物件 25

2021-11-24 09:44:06 | 日記
それから一週間後、「話しがあるから…」と、枝美ちゃんを呼び出した。次男さんに引っ越しの説得をお願いするためだ。

今度はお酒ではなく、お休みの日の昼間に喫茶店での待ち合わせだ。

次男さんが来ていることは言っていないが、待ち合わせの場所に彼がいても、知り合いになっているので、警戒はしないだろう…。

「こんにちは!」

笑顔で現れた枝美ちゃんだが、やっぱり窶れた感じは進行している。

「あ、先日の…。先日、車で送ってくださってありがとうございました。」

…良かった…次男さんのことは覚えていたようだ。

「先日、大丈夫でしたか?かなり酔っていたように見えましたけど…」

「そんなに飲んでないんですよ。…なのに、どうしちゃったんだろう…」

「今日は、ちょっと、枝美さんが心配になって来てみました」

「え?私が?…どうして?」

「私、実は霊感がありまして…、枝美さんの後ろに女の人がいます。」

「え?女の人?!」

「思い当たること、ありますよね」

「…いいえ。」

え?!思い当たることが…無い?!

「…そうですか…」

「枝美ちゃん…、思い当たること、あるでしょ!」

「アンコさん、ちょっと待って…!」

次男さんは、私を制した。

そのあとは、当たり障りの無い仕事の話しや趣味の話しをして、解散。

「私、買い物があるから、先に帰るね!」

枝美ちゃんは、笑顔で去っていった。