バチーン❗
し…ん…。
場が凍りつく。
M子がY子を叩くシーンだ。
さすがY子、きちんと役作りがされているせいか、躊躇なくM子の頬を叩く。
M子はしゃがみ込んだ。
演技…?マジ?
M子の次のリアクションを待った。
台本通りなら、しゃがみ込むのではなく、
「何をするの?」
…と言って、Y子の手首を掴むのが正解なのだが…。
なかなか、立ち上がらない。
…どうした?
いや、これも、M子の考えた演技かも知れない。
この後、立ち上がって「何をするの?」と、演技をするのかも…。
しかし、しゃがみ込むのが長い。
やがて、M子は、ゆっくり立ち上がった。
「すみません、ちょっと…」
え?
M子は、顔を抑えて部屋から出ていった。
慌てたのはY子。
「M子さん、だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。戻ってくるのを待ちましょう」
指導者は、追いかけて出ていきそうなY子を止めた。