表通りの裏通り

~珈琲とロックと道楽の日々~
ブルース・スプリングスティーンとスティーブ・マックィーンと渥美清さんが人生の師匠です。

『フォードvsフェラーリ』

2020-01-13 11:22:35 | 映画
映画『フォードvsフェラーリ』予告編 2020年1月10日(金)公開


先日公開された『フォードvsフェラーリ』。一言で言うと、とっても油臭い映画です。とにかくスピード感があって中だるみ一切なし。153分という上映時間も全く長く感じさせない、一気に魅せてくれる作品です。

この映画は是非大スクリーンで、できるだけ音響の良い劇場で観て欲しいですね。
レースシーンやフォードGT40のテスト走行シーン、その他色んな車の走る姿や排気音(もちろん吸気音も)を大音量で体感してください。
前述したようにアブラの匂い、タイヤや金属の焼ける匂いそして環境にうるさい現代では絶対に有り得ない濃厚な排気ガスが漂ってくる錯覚すらしちゃいます。

その大迫力のレースのシーンは、まるで一緒に戦って(乗って)いるかのようなリアリティ。インディやル・マンの場面で周回を重ねるごとに、マシン(ドライバーも)が薄汚れていく感じはたまりません。


とは言え、単なるレース映画になっていないところがこの作品の面白さです。物語の核になるのはキャロル・シェエルビーとケン・マイルズの激しくぶつかり合う友情物語と、フォードという大企業に翻弄される人たちの葛藤。
フォードと自分の理想に板挟みされて苦悩するシェルビー役のマット・ディモン。こういう複雑な立場の人間を演じるとピカイチですね。
対するマイルズを演じたクリスチャン・ベイルのやさぐれた演技も最高です。僕の中では「クリスチャン・ベイル=ブルース・ウェイン」だったけど、ようやくその呪縛から抜け出せました。
この相反する二人の「ル・マンで勝つ」ことへの執念。ここがこの作品の一番の見どころではないでしょうか。

アメリカ映画なので、もちろんフェラーリは敵役です。当時資金難でフォードが買収しようとしてたのは知りませんでしたが、結果イタリアの至宝(フェラーリ)を金満アメリカ(フォード)に奪われてはなるものか!と手を差し伸べたのがフィアット。きっとそういう経緯でフィアットの傘下に入った(その割にわが道を行っていますが)んですね。
是非イタリアでフェラーリの側から描いた「フェラーリvsフォード」を作って頂きたい。

そんなせっかくの美味しい話をソデにされて怒り心頭のデューク(フォード二世)が、社運をかけて「ル・マンでフェラーリに勝て!!」というのも納得。ただ、それを命じられた男たちはそんなことではなく、純粋にレースに勝ちたい一心で困難に挑んでいく姿が、めちゃくちゃカッコ良く見えちゃいます。

最後に印象に残ったシーンを一つ。ほんのワンシーンでセリフのみですけど。

レーサーを引退し、かのシェルビーを興して魅力的なスポーツカーを作っていたキャロルが、バックオーダーを抱えているのにレース・カー開発にのめり込んでいくあたり。
「おい、お客はどうするんだ?マックィーン(もちろんスティーブ)も待たせてるぞ」の問いかけに何も答えずに一瞬だけ困惑の表情を浮かべながらも無言で去っていくシーン。

シビれました(笑)

次は4DXで観ようかな。