それから一週間後、「話しがあるから…」と、枝美ちゃんを呼び出した。次男さんに引っ越しの説得をお願いするためだ。
今度はお酒ではなく、お休みの日の昼間に喫茶店での待ち合わせだ。
次男さんが来ていることは言っていないが、待ち合わせの場所に彼がいても、知り合いになっているので、警戒はしないだろう…。
「こんにちは!」
笑顔で現れた枝美ちゃんだが、やっぱり窶れた感じは進行している。
「あ、先日の…。先日、車で送ってくださってありがとうございました。」
…良かった…次男さんのことは覚えていたようだ。
「先日、大丈夫でしたか?かなり酔っていたように見えましたけど…」
「そんなに飲んでないんですよ。…なのに、どうしちゃったんだろう…」
「今日は、ちょっと、枝美さんが心配になって来てみました」
「え?私が?…どうして?」
「私、実は霊感がありまして…、枝美さんの後ろに女の人がいます。」
「え?女の人?!」
「思い当たること、ありますよね」
「…いいえ。」
え?!思い当たることが…無い?!
「…そうですか…」
「枝美ちゃん…、思い当たること、あるでしょ!」
「アンコさん、ちょっと待って…!」
次男さんは、私を制した。
そのあとは、当たり障りの無い仕事の話しや趣味の話しをして、解散。
「私、買い物があるから、先に帰るね!」
枝美ちゃんは、笑顔で去っていった。