「ブロンズ」を出て東町商店街へ進みました。
この道は、十数年前に水戸の友人に案内されて初めて大洗を訪れた際に車で走っています。その日はマリンタワーに登り、次いで「さかなや隠居」で昼食の天丼をいただき、それから大洗磯前神社に参拝し、最後にアクアワールドへ行ったのでした。その時にこの道の景色も見ているはずなのですが、いま思い出すのは、大洗海岸の打ち寄せる白波の流れと水族館の魚の群れ、です。
「丸五水産」の前まで来ました。店の脇に、角谷杏をデザインしたガルパン自転車が、相変わらず置いてありました。
この時、店先には誰も居ませんでしたので、缶バッジのコレクションボードを一瞥するにとどめておきました。
私が寄贈したカメさんチーム5個セットは、右側のボードの一番下にはみ出すような形で貼り付けて並べてありました。このお店のコレクションがボード一杯になっていたことが分かります。
「丸五水産」の缶バッジコレクションは、大洗公式バッジと、それ以外の企業系やオリジナルや同人系などのバッジに大別されていて、二つのボードに分けられています。向かって左側に大洗公式バッジが並べられており、私の寄贈分は同人系に分類されるので、正しく右側のボードに貼られています。分かり易い分類法ですね。
宿に戻って休んだ後、夕食をとりに出かけ、その帰途に「鳥孝」に立ち寄りました。ちょうど店主さんが店内左側の天井にフラッグを取り付けているところでした。あー、星野さん、こっちこっち、見てやってくれよ、と言われて見上げました。最初の取り付け位置は天井の端で、そこから吊るした状態でした。少し風があるとふわりと大きくなびいたりしました。
「けっこう風に揺られますね、こういう状態ってホコリとか舞うので、下のお肉の加工場の衛生上、ちょっとまずいのと違いますか?」
「そういえばそうだな。吊るすより全部貼ってしまおうか」
「そこの壁が斜めにカーブしてますけど、あの壁にフラッグを貼り付ける感じで四隅と四辺の真ん中、あわせて八ヵ所を画鋲で留めたらいかがですか」
「そうしようか、よし」
言いつつ、脚立に登って画鋲でフラッグを留め始める店主さんでした。下で奥さんと私がフラッグの全体を見て皺の具合を確かめ、画鋲の位置を調整して指示してゆく、といった具合でした。二度ぐらい留め直して、上画像のような状態に落ち着きました。
「おお、なかなかいいじゃないの、うーん、これでもう最高だな」
脚立から降りて初めてフラッグの全体像が見えるわけです。それを見た店主さんはもう嬉しくてたまらない、といった満足気な表情になりました。
フラッグは、外からもよく見えます。と言うよりも、外から見えた方が効果的だろうと考えて、この貼り位置を提案したわけでした。店主さんもそれを確認して「いいねえ、いいねえ」とご満悦でした。ただ、出入口の上に貼ってあったクリアファイルが一枚邪魔になっていたので、それを店主さんが素早く反対側に移して貼り換えました。すると上画像のような状態に落ち着きました。いや、素晴らしい、と自分で拍手して上機嫌でフラッグを見上げる店主さんでした。
この直後に、二人のガルパン巡礼者が来店し、私も含めて三人で、上機嫌の店主夫婦と夜までいろいろ話したりしました。
宿へ帰る途中で撮った、「肴屋本店」の夜景色です。
翌朝の散歩後に撮った、宿の「さかなや隠居」です。
朝食をいただき、女将さんとロビーで雑談などして休んだ後、出発しました。商店街を北へ進み、ある店の軒下に咲く朝顔を見ました。
天気は曇りでした。そのせいか、商店街や漁港の景色も落ち着いた静かな雰囲気に包まれていました。
「丸五水産」の前を通り過ぎました。
「ウスヤ精肉店」を再訪しました。笑顔の店主さんが「やあ、いらっしゃい。早速貼ったんで、見てやって下さい」と言ってボードを指しました。ボードに並べると、新しいものほど下に位置するので、私も最初はボードの下の方を探しました。すると、「あなたの下さったものは一番上に並べましたよ」と言われました。えっ、一番上?!、とびっくりしてしまいました。
見ると、本当にボードの最上段にありました。お店の公式オリジナルバッジのももがーに次ぐ位置でした。店主さんによれば「アリクイチームの全員が揃った缶バッジってのは初めて見たし、嬉しいし、また貴重だからねえ」ということで、それに相応しい位置に貼り付けたということでした。恐縮するほか、ありませんでした。
「ところでさ、こういうバッジって他のチームのも作ってるのかね?」
「ええ、大洗のチームは全て作りまして、昨日からあちこちのお店に寄贈させていただいてます」
「すると、アリクイチームの他のチーム、えーと七つあるんだったかな、それらのチームのバッジはまだあるの?」
「実は、レオポンさんチームだけがまだ手元にありまして・・・」
「どのお店にもあげなかったの?」
「こっちの予定では、カジマさんに寄贈しようと考えてたんですけど、あちらはそういうグッズのコーナーが店内にありませんし、なんか寄贈とかもあまり受けない感じがしたもので、遠慮して寄贈をするのはやめておきました」
「じゃあ、良かったらウチに貰えないかな?」
「え、いいんですか?ももがーとは関係ありませんけど・・・」
「いや、いいんだ。ガルパン缶バッジならみんな欲しいんだよ、あははは」
ということで、レオポンさんチームの6個セットも寄贈させていただくことにしました。受け取ったセットの包みを開けて、嬉しそうにボードに貼る準備にとりかかる店主さんでした。この方は、本当にガルパン缶バッジが大好きなんだなあ、と感心させられたことでした。
かくしてアリクイさんチームの隣に、レオポンさんチームが並びました。いずれも最上段という破格の扱いでした。劇中ではともに決勝戦が初陣となった両チームが、実際の大洗でも「ウスヤ精肉店」にて揃って「初陣」を果たした形です。
ですが、次の店主さんの言葉には、もっと驚かされました。
「もし良かったら、他のチームのバッジセットも全部譲ってくれないかな?」
「えっ、全部ですか?こちらの二チームと合わせると80個ぐらいあるんですけど・・・」
「ほう、そんなに沢山あるの。それは是非欲しいもんだね。ボード一枚新たに取り付けてさ、星野さんのバッジを全部並べて飾っとくことにしようかねえ」
「いや、それはちょっと、恥ずかしいです。恐れ入ります」
「どのみち公式じゃあ、全部が揃うことは有り得ないんだ。アリクイだって、うちのももがーだけなんだ。それはちょっと寂しいな。大洗女子学園の全員をバッジで見たい、ってのはよく思ってるんでね、あなたが全部を揃えてくれてるのであれば、その全員を見て、ファンの皆さんにも見てもらって、これが大洗女子の全メンバーだよ、って共に楽しんでいけたらいいんだよね」
これが、店主関野さんの、正直な感慨なのでしょう。仰られる通りだ、と深く感じ入りました。
「それでは、全部を一気にというのはちょっと無理ですので、大洗に参る度に少しずつ寄贈させていただきます。毎月参っていますから、2セットぐらいずつお渡し出来れば・・・・」
「それは良かった、楽しみだねえ、次はどのチームになるの?」
「まだ作ってませんので、今のところは何とも・・・。それと、新しいセットも計画してますんで・・・」
「その新しいセットというのがまた興味あるねえ」
「じゃあ、次回は新しいセットの方を用意させていただきます」
というわけで、早くも次回寄贈の缶バッジの内容が決まってしまったのでした。 (続く)