラつきの無人航空機が数千単位で受け取り、少なくとも1ダースの事故が明らかとなっている。いくつかの苦情は寝室の窓の外から飛行しているというものであった。
・観光客は英国議会やロンドンの大観覧車の近くでドローンを飛行させ、それはビルや人々に近接した飛行として違法であるにもかかわらず「自(分)撮りの写真(selfie)」を利用している。(同記事はドローンによる違法な撮影例を多く取り上げているが、本ブログではあえて略す)
・2月下旬にはパリ警察は3人の中東のメデイア「アルジャジーラ(Al Jazzeera)」の記者が違法にドローンを飛行させたとして逮捕した。エッフェル塔など歴史的建造物に近接し低空飛行した未確認飛行機の事例は、テロリストによる飛行やt路攻撃の標的となる脅威を震え上がらせた。
・このような法違反の飛行の急増に対しスコットランドヤードのドローン専門家は国家的なレベルでのガイドラインの策定をすすめている。同時に、混雑した場所でのドローンの使用に対し撮影した画像の押収できる根拠等を求めている。
・ドローンはより安価(500ポンド:約9万円)なおもちゃとして、また高解像度のカメラを搭載したりスマートフォンを搭載できたりして、風景や町並みにつき鮮明な写真やビデオが取れるため極めて人気商品になりつつある。
・ロンドンでは、ハイドパークで開かれたロンドンの冬には欠かせない存在となったウィンター・ワンダーランド(小さな子供など観覧車に乗り、氷の彫刻を見たり、友人同 士で訪れてバンドの生演奏に合わせて歌い踊りながら、ドイツ風のソーセージとビールを味わうなど老若男女を問わず楽しめるスポットとなっている)の上を飛行させたとして29歳の男性が航空規則違反を理由に警告文が送られた。
・2015年に入り、ウェスト・ヨークシャーでドローンに関する3件の報告があた。その1つは、他人の庭を飛びこえて飛行するドローンの例、2件目は3機のドローンが競技場の上を無責任に飛行したもの、3件目は飛行機の飛行を妨害する形での使用というものであった。
・サリー警察は、ある女性が2人の子供が記事で死んだ移動駐車サイトの現場をドローン撮影したとしてカメラマンを逮捕した。その後カメラマンは責任を問われずに釈放された。
・ロバート・ノールズ(Robert knowles)はカンブリア州のバロー・イン・ファーネス近くの橋を飛び越えさらに制限空域である原子力潜水艦の上をドローンで飛んだことを理由に800ポンド(約142000円)の罰金刑および不正使用ドローンにかかる費用として3500ポンド(約623,000円)の支払い命令が下された。
・マーク・スペンサーはアルトン・タワーでジェットコースターに乗っている人をクワドコプター(quadcopter)・ドローンで撮影したとして300ポンド(約53,400円)の罰金と250ポンド(約44,500円)の支払い命令が下された。

Ⅲ.英国議会の超党派ドローン問題議員連盟(All Party Paliamentary Group in Drones:APPG)の取組み 

 筆者は、バーミンガム大学のデビッド・オマンド教授の議会での証言内容をフォローする作業の中で同議員連盟のサイトを見出した。
ドローンに関する全党派議員グループAPPGは、2012年10月に設立された。 現メンバーは47名で、議長はトム・ワトソン(Tom Watson:下院:労働党)、副議長はバロン・スターン(Baroness Stern:上院:無所属)(cross-bench))とデイビッド・デイビス(David Daivis:下院:保守党)である。

1.APPGの設置目的
 ドローン(無人航空機)の英国政府による使用実態を調べること。(英国内と国外、軍部門および一般人の利用目的等の観点から)

2.APPGの検討作業の初期的な焦点
 APPGの仕事の最初の焦点は、以下の通り。
①パキスタン、イエメン、ソマリアその他におけるアメリカ合衆国によるドローンの使用;
②国際的に見た英国の機関による使用;
③法執行機関による英国内で使用;

3.検討の目的
 上記テーマの中で、APPGはその調査において人権、法律面、政治面およびその他のドローンの適用につきハイライトする必要を確認した。APPGは、政府によるドローンの利用に関する政治的かつ法律責任責任問題の検討を進めるつもりである。また、より一般的には遠隔抗戦型戦争(remote warfare)における一部の問題となる無人航空システムの役割を考慮することである。

4.最新の取り組んでいる検討テーマ
ドローンと反テロ法案(Drones and Counter-Terrorism Bill)
ドローン・ガイダンスの発刊 
オマンド教授やマイケル・クラーク教授 (筆者注8)を加えた検討作業
ドローンの国家安全保障面からみた影響

Ⅳ.わが国の監視カメラの使用に関するセキュリティ・ガイダンスがないのはなぜか   

 最近、朝日新聞が「『映像流出の危険、直視を』 ウェブカメラ問題で識者」という記事を掲載した。ドローンが撮影した画像などがネット上で流失することなど極めて大きなリスク問題といえるものである。この問題はインターネットの接続デバイスとプライバシー問題として取り上げるべき重要なテーマであるが、改めて取り上げることとし、今回は英国のプラバシーWatchdogであるICOがドローンにつきいかなる取組みを行っているであろうか。概観しておく。

 ICOのHPは各問題につき、一般向けガイドの部分とビジネス向けの解説とは明確に分けている。なお、英国では小型カメラ搭載型ドローンはCCTVとみなされ、すなわち「1998年情報保護法」や同法のガイダンスが適用される。
 ICOのサイトから、ドローン使用時の責任をもつため予め留意すべき事項を引用する。
①録画・記録する前に被写体となる人々に事前に分かるように通知すること。
②他人の家の庭などの撮影などは明らかにプライバシーの侵害となりうる点を考慮すること。
③カメラの機能を正確に知ること。
④バッテリーの短い時間にあわせた飛行計画をたてること。
⑤あなたの視界からドローンがなくならないよう注意すること。
⑥撮影画像のSNS等共有は慎重に考えること。
⑦画像等は安全な媒体に保管するか、不要なものは直ちに消去すること。

****************************************************************************************************
(筆者注1)2014年3月7 日「米国・国家輸送安全委員会(National Transportation Sfety board:NTSB)の行政法審判官(administrative law judge)パトリック・ジェラティ(Patrick Geraghty)は、2011年10月17日にFAAが下した10,000ドル(約122万円)の罰金処分に対する被告ラファエル・ピルカー(Raphael Pirker:スイス市民)の異議申立に対し、同無人航空機はUASにおける模型飛行機に分類できるとし、本事案ではFAAが主張したような連邦航空規則(FederalAviation Regulations)第91.13(a)条は適用されないとの理由から前記FAA処分の破棄を命じた。今回、FAAのUAS規則案をまとめた背景にはこのような司法トラブルが増えることへの懸念があげられる。



 この事件に関する詳しい記事としては、2014年3月7日、 CNN「Pilot wins case against FAA over commercial drone flight」を参照されたい。

(筆者注2)EASA」は2002年7月15日に「Regulation (EC) No 1592/2002」にもとづき設立、2008年にJAA(Joint Aviation Authorities:合同航空局)の機能を引き継ぎ、本格的に始動し始めた。現在の拠点はドイツのケルン。JAAとEASAの相違の1つは、EASAはヨーロッパ連合(EU)内の法的権限があるという点である。2008年以降、JAAはJAA TO(Joint Aviation Authorities Training Organisation)の名称で 「Training Organisation 」として存続している。

(筆者注3) わが国の現行の法規制下でのUAS飛行問題についてレクリエーション上の模型飛行機の範疇での規制問題や電波法上等の論点整理に関する解説サイトの例を挙げて置く。
①2014.9.12 弁護士 鈴木翔太 「人気の「ラジコンヘリ」一歩間違えると違法行為に?危険な3つのケースとは」
②2014.8.3 「マルチコプターの正しい飛行制限空域」
③2014.5.13 「WiFiで2km飛行するヘリ」
④「ラジコン用電波と電波法」

(筆者注4) 一般的に”Airwothy”な航空機とは、法律的にも機械的にも安全に飛行が出来る状態にある航空機と言う意味である。米国連邦航空規則(FAR:Federal Aviation Regulation)のSec3.には、「Airworthy means the aircraft conforms to its type design and is in a condition for safe operation(Airworthy とは、航空機が安全基準に適合した設計どおりに製造され、かつ安全に運航できる状態にあることをいう)と定義されている。

(筆者注5) 英国事務弁護士協会(Law Society)については筆者ブログを参照されたい。

(筆者注6) Transport, Telecommunications and Energy (TTE)
EUの「輸送、テレコミュニケーションとエネルギー(TTE)評議会」は、調整ネットワークを開発するこれらの地域での協力と全体として域内市場とEU経済全体にわたるインフラ問題を監視する。加盟国から、課題(例えば輸送担当大臣、テレコミュニケーションまたはエネルギー問題)に関してアイテムに対処するために、最もふさわしい立場にある大臣が代表に選ばれる。TTEは、交替制の代表により議長が任じられる。

(筆者注7) 被保険者が航空機等の飛行中に第三者に対して身体障害若しくは財産損害を与えてしまった場合に被る法律上の損害賠償責任をカバーするものである。

(筆者注8) マイケル・クラーク (Michael Clarke) 教授は、英国王立統合軍防衛安全保障問題研究所(Royal United Services Institute:rusi)の所長でもある。

Michael Clarke

*****************************************************************************************************
Copyright © 2006-2015 芦田勝(Masaru Ashida).All rights reserved. You may display or print the content for your use only.
You may not sell publish, distribute, re-transmit or otherwise provide access to the content of this document.


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« カナダのオフショアー油田・... | トップ | ホワイトハウスの無人航空シ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

個人情報保護法制」カテゴリの最新記事