舘野正樹著「日本の樹木」(ちくま新書 2014年)
このところ、いつか読もうと思って買い込み積んであった本を少しずつ読んでいます。今読んでいるものの一つがこれ。
日本に自生する樹木のうち代表的な26種について、その植物学的特徴とともに文化的な側面についても書かれていて興味深い一冊。その中の「イチョウ」の項に面白いことが書かれておりました。
銀杏(いちょう、公孫樹とも書く)は世界最古の樹種で、日本列島においては100万年前に絶滅したのだそうで、その銀杏が日本列島に再びやってきたのは室町時代(1338-1573年)。
世界の大方で絶滅しはずの銀杏が中国の奥地に取り残され生き延び、その子孫が再び日本の土地に根を張ったとのこと。その証拠の一つとして905年に編まれたと云う古今和歌集には銀杏に相当する樹木に関する記述がないことが挙げられています。
公暁が鶴岡八幡宮の大銀杏の陰に隠れ、右大臣拝賀式のために同宮を訪れた源実朝を討ったのが1219年ですが、古今和歌集まで遡らずとも、銀杏の到来が室町時代だとすれば、公暁による実朝暗殺時点、日本には銀杏の木がなかったことになります。
公暁が大銀杏の陰に隠れて実朝を討ったと云う言伝えは、水戸光圀が編纂を命じた新編鎌倉志(1685年刊行)に暗殺の様子についてそのような記述があり、この言説が流布したとされる説がありますが、果たして事実は如何に。
注:樹齢1000年、公暁が隠れたと云われていた鶴岡八幡宮の階段脇の大銀杏は2010年、強風によって倒木しました。
横浜の住宅地の中に残された小さな里山の四季の移ろいを毎週撮影しているblog「恩田の森Now」に、ただいまは1月29日に撮影した写真を5点掲載しております。冬の曇り空の下の森の様子をご覧いただけたら嬉しいです。
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