著:山之口獏 平凡社ライブラリー
以前にも、山之口獏
詩文集を紹介しましたが、これは「沖縄」に関するエッセイだけを集めた本です。1944~1964年に書かれたエッセイと詩ですが、著者の子供の頃の追想なども多く、戦前の沖縄の人々の暮らしが生き生きと伝わってきます。
この中から、詩をひとつ紹介します。
「芭蕉布」
上京してからかれこれ
十年ばかり経っての夏のことだ
とおい母から芭蕉布を送ってきた
芭蕉布は母の手織りで
いざりばたの母の姿をおもい出したり
暑いときには芭蕉布に限ると云う
母の言葉をおもい出したりして
沖縄のにおいをなつかしんだものだ
芭蕉布はすぐに仕立てられて
ぼくの着物になったのだが
ただの一度もそれを着ないうちに
二十年も過ぎて今日になったのだ
もちろん失くしたのでもなければ
着惜しみをしているのでもないのだ
出してきたかとおもうと
また入れるという風に
質屋さんのおつき合いで
着ている暇がないのだ
当時、著者のお父さんは那覇に住む勤め人だったはずです。そんな都会の主婦も、普通に芭蕉布を織っていたというのが、私は驚きでした。芭蕉布はとても高価で、私は着たことがないのですが、一度くらいは着てみたいものです。それも、戦前は皆着ていたという琉装で。
1962年の著者の写真と、左は著者が描いた絵です。
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