物件 14

2021-11-10 09:23:08 | 日記
「この辺で、何かあったか?って?」

ご近所のおじさん3人組と、枝美ちゃんはいつの間にか合流して盛り上がっていた。

しかし、どうやら、ご近所の過去を知るおじさんたちに、酔わせて聞き出そうとする枝美ちゃんの作戦のようだ。

「…そうだなぁ…。事件なんてもんは、ここら辺では、起きたことはないなぁ…」
 
「お嬢さんは、この辺に住む予定なの?」

「いいえ、私じゃないんです。友達の男の子が、住みたいと検討中です」

「そんなこと気にしてビクビクしてるなんて、男のくせに、臆病だなぁ…」

「ですよね~!」

枝美ちゃんは、自分が住んでいる…と言ってしまうと、途端に話してくれなくなりそうだと判断して、友達…と、言ったのだと思いました。

しかし、ここでも、情報は得られそうもない。
まぁ、でも、美味しいお酒が飲めたからいいか!

「…あ、だけど、一件、事件じゃないけど…」

「え?なんですか?」

枝美ちゃんは、身を乗り出した。

「自殺があったよなぁ…」

「あ、あれかぁ…」

おじさんたちは、思い出すように語りだした。

「だけど、もう7、8年前になるかなぁ、独り暮らしの女の子が薬飲んで…」

「そうそう、そんなことあったなぁ」

「その家は、どこですか?」

「2丁目の今にも潰れそうな布団屋の向かいアパートだよ」

私は、凍りついた。

「何号室?一階?二階?」

枝美ちゃんは、怯むことなく、聞き続ける。

「確か…2階の一番奥かな?」

…枝美ちゃんの部屋だ…💦