物件 15

2021-11-11 12:30:06 | 日記
「もう7、8年前になるかなぁ、独り暮らしの女の子が薬飲んで…」

それは、枝美ちゃんの部屋だった。

…事故物件であることが、わかってしまった。

帰り道、とぼとぼと歩く枝美ちゃんの後ろ姿を見て、こんなことになってしまって…。
知らない方が良かったのかも知れない…と、後悔した。

「…どうする?」

「どうするって?」

「せめて、今日は、うちに泊まりに来る?」

「ううん、とんでもない~!これで私の部屋の隠された事実を知ることが出来たんだから、むしろ安心した!」

とぼとぼと元気無さそうだったのは、飲み過ぎただけで、自分の部屋が事故物件であることを知ったからと言って、それはショックじゃないらしい…。

強がりなのかな…と、思った。

それからの枝美ちゃんの様子を見る限りだと、いつもと変わらず元気だ。

「枝美ちゃん、その後変化ある?」

しばらくして、家の事を聞いてみた。

「うん、あるある!相変わらず家鳴りはしてるけど、最近激しくなったの。…でね、面白そうだから、コミュニケーションを取ってみたの。」

イエスならトン。
ノーならトントン。

これを家鳴りの主に理解して貰うように調整中だという。

「本当に…?そんなことって、出来るの…?💦」

「まだ、ビミョーなんだけど、なんとなく出来てきてる気がするの。そのうちに、もっと会話が交わせるようになるよ!」

枝美ちゃんのポジティブさは、スゴイ💦