表通りの裏通り

~珈琲とロックと道楽の日々~
ブルース・スプリングスティーンとスティーブ・マックィーンと渥美清さんが人生の師匠です。

やっぱり短編が好き

2020-07-18 15:19:42 | 本と雑誌
『村上T』の興奮冷めやらぬ(大げさ)中、久しぶり(6年ぶりだそう)に村上さんの短編集が発刊されました。

https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163912394

最近の村上さんの長編は大作が多く、読書のリズムに乗るまで結構時間を要します(個人の感想です)が、長編と長編の合間(最近のサイクルはそうですよね)に出される短編集が個人的に大好きなんです。

昔から活字中毒気味で、今でも時間つぶしにはスマホより活字。週刊誌の類は一切読まないから、鉄路で旅行の際は文庫本を買って(値段も週刊誌と大差ないですもんね)読んでます。何より毎朝3紙の新聞を読むの時間が幸せな人で、休刊日の絶望感は筆舌に尽くし難いほどの苦行です。

かといって小説なら」何でもかんでも片っ端から手あたり次第読む人でもありません。俗に”文豪”と呼ばれる方々の作品は数えるほどしか読んだことがありませんし、賞レースを賑わす作品には全く興味がありません。本屋さんは大好きだけどベストセラーのコーナーもチラっと眺める程度です。
しかも一回気に入ると同じ作品を何度も何度も読むタイプの、出版社からみたら”全くカネにならないタチの悪い本好き”です。

と、前置きが長くなってしまいましたね。今回の『一人称単数』は表題作のみ書き下ろしで、その他の7作品は「文學界」という手にしたことのない(多分)文学雑誌上で発表された作品のようです。

感想は省略します。どれもさすが村上さん!的な面白さ溢れる作品群ですが、僕が好きな作品は「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」、「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」(よく見ると表紙にジャケ写が!)、「ヤクルト・スワローズ詩集」、「品川猿の告白」(例のあの作品の関連ですね)の4作品。特に「チャーリー・パーカー」は面白かったです。

そして表題作。これは何も言えない余韻の残る不思議な味わいのある作品でした。

『騎士団長殺し』から3年半。そろそろ長編の新作が待ち遠しいところですが、『中国行きのスロウ・ボート』以来、僕はやっぱり短編が好きです。


皆さんは信じられますか?

2017-07-03 13:38:06 | 本と雑誌


奥野修司さんの「魂でもいいから、そばにいて 3.11後の霊体験を聞く」を読みながら涙が止まりませんでした。

著者ご本人はあとがきで"事実かどうか検証できない。再現性もないし、客観的な検証もできない。"ので、この本がノンフィクションとして成り立つのか?と自問しています。
しかし僕はそのまま全て(体験者にとっては)100%事実だと受け入れながら読ませて頂きました。立派な震災の記録であり、生々しいノンフィクションだと思います。だからこそ読みながら号泣してしまったのです。

幸いにも僕の親類縁者の中には被災して亡くなった方はいません。母親の故郷、旧河北町の釜谷地区にも近い親戚は残っていませんでした。なので作中に出てくる体験は殆どしていません。
でもあの震災をリアルに体験(僕は多賀城にいました)して、あの惨状を目の当たりにしたら、この本に書かれている体験者の話を真っ向から否定することはできません。むしろ当然起こり得ることであり、もっともっとこのような体験をされた方はいらっしゃると思います。

僕は子供の頃から不思議な体験を数多くしてきました。小学生の頃はオカルト・ブームでもあったし、心霊関連の本も読み漁り、心霊特集のテレビを心待ちにしてきました。ウチにいらっしゃるお客様も、時折「そういえばこの前不思議なことがあったの...」という感じで、何の脈絡もなく不思議な体験談を話してくれたりします。
そのようなことから、以前出版された震災における霊体験の書籍も、最初は「興味本位」で手に取り、不純な気持ちで読んでいました。今思えばこれはいけませんね。あまりにも失礼なことをしてしまいましたね。この場を借りてお詫び致します。

今回はこの反省を生かして、先に書いたように何の先入観も持たずに読みました。当時の状況を思い出しながら...。

もし自分が同じ状況下に置かれたら?大切な家族と死に別れてしまったら?自分だけが残って(あるいは逝って)しまったら?
当時の空気を肌で感じた方ならきっと共鳴できると思います。そんな方は是非一度読んでみてください。そして語り合いましょう。