「では、くじ引きを!」
まずは、S子。
次に、M子。
次々と、順番に引き終わると、くじを広げる。
「『1番』は、誰?」
ーーー静かに手を上げたのは、M子だ。
思わず皆がザワッとなってしまった。
指導者も、私たちの顔を見た。
「あ、唯一の勝利者は、M子さんなのね。」
指導者も、ワケのわからない発言をしてしまった。
そして、エチュードの発表。
もちろん、M子のエチュードは非の打ち所無く、満点だった。
「……どうして?」
稽古終了後、近くのカフェで先輩たちは、深刻な顔で話し合っていた。
「いや、本当にくじ運がいいだけなんじゃない?」
「うん…、そうだよね…。そうとしか言えない…。」
「…だけど、何となくしっくり来ない…。」
「…うん…。」
「私たちには気づけない、当たりくじへの"記し"もあるのかも…」
「そうなのかな…。」
「私も、ちゃんと確認したけど、記しらしきものは無かったよ」
「それに、M子、くじ引きの箱の中を覗き込まなかったよ。記しを付けたなら、ちゃんと記しを確認して引かないと無理だし…。」
「そうだよね。」
「さっきのくじ、見せて…。」
念のため、皆がひいたくじを返して貰っていた。
もう一度、くじ引きのくじを確認する。
「うん…記しとか何も無い…。」
「それじゃ、運の良さも実力なんだね…」
「…そうなんだね…💦」