ラルくん 63

2022-02-22 09:25:24 | 日記
「ちょっと待って!どうしてそんなことまで言われなきゃならないの?」

M子が悲痛な声をあげた。

大好きなラルくん参戦、しかも、Y子の味方…という思いがけない展開に、どうしたらいいのかわからなくなったM子は、ポロポロと涙を流した。


「…ごめん、言いすぎた…💦」

ラルくんは、あわてて声をひそめた。

M子のやりたい放題に、周りの皆も違和感を感じていたので、なんとなくM子ひとりが孤立したような空気になってしまっていた。

居たたまれなくなったM子は、荷物をまとめて、稽古場を出ていった。

「…言いすぎたかな…」

「…仕方ないよ。あのままだと、Y子が萎縮しちゃって、いい演技が出来ないし…」



ーーいろいろあって、やっと本番を迎えることになった。


これが終われば、今度は先輩チームの公演が待っている。


後輩チームは、とにかく初めての公演ということもあって、バタバタとしている。


それぞれ、楽屋では、セリフと衣装や小道具の最終確認に余念がない。

とにかくこのまま無事に公演が終わることを祈るばかり。





ラルくん 62

2022-02-20 09:18:49 | 日記
「ちょっと待って

声を上げたのはラルくん。

「それは、おかしいよ。」

皆がしん…と、なった。

「M子の見せ場のために、Y子が無理して一歩退くなんて、変だよ。
今、このシーンで、何を一番伝えたいかを考えた時、誰かの見せ場のために一歩引く…なんて、あり得ない。みんなの見せ場を平等に…なんて言う学芸会じゃないんだから、冷静に考えようよ。」

ラルくんの意見は理路整然としていて、反論の余地がない。

強気のM子も黙ってしまった。

しかも、大好きなラルくんが、自分に対して反論を唱えていること自体、かなりショックのようで、瞳孔が開いていた…んじゃないかと思う。

「ラルくん、私的には、M子の言い分も分かるの…」

場の空気を和らげるためになのか、Y子がM子をフォローするような話しを始めた。

「ちょっと待って、Y子もしっかりして、いつもM子に意見されて、反論もしないで、変だよ。」

ついにラルくんが、お芝居以外のことにも意見してきた。

「ちょっと待って!どうしてそんなことまで言われなきゃならないの?」

M子が怒った。



ラルくん 61

2022-02-19 09:59:55 | 日記
お互いの言い分は、埒が明かず、

とりあえずもう一度、それを踏まえて、そのシーンを演じてみることに。

Y子がセリフを言いながら、M子に近づく。

M子が一歩前に出るのと同時に、Y子が歩みより、M子の手を掴む。

そして、M子のセリフ。

…う~ん、この状態だと、Y子がM子に被らないように一歩下がるのは不自然だ…。

「せめて、M子のセリフが終わってから、Y子が諭されて一歩退くなら分かるけど…」

「…だけど、このセリフ、私のセリフの中で、特に長セリフなんです。なのに、Y子が邪魔で…。」

「うん…。わかった。私が上手いこと下がります。」

Y子がM子の無茶な言い分を聞いて、一歩下がるようにしようとした…。

「ちょっと待って!」

待ったの声を上げたのはラルくん。

ラルくん 60

2022-02-18 10:04:52 | 日記
ある日の稽古の日。

本番まであと2週間…くらいになった時のこと。

稽古も終わり、皆それそれに稽古場を後にする。

ところが、なにやら後輩が揉めている。

揉め事の中心にいるのは、また、M子とY子だ。

M子「一歩引いてから、セリフを言うべき」

Y子「一歩引いたら、気持ち的にその言葉が出ない」

シチュエーション的には説明が難しい状態なのだが、

どうやら、M子の見せ場のセリフがY子に被ってしまって言いにくい…ということらしい。
だから、一歩引いてから…セリフを言って欲しいようだ。

しかし、Y子の言い分も良くわかる、セリフの内容によると、寧ろ一歩前に出ないと言いにくい…。

両者とも、納得がいかず、譲らない。

そして、おそらくこの言い合いは、Y子が譲るんだろう…と、思われる。