集英社新書 著:花村萬月
たしか、山田太一さんが、どこかの紙面で新しいドラマについてインタビューされてた時の文章だったと思うのですが、
「最近の若い人はコンプレックスという言葉は使わないそうですよ。
じゃあ何て言うか、と聞いたら“個性”というそうです。」
というようなことが書かれていました
今は、お互いに傷つけ合わない文化というか、あたり障りない関係の文化というか、古い世代の者から見ると「うわべだけの薄っぺらい関係」が主流になっていて、そんな若い人達に対して年寄り達は、内心は「嘘つけ、このヤロー」と思いながらも、顔だけはニコニコと物分りよい翁の表情を浮かべているわけです
そういう鬱屈した「嘘つけ、このヤロー」という思いを、沖縄に、というよりも沖縄をメシの種にしている人や、利用している人に対してぶつけた本、というように理解しました。
たぶん弱者ほど、更なる弱者に対する差別は壮絶なものがあるのでしょう。
ヤマトから差別される沖縄。更にその沖縄から差別される八重山の人やアメラジアン達。
そして、ヤマト(特に関西)の風俗業へ多量供給している沖縄女性たち。
沖縄の理想論をつべこべ言う前に、毎夜ヤマトで股を開いてるオマエの妹はどうなんだ。
そんな現実に蓋をして見ないふりして、なにが“楽園”か。
ということでしょうね
確かに沖縄を定型に填めて“楽園”扱いするメディアにはうんざりするし、“よくぞ言ってくれた”というスッキリ感もあるけれど、うそ臭いメディアに乗せられた振りをして、自分の欲望を満たす女性のしたたかさは、更に上手な気もします
文中の「真栄原の社交街」に出てくる女性達の著述に、筆の鈍りが見えるあたりも、著者は“心優しい男のコ”なんだなぁと思います
今まで花村萬月さんの作品は、喰わず嫌いだったけど、意外に面白くて、他の作品も読みたくなりました
次はこれを読んでみたい、芥川賞受賞作「ゲルマニウムの夜」
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