表通りの裏通り

~珈琲とロックと道楽の日々~
ブルース・スプリングスティーンとスティーブ・マックィーンと渥美清さんが人生の師匠です。

マツダカペラ~ドロンさんに愛をこめて~

2024-08-24 13:27:43 | 映画

今更ですがアラン・ドロンさんがお亡くなりになりました。1935年生まれの88歳。マックィーンやイーストウッド御大が30年生まれだから結構年下。だけど若い頃から活躍していた(『太陽がいっぱい』とか)ので、同じ世代だと思っていました。 

 

数ある映画ではなく僕の一番のドロンさんの思い出は、中学生の頃ドロンさんが好きすぎてマツダのディーラーに(チャリで)行ってポスターとパンフレット(買いもしないのに)を頂いたこと。

同時期にレナウンのダーバンのCMにも出ていたので、背広屋さんにもポスターをもらいに行きました。

ついでに言うとR30スカイラインのCMにポール・ニューマンさんが出たときは、日産のお店に駆け込んでポスターと(買いもしないのに)パンフレット(ニューマンさんの写真がいっぱいでした)もらいに行きました。

ジュリアーノ・ジェンマさんがヤマハ・ジェンマのCMに出た頃はバイク屋さんに行ったはずなんですが、ポスターをもらった記憶はありません。なんでだろう?

マンダムのCMにブロンソンさんが出ていた頃はまだ小学生だったけど、町のクスリ屋さんなんかでごく稀に当時もののマンダム・ブロンソンさんのポスターが貼ったまんまになっていました。確か一枚くらい頂いたはず。

母親に捨てられていなければポスターとパンフレット、どちらも実家に残っているんじゃないですかね。色々捨てられたからなぁ〜。タミヤの70年代初期からずっと揃えて持っていたカタログとかタミヤニュース(初期はチラシ風)とかも無慈悲に。

助けて!ドロンさん!

マツダ カペラCM アラン・ドロン

「パリ十六区。男と女の交差点」

今聞くとなんてステキなキャッチコピーなんでしょう。中学生の僕にはイマイチ理解できなかったけど、大人になった今なら何となく分かる気がします。

当時はまだ吹き替え全盛期、役者さんのナマ声を聞くには映画館に行くしか方法はありませんでした。この数年後レンタルビデオ店ができるまでは、OAの映画をビデオに録画して何度も何度も観ていました。二か国語放送が始まって、我が家のビデオデッキがそれに対応して初めてテレビでナマ声が聞けるようになったんですよね。

僕の人生の師匠の一人、マックィーンさんのナマ声を聞きたいってだけで『栄光のル・マン』のサントラも買いました。それには劇中のシーンがいくつか収録されていて、ナマ声が聞けたのです。これには感動しましたよ。今じゃ信じられないですよね。

ドロンさんに話を戻すと、CMなんていつなんの番組で見れるか分かりません。たまたま流れていた番組にマツダがスポンサーについていたとき(ニューマン・スカイラインのときも同じことしていました。)、ビデオデッキの録画ボタンを一時停止でスタンばって、CMが始まったら録画をスタートさせるというバカなこともしてました。運良く流れても上手く録画できなかったりはしたけど、それも含めて楽しい思い出です。

でもこの型のカペラはちょっとソソられませんねぇ(オーナーさんすみません)。唯一2ドアクーペの2000GT-Xはカッコ良いです。

 

個人的にドロンさんが好きなポイントは、ズバリ眉間の皺です。ドロンさんの眉間には、キレイに二本の筋が入ります。ちょっと目を細めたときに浮かぶ日本の縦皺。僕は眉間に一本だから、映画を観る度にドロンさんみたくなりたくて指で摘まんでいました。アホですね。

それに上目遣いで三白眼の切れ長の目。髪の毛は黒いけど青い瞳。笑顔だって満面の笑みではなく、ウラに何かを秘めたような、笑っているようで笑っていない笑顔。これが「陰のある美男子」たる所以ですね。

決してスゴい演技派ではないけど、役を自分の引っ張り込んで(役になり切る憑依型の逆)自分のものにしてしまうタイプの役者さん。いつでもアラン・ドロンなのにしっかり役にも染まっている絶妙の塩梅感。

俗にいうイケメン俳優なら掃いて捨てる程いるけど、ドロンさんのような役者はいません(断言)。

 

さて、好きな役者さんが亡くなった際の恒例、【好きな作品ランキング】!!

ただ全ての作品を観たワケじゃないので、どうしてもベタなしかも中高生の頃に『〇〇洋画劇場』とかで観たのが殆どになっちゃうのは許してくださいね。

 

第8位・・・・・『エアポート’80』

多分ロードショーで初めて劇場で観た(小学校5年生か6年生)ドロンさんの映画。パニック映画全盛(やや下火になってたかな)当時人気だったコンコルド目当てで観に行ったのかも。『エアポート』シリーズ好きだったし。ただ、ドロンさんの機長姿がイカしてた記憶しかありません。

第7位・・・・・『さらば友よ』

意外にドロンさんって相方に華を持たせるのが上手いかも。ジャン・ギャバン御大と共演した作品も決して先輩の前には出ず、『暗殺者のメロディ』でもリチャード・バートンさんを立て、後述する『レッド・サン』はその最たるものだったのでは?主演なはずなのにどこから見てもブロンソンさんの映画。だって天下のドロンさんにブロンソンさんが煙草に火をつけさせるんだもの。よくこの作品を評して「ドロンさんが完全にブロンソンさんに食われた」って言われるけど、僕はこれが大スタードロンさんの余裕だと思っています。でもブロンソンさんがカッコよすぎ(笑)

第6位・・・・・『アラン・ドロンのゾロ』

ドロンさんが怪傑ゾロを演じてカッコ悪いわけがありません。アクションスターじゃないのにまるで猛禽類のようなヒラリヒラリとした身のこなしが最高です。記憶は定かではないけど、確か黒ずくめの衣装に目元マスク。マスクをしていても二枚目にしか見えないのがドロンさんのスゴいところ。多分日曜洋画劇場で観たはず。

第5位・・・・・『ボルサリーノ』

中坊にジャン=ポ-ル・ベルモンドの慈しみが分かるはずもなく(今は大好き)、ひたすらカッコ良いドロンさんにくぎ付け。BGMもステキだし、「お洒落なフランス映画」(着こなしのカッコ良さを知ったのは大人になってからですけど)のイメージ。いつかはボルサリーノ帽が似合う大人になりたいですね。それとトレンチコート。

第4位・・・・・『太陽がいっぱい』

この大傑作がこの順位なのは、あまりにも何回も観過ぎたから。ドロンさん演じるトム・リプリーの「絶対なり上がってやる!」という野心むき出しの様子が、若き日のドロンさんとリンクするからか、物語にグイグイ引き込まれていくカンペキな映画。

亡くなる数日前にも店でお客さんと観ていましたが、陰のある二枚目、美男子(いずれも死語)を演じさせたらアンソニー・パーキンスさんと双璧。パーキンスさんは神経症的な繊細さを感じさせる反面、ドロンさんは影の裏に何か隠してる...って感じ。

先日、朝日新聞に秦早穂子さんによるドロンさん追悼の寄稿文が掲載されました。表題は「24歳の彼 未来だけを見ていた」。まだ撮影中でまだ日本では当時無名だったドロンさんのこの作品のラッシュを観て、直感的に「買い!」と思ったという秦さんの回想が素晴らしい名文でした。ドロンさんに読ませてあげたいくらい。

多分「今まで観た映画ランキング」を考えたら、間違いなく20位以内には入る作品です。

第3位・・・・・『山猫』

背伸びして昔のヨーロッパ映画を観まくっていた頃、オリジナルのイタリア語版でリバイバル公開されたときに観に行きました。ハイ、完全に”修行”でした。中学生に19世紀のイタリア貴族の話が分かるわけがありません。しかも3時間越え。

ドロンさんはバート・ランカスターの甥っ子のタンクレディ役。確か右目に黒い眼帯をしてた軍人さんだったはず。通ぶって撃沈(最後まで寝ないでしっかり観ましたけど)したのは、完全にルキノ・ビスコンティ監督(の名前)とドロンさん目当てでした。ただ、子供心にもこの作品(『若者のすべて』も。さすが男〇家のビスコンティ監督)の中のドロンさんって色っぽいんですよね。ストーリーは全く覚えていないのに豪華絢爛な映像とか、そういうディティールだけが脳裏に焼き付いています。

第2位・・・・・『レッド・サン』

ドロンさんの訃報を聞いてまず最初に観たのがこの作品を吹き替え版で。何といっても声優陣が豪華絢爛。ドロンさんはもちろん野沢那智さん(堀さんも捨てがたいけど)、ブロンソンさんは大塚周夫さん、三船さんのアテは息子の大塚明夫さん。これがご本人が喋ってるんじゃないか?ってくらいソックリ!他のお二人も当然ハマりまくっているので、吹き替え版の違和感は全くありません。まるで日本語で演じてるようです。

ドロンさん演じる”如何にも平気で人を裏切りそうな”ゴーシュ。実際観るまで(中学生の頃)は「アラン・ドロンの西部劇?」(実は二本目なんですよね。この前にディーン・マーティンと共演した『テキサス』があるんです。残念ながら未見)どちらかと言えば都会派のイメージしかなかったので、あまりのハマりっぷりにビックリしました。左ぎっちょの拳銃さばきがカッコ良すぎ。あまり出番はないものの口元に笑みを浮かべながら、自分の欲のためなら(上目遣いで...これがたまりません)躊躇なく仲間にも銃口を向けるゴーシュ。

最期はあっけなかったけど、悪党を演じても憎めない愛すべきキャラのゴーシュはドロンさんしか思いつきません。

大好きなこの三人が共演したこの作品は、年末年始の深夜の洋画劇場でも毎年のように放送されていたし、DVD化されたときは真っ先に購入しました。

決して後世に残るような傑作ではないけど、ずっと心に残り続ける大好きな作品です。

第1位・・・・・『冒険者たち』

ドロンさんの作品で断然好きなのがこの作品です。青春映画というにはトウが立ちすぎている三人の冒険物語。テーマ曲「レティシア」も心に残る大傑作です。こっちの方が先ではありますが、まるで『明日に向って撃て!』の三人のように。

しかもこの三人が三人とも大きな夢を持って生きていたのに、途中様々な妨害や不運があってどん底に落ちてしまう...。ま、こうじゃないとドラマは面白くないけど、そこからの物語の展開は映画的高揚感に満ちていて、クライマックスになだれ込みます。

やはりドロンさんはここでも先輩リノ・ヴァンチュラ(吹き替えは森山周一郎さんがピッタリ)さんを立て、僕が一番心を射抜かれた透明感に溢れる女優さん、ジョアンナ・シムカスさんと三人の絶妙なバランスのトライアングルを維持しているように見えるんですよ。

来週WoWoWで追悼放送されるはずです。また観ちゃうんだろうな。

番外編・・・・・『危険なささやき』

意外にも80年代になって初めて、ドロンさんの初監督作品。内容は全く覚えていない(こればっかり)確か刑事ものだったように薄っすら記憶しています。家の納戸を探せば当時のパンフレットが出てくるとは思うけど、『エアポート』に続いて劇場で観た(最後の)ドロンさんの作品です。どんな映画だったんだろう...今はなき一番町の東映パレスで観たはず。

こんな曖昧なのをランキングに入れるなって?

だってギリギリドロンさんの新作を(自分の意志で)劇場に観に行けた世代ですもん。自慢したいでしょ(笑)

他にも色々ありますが、また自分が歳を重ねていけばランキングも変わるだろうし、改めて他の作品も観直してみたいと思います。

実は傑作の誉れ高い『サムライ』ってまだ観ていないんですよ。

 

※8月26日追記

『サムライ』観ました。よく言えばとってもクールな映画。だけど物語が淡々と進み、あまり登場人物の心理描写を深掘りしないので正直イマイチでした。

昔はこの作品のテンポが世の流れに合っていたんでしょうね。ドロンさんの着こなしや(全く変わらない)表情をじっくり見るには最適。

あとは時代的に当時のフランス車がウジャウジャ(当たり前だけど)出てくるのが楽しいですね。