表通りの裏通り

~珈琲とロックと道楽の日々~
ブルース・スプリングスティーンとスティーブ・マックィーンと渥美清さんが人生の師匠です。

僕が後悔している三つの事柄~Jessica

2024-04-22 17:12:20 | Blues

僕には後悔していることが三つあります。

①85年のブルースの初来日公演に行かなかったこと。

これは当時田舎の高校生(三年生になったばかりだった)にはハードルが高過ぎました。今と違って情報が一ヵ月遅れで伝わるような時代。無垢な高校生が、たった一人で代々木第一体育館まで行くなんて...その前にチケットの買い方すら知りませんでしたし。

だから日本公演のブート盤(勿論アナログ)を手に入れてからは、毎年4月10日にはそんな意気地なしの少年だった自分への戒めとしてレコードを聴くことをルーティーンとしています。

②オリジナルメンバーが(一人でも)在籍中にレーナード・スキナードのショウを観に行かなかったこと。

昨年唯一の残存オリジナルメンバーのゲイリー・ロッシントンが亡くなって、先日現在のバンドメンバーから「トリビュート・バンドだと思われても仕方ない。でも活動を続ける」みたいなコメントが出されていました。

まだオリジナルメンバーが残っていた94年に日本に来ていたのは知っていたのに、何故か行かなかった自分を未だに責めています。当時は再結成メンバーも過渡期だったけどロニーの弟ジョニーもゲイリーもいたし、ゴキゲンなピアノ弾きのビリー・パウエルもいたのに...

「フリーバード」聴きたかったなぁ。それなのにどうして行かなかったんだ?

③せめてグレッグ在籍中のオールマンズが観たかった!

91年の初来日公演があるのも、続けて92年に日本に来たのも知っていました。多分『シェーズ・オブ・トゥ・ワールド』発売に合わせたツアーだったのかな?ライヴ・アルバム(『アン・イブニング』ファースト・セット&セカンド・セット)も2枚出て、ほぼリアルタイムで当時再結成後の心地よいグルーヴ感を堪能していました。特にセカンド・セット(発売は95年)は良く聴いていましたね。この再結成後のオールマンズって、グレッグのしゃがれ声に磨きがかかってめっちゃカッコ良いんですよね。バンドも(音源を聴く限り)絶好調みたいだし。

それなのにどうして観に行かなかったんだ?オレ。

それよりもずっと前に初めて『フィルモア』に針を落とした時、A面1曲目「ステイツボロ・ブルース」のイントロを聴いた瞬間、全身に高圧電流が流れました。使い方は違うけど“身の毛もよだつ”ってこのこと。

もしかしたらファースト・インパクトの大きさで言えば「明日なき暴走」を聴いたとき以上だったかも。とにかくそれからしばらくはオールマンズにどっぷりハマって、そのままサザンロックの世界に引き込まれていました。その流れで出会ったのがレーナードだったわけです。この二つのバンドは未だに大好きで良く聴いています。

去年新宿のレコード屋さんでドイツ盤の5枚組『フィルモア』箱見つけて買っちゃいました。通常盤も含めて何枚同じの持ってるんだ?オレ。

ちょっと話が逸れますが、スコセッシ監督の傑作『ディパーテッド』の劇中、コステロの経営するバーで他の客からからかわれたレオナルド・ディカプリオ演じるビリーがブチ切れて殴りまくるシーンで流れていたのがオールマンズの「ワン・ウェイ・アウト」。暴力シーンとは裏腹に、この作品で一番感動を覚えた場面はココです。ここはもう泣くに泣きました(笑)

当然『フィルモア』やその「ワン・ウェイ・アウト」が入った『桃』のようなドロドロ濃厚なライヴ音源が一番好きですが、反面『ブラザーズ・アンド・シスターズ』の軽いカントリー風なアルバムも大好きです。捨て曲なしの軽快なこのアルバム。大ヒット曲「ランブリン・マン」も良いけど、僕は「サウスバウンド」と「ジェシカ」が好きでたまりません。

「ジェシカ」のどこまでも天に昇っていくような、ディッキーのねっとり(でもデュアンのそれとは全く違う)としたギターの音色。インストゥルメンタルなのに、まるでディッキーが歌っているかのように聴こえてくるこの曲が個人的には最高かも。よくエンドレスでリピート(勿論カセットテープ)しながら朝までクルマで走り回っていたっけなぁ。

この曲こそが”In Memory of Dickey Betts”。

Guitar Greats - Jessica - Dickey Betts - 11/12/1984 - Capitol Theatre

今更ですが、そのディッキー・ベッツが鬼籍に入られました。確か2013年に自身のグレイト・サザンを率いて来日しました。この時も何で行かなかったんだろう?オールマンズじゃなかったから?悔やんでも悔やみきれません。

オールマンズ在籍中は色々メンバー(特にグレッグ)とモメていたようですが、天国ではみんなで仲良く好きなだけジャムってくださいね。

 

Rest in Peace...

ディッキーさん安らかに。

 


アクロス24ナイツ

2023-06-23 22:39:01 | Blues
都会に遅れること二週間。仙台でもようやく今日から公開されました。

エリック・クラプトン アクロス24ナイツ 予告編


『24ナイツ』リリース当時はちょうど名盤『ジャーニーマン』のツアーを観たばかりだったので、しょっちゅうターンテーブルに載せていました。
あの頃はロック(ブルース?)ミュージシャンがオーケストラと共演するなんて(自分が若かったせいで)想像もできなかったし、ブルース・バンドのステージも(自分が若かったせいで)イマイチだったし、何より「いとしのレイラ」のライヴ・バージョンが聴きたかったのに入っていないし(それまでのライブ・アルバムでも「レイラ」が入っているのは殆どなかったけど)、Eストリート・バンドとローリング・ストーンズがイチバンだと信じていたので、エリックのバンドの面々のスゴさも(自分が若かったせいで)良く分かっていなかったから、9ピースバンドの面(アナログ盤ディスク1のB面)ばっかり聴いていました。
今でもこのときの「ワンダフル・トゥナイト」はおセンチなエリックの魅力爆発!今回の『ディフィニティヴ・24ナイツ』で初めてオフィシャルで登場した「レイラ」よりも51秒も長いバージョンが大好きです。だから4月の武道館で披露された”ほぼアルバム・バージョンのまんま”版が物足りなくて物足りなくて...。

そしてほぼ同時期に出た映像作品(VHSで持っていました)は画質は悪いし編集は荒いしで、あまりすきじゃありませんでした。

しかし!!

今回公開された『アクロス24ナイツ』は全くの別物。音も映像も見違えるほどにキレイに生まれ変わって、件の「ワンダフル」もオリジナル『24ナイツ』収録版ではなく、オーケストラ版。初めて聴いたけどそれがまた良いんです。
そしてブルース・バンドの場面も、『ザ・ディフィニティヴ・24ナイツ』の音源よりも遥かに素晴らしいのにビックリしました。このステージの数年後に鬼籍に入られたアルバート・コリンズをフューチャーした「ブラック・キャット・ボーン」(ジョニー・ウィンターの曲なんですね)と、今や大好きなミュージシャンである、バディー・マザー・フ〇〇カー・ガイをフューチャーした「マイ・タイム・アフター・ア・ホワイル」は、あまりの楽しさに涙が止まらなくなるアドリブだらけの名演です。この楽しさは音源からでも十分伝わってくるんですが、バディの後ろで終始ニコニコしながらバディを見守るエリックの表情や、バディに呼ばれて「なかなか上手いじゃないか!」とからかわれながらギターバトルを展開するエリックの姿、ハイテンションで時計を気にしながらアドリブをやめないバディのお茶目な様子なんかは、映像ならでは。この2曲を観るだけでも劇場に足を運ぶ価値ありです。

全47曲5時間48分にもなる『ザ・ディフィニティヴ・24ナイツ』からすればダイジェストのダイジェストのような映画ですが、ベルサーチのスーツに身を包んで、時折長い髪をかき上げながら今の10倍はギターを弾きまくっていた若き日のエリックが存分に楽しめる115分です。

劇場においでの際は大き目のタオルを持参することをおススメします。

また観にいこうっと。





エリック爺さんと過ごした一週間

2023-04-27 19:50:35 | Blues
大盛況に終わったエリック・クラプトンの武道館6公演。エリック爺さんも78になるので、もしかしたら見納めかも...と、全公演観たかったんですけが19、21、24日の3公演だけ参加してきました。

4月19日(水)
01. Blue Rainbow
02. Pretending
03.Key To The Highway
04.Hoochie Coochoe Man
05.I Shot the Sheriff
06. Kind Hearted Woman
07. Nobody Knows You When You’re Down And Out
08. Call Me The Breeze
09. Sam Hall
10. Tears In Heaven
11. Kerry
12.Badge
13. Wonderful Tonight
14. Crossroads
15. Little Queen Of Spades
16. Layla

17. High Time We Went

4月21日(金)
The 100th Show set was:

01. Blue Rainbow
02. Pretending
03.Key To The Highway
04.Hoochie Coochoe Man
05.I Shot the Sheriff
06. Kind Hearted Woman
07. Nobody Knows You When You’re Down And Out
08. Call Me The Breeze
09. Sam Hall
10. Tears In Heaven
11. Kerry
12.Badge
13. Wonderful Tonight
14. Crossroads
15. Little Queen Of Spades
16. Cocaine
17. High Time We Went

4月24日(月)
01. Blue Rainbow
02. Pretending
03.Key To The Highway
04.Hoochie Coochoe Man
05.I Shot the Sheriff
06. Kind Hearted Woman
07. Nobody Knows You When You’re Down And Out
08. Call Me The Breeze
09. Sam Hall
10. Tears In Heaven
11. Badge
12. Wonderful Tonight
13. Crossroads
14. Little Queen Of Spades
15. Cocaine

16. High Time We Went

オフィシャルサイト Where's ERIC!(このサイト面白いですよね)より
https://whereseric.com/eric-clapton-news/

大まかに言えば前半の3公演のシメは「レイラ」、後半3公演は「コカイン」。例によってセットリストの大幅な入れ替えはなくて(22、24日は「ケリー」がオチました)、連日19時ジャストスタートの作り込まれた全17(16)曲のカンペキなショウを堪能させて頂きました。

超個人的(観た3公演の比較)には、お客さんの熱気がスゴくて一番演奏が素晴らしかったのが千秋楽。開演前から異様な雰囲気で(セレモニーもあって)一番盛り上がったのが21日の100回記念公演。バンドが一番リラックスして心地よかったのが中日19日。

一番グッズ売り場が混んでいたのが21日、逆に空いていたのが19日でした。しかし相変わらず時間かかり過ぎ。しかも並んでいる最中、何が売り切れているのかがテント近くに行かなきゃ分からないという、時間のムダ以外なにものでもない売り方。これは強く改善を望みます。

一番スムーズに退場できたのが21日(アリーナ下手側前方だったので出口が近かった)。一番渋滞に巻き込まれたのが19日。これは久しぶりの武道館、久しぶりのエリック爺さんの余韻に浸っていたせいで、出遅れました(笑)

オープニングのジェフ・ベックを彷彿させるギターが印象的なインストゥルメンタル曲「ブルー・レインボウ」にまず泣かされ、近年のオープニング・ナンバーの定番、傑作アルバム『ジャーニーマン』でもオープニングを飾る「プリテンディング」で本編がスタート。御年78歳の後期高齢者とは思えない、若々しくも猛々しい野太いソロを聴かせてくれます。
挨拶もそこそこに「ハイウェイへの関門」(『レイラ』収録のデュアンとの掛け合いギター・バージョンが好き)「フーチー・クーチー・マン」、2曲の濃厚なブルースを畳みかけてきます。どちらもエリック爺さんのショウではお馴染みではありますけど、特に後者のようなコテコテのブルースを演奏して武道館が揺れる程の歓声が上がる日がくるなんて...。
若い頃ロック一辺倒だった僕にブルースの奥深さ、心地良さを教えてくれたエリック(この頃はまだ彼も若かった)。彼に出会わなかったら「フーチー・クーチー・マン」なんて聴かずに終わってたかと思うと感謝しかありませんね。

今回あまりのカッコよさにびっくりしたのが「アイ・ショット・ザ・シェリフ」。これまでは正直あんまり好きな曲ではありませんでした(レゲエが苦手)。『461オーシャン・ブルーバード』の頃のエリックはレゲエとかの影響受けまくっていましたね。
しかし武道館では、ネイザンのゴキゲンなベースに導かれて爺さんが野太い音でストラトを弾きまくりシャウトしまくる。
「え?こんなにカッコ良い歌だったけ?」と呆気にとられてしまい、いつしか涙が溢れていました。先入観は良くないですね。反省。

続いてローバート・ジョンソンの「カインド・ハーティッド・ウーマン・ブルース」。この曲はナマ初体験(だと思う)で、名著『エリック・クラプトン/レコーディングセッション』によればそこから『ジャスト・ワン・ナイト』に続く『バックレス』ツアーの一環で、78年の英国で初披露されたようです。その本によれば”グラスゴウの会場を埋めたラッキーなスコットランドのファンはこの曲を聴くことができたのであった...”となっています。
ま、その後2004年のアルバム『セッション・フォー・ロバート・J』に収録されましたけど、これまた脂っこいブルースでした。

そしてここからがアコースティック・セッション。『バルコニー』でもオープニングを飾ったベッシー・スミスというよりドミノスの大名曲「誰も知らない」から。このバージョンを聴いて泣けない人とは友だちになれません。全日とも素晴らしい演奏でした。この曲歌っているときの爺さんって、とっても気持ちよさそうなんですよね。
アコースティック2曲目はJJ・ケイルの「コール・ミーザ・ブリーズ」。僕としてはレーナード・スキナードのバージョンの方が耳に馴染んでいるスワンプ・ロックの傑作。今回はオリジナルに近い雰囲気でジワジワと迫って来るような不思議な感じに仕上がっていました。
3曲目に登場したのが、初めましての「サム・ホール」。不勉強で存じ上げていなかった、ブリティッシュ・トラディショナル・ソング。このところ訃報が続いていたせいか、色々なミュージシャンに贈る追悼の意味があったとか。静かな中に力強さを感じさせる気持ちのこもった演奏でしたね。
セットリストがほぼ固定だったので、「サム」が終わった辺りで会場内の様子が”あの曲”に対する期待に変わっていきました。

そう、アコースティック・セッション4曲目は「ティアーズ・イン・ヘヴン」。みんなこの曲を聴いて泣きたかった。
発表以来、幾度となくナマで聴いてきましたが、今まではそれ程思い入れもなく「キレイな曲だよな。きっとコナーくんにも想いは届いているはず」という感じでいました。映画『12小節の人生』でもハイライトになっていまいたよね。
でも今ではこの曲を作った彼の気持ちが痛いほど分かるようになり、涙なしでは聴いていられません。僕のテーマ曲(インスタの別アカウントに名前を拝借しました)になっています。
しかもただでさえ冷静に聴いていられないのに、ポールがプロコル・ハルムの「蒼い影」(僕はジョー・コッカーのバージョンも好きです)のあのフレーズをオルガンで間奏にブチ込んできた瞬間に涙腺はどっかにいってしまいました。特に千秋楽の演奏は沁みましたねぇ。

アコースティックのラストを飾ったのは、最後の2公演ではセット落ちした、ケリー・ルイスに捧げられた「ケリー」。『バルコニー』でも聴かせてくれた美しい旋律のインストゥルメンタル。長い曲じゃないので全公演でやってくれても良かったんじゃない?

さあ、ショウもいよいよ終盤。再びストラトに持ち替えての「バッジ」。アルバムではアンジェロ・ミステリオーソがサイド・ギターを担当した、言わずと知れたクリーム時代の名曲。何度聴いてもジョージのカオが浮かんできます。今ツアーでのギターソロは強烈でした。
続く「ワンダフル・トゥナイト」もロマンティストなエリックの代名詞。残念ながら今回はアルバム・バージョンに忠実な超ショート版でした。僕は『ジャーニーマン』ツアーの頃の、9分を超えるムダに伸ばされたおセンチ・バージョンが大好きなので、物足りなくて物足りなくて...
もしかしたら爺さん、この曲飽きてる?「みんな期待してるから仕方ない。とりあえずやっとくか」って感じ?そんなことはないと信じたいですけど。

第一部のシメの3曲は濃厚でした。僕の初日(19日)は「クロスロード」~「リトル・クィーン・オブ・スペイズ」~「レイラ」、21日から千秋楽は「レイラ」に代わって「コカイン」。

お馴染み「クロスロード」は近年のライヴ風にソロ・パートを回して(千秋楽のクリスのピアノ・ソロは鬼気迫る名演)、あまり間延びしない軽い感じ。僕は(ナマで観たことはないけ)クリームやドミノス時代のネチョネチョしたヤツが好みだけど仕方ありませんよね。
そして僕は初めてナマで耳にした、これまたロバート・ジョンソンの「リトル・クィーン・オブ・スペイズ」。♪スペードのクィーンみたいな可愛いオンナ...という如何にもブルース!でねっとりとしたギターを聴かせてくれました。

19日はここから「レイラ」に続きました。俗に言う”エレクトリック”な「レイラ」です。僕がエリックのショウを観始めた30数年前と比べれば(あくまでも当時との比較です)キーは低いし声は出ていないし、正直かったるい演奏かもしれません。しかも『バルコニー』で聴かせてくれた最新のアコースティック・バージョンが素晴らしかったので、今回はそっちを見せてくれるものだと思っていました。
そしたら初日のレビューに「1万人の観客「レイラ」で総立ち!」と書いてあったのでびっくり。
しかも何だかんだ言ったって僕は「レイラ」が大好きです。イントロのギターソロからむせび泣くようなボーカル、そして終盤の天に昇っていくようなコーダ。この時点で涙腺なんてもう何度目かの崩壊のときを迎えていました。あのコーダを聴くだけでも観に行く価値があると思います。
でもこの曲はオリジナルが完璧すぎるし、どんな超絶ギタリストと共演してもデュアンのようなスライドは聴けません。唯一デレク・トラックスがバックに付いたときは近いものがありましたっけ。
ただ良く考えてみれば、これを目の前で演奏しているのは御年78歳の立派な後期高齢者。それを思えばフルバンド・バージョンで観れただけでも幸せ者だったんですよね。

後半の3公演は「レイラ」に取って代わって「コカイン」(今回はJJ祭りのようでした)が第一部の〆に。ネイザンのゴキゲンなベースの乗って始まる様はトリハダものです。
この曲は許されるけどローリング・ストーンズの「ブラウン・シュガー」はダメってのが理解できないくらいのドラッグ賛歌。
でもあのコーラスの

She don't lie, she don't lie, she don't lie
Cocaine!
That dirty cocaine

を大合唱するのってめっちゃ気持ち良いんですよねぇ。

そして21日は特別な日(って思っていたのはお客さんだけ?爺さんにとっては通過点?)だから、続いて「レイラ」って確信していたし、千秋楽も「これで最後だし、そのために一曲({ケリー」)飛ばしたんでしょ?」って疑いの余地がなかったのにおしまい。我が道を行くエリック爺さん健在でした。会場の雰囲気、空気読めたら普通は勢いで演っちゃいますよ。

結局全日通してアンコールはジョー・コッカーの「ハイ・タイム・ウィ・ウェント」の一曲のみ。しかもエリック爺さんではなくキーボードのポールのリードボーカルで。
ただ、このポールの歌声がまた圧倒的に素晴らしかったんです。彼はこの武道館公演のあと、自身のバンドを従えてオランダをツアーで回るとか。遠目にはドクター・ジョンを彷彿させる雰囲気も含めて、今後ちょっと追っかけてみたいアーティストと出会ってしまいました。
エリック爺さんはというと、そのポールの歌声やメンバーのノリノリのソロプレイを笑顔で見守りながら淡々とリズムを刻んでいました。

彼のスゴいところってそういう”決して出しゃばらず、メンバーを立てて自分は裏方に徹する”ことができるところじゃないかな。ギター・バトルはお手の物だけど、アンディがいた頃も彼がボーカルとってるときは絶対前面に出なかったし、ジェフやジョージと一緒だったときも一歩下がってギタリストになりきっていましたもんねぇ。
エリック爺さんのそんなメリハリがつけられるところが大好きです。

千秋楽、終始ゴキゲンでずっとニコニコ優しい笑顔を振りまいていたし、多分一番喋っていたと思います。その中で何故か恥ずかしそうに「また会いましょう!」的なことを仰っていましたよね?
アンコール後の鳴りやまないカーテンコールの中、名残惜しそうに観客席に向って笑顔を見せてくれていた爺さんでしたが、スクリーンに映し出されたおカオのアップが一瞬だけ寂しそうに見えたのは僕だけではないはず。
近年(というかこの2年)はジェフをはじめ、同世代の仲間たちが次々と鬼籍に入られています。爺さんはとっても元気そうだったし、もうすぐ80とは思えないほど指はキレイだったし(関係ないか)、まだまだ大丈夫だとは思います。
今回の武道館100回なんてきっと通過点だから、きっと110回、120回と次の目標を定めていることでしょう。その時はもう立ってギターが弾けないかもしれません。もしかしたら10曲くらいしか演れないかもしれません。ジョニー・ウィンタースの晩年のように車椅子に乗ってくるかもしれません。でも僕もまた絶対にその瞬間にに立ち会って一緒にお祝いしたいので、エリック爺さん、いつまでもお元気でいてください。

素晴らしい時間を貴方と共有できて幸せでした。たった17曲かも知れないけど、研ぎ澄まされた濃密な時間でした。感謝の言葉しかありません。三度も行かせてもらえたわがままを許してくれた家族、あの時間を共有できた全ての皆さんにも感謝します。

オツカレサマデシタ!

Head For Backstage Pass R.I.P Jeff...

2023-01-13 00:17:26 | Blues
ジェフ・ベックが亡くなった?そんなニュースで一気に目が覚めた12日の朝。

先日、お客さんとジェフの話をしながら(大して持ってるワケじゃないけど)古いレコードを流しまくっていたばかりなのに...

細菌性髄膜炎?子どもの病気かと思っていました。何かとっても悔しい。

ブルースやローリング・ストーンズのように何を置いてでも大好き!っていうミュージシャンだはありませんでしたが、特に晩年の楽しそうにギターを弾いている姿がたまらなく好きでした。バンドの紅一点、ベーシストのタル・ウィルケンフィルドがめっちゃ可愛かったせいですかね?
でも僕の好きなアルバムは、ヤードバーズ時代でもなく、ベック・グループ時代のものでもなく(もちろんどちらにも好きなのはありますけど)70年代半ばの『ブロウ・バイ・ブロウ』と『ワイアード』。聴いていてとっとも心地よい、ブルースを下敷きにしたフュージョン時代の作品ですね。全編インストゥルメンタルなのに、ジェフの声(魂)が聴こえてくるような気がします。それがスゴいんです。ジェフが全編歌っているみたいです。

Head For Backstage Pass / Jeff Beck


初めて”ナマ”ジェフに会ったのは今から20年ほど前。まだ仙台駅ウラにZepp仙台があった頃のツアー。あまりにもステージが近くて、会場の熱気に圧倒されてジェフの信じられない指の動きばかりに見惚れていました。

次に会えたのが2009年、エリック・クラプトンと奇蹟の競演を果たしたさいたまでのジョイント・コンサート。
このときジェフのバックには、大好きなタルはもちろん、キーボードは元Eストリーターのデヴィッド・サンシャス!デヴィッドとは2002年のエリック・クラプトンのツアーでも数回会っているので、初めましてではありませんでした。

この日の様子はロッキングオン誌の記事に詳しいのでそちらをご覧ください。確かに年齢層は高めでしたね(笑)
https://rockinon.com/live/detail/17928



結果、この2回しかジェフの神業を観る機会はありませんでしたけど、あの超絶プレーを体感できたのは僕の財産です。
これを機に先祖返りして、初期の作品群も聴いていきたいと思います。

安らかに...