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真田丸 あて書きの凄さ 清水ミチコの仏頂面

2016-05-05 03:29:19 | MUSIC/TV/MOVIE
よくまぁ清水ミチコにこんな役をさせたなぁ。
あてがきという言葉がある。当て書きなのか宛て書きなのかよくわからないから以下あて書きと記載する。
通常、映画・テレビドラマ・舞台・演劇などは脚本(台本)に合わせて配役(キャスティング)されるんだが、あてがきは配役を先に決めてから、役者に合わせて脚本を書くこと。脚本家が「この役は最初からこの人に演じてもらいたかった」ってのはあっても、それは通常せいぜい主役や2-3人のキャストのことだ。

三谷幸喜はあて書きがお得意だ。NHK大河ドラマ真田丸でも、このあて書きで脚本書いてるらしい。
草刈正雄演じる真田昌幸、高嶋政伸演じる北条氏政、近藤正臣演じる本多正信、藤岡弘演じる本多忠勝。見事にあて書きがはまって、始まった頃はどうなることやらって思ってたが、今じゃどのキャラもこんなやつだったんだろうなと思えてくる。勿論、役者が上手いのもあるんだろうが、役者に合わせてキャラクターが作られてあるから、回を重ねるごとにキャラがどんどん生きてくる。違和感がなくなり面白くなってきたぞ。

で、今回秀吉の妹で家康に無理やり嫁がされた旭を清水ミチコが演じてる。
上洛を迫られながらも渋る家康に秀吉は実母まで人質に出す奇策を使う。それを家康は旭に伝えて喜んでもらおうと思うが・・・。実は秀吉の実母の顔なんか家康側は誰も知らないから、旭の表情で本当に実母なのか読み取ろうとするんだけど、これがまた全く無表情でブスッとしたままなのだわ。岡崎城に来てから一度も笑ったことがない旭を清水ミチコが演じてる。あて書きでよくこんな旭を清水ミチコに演じさせようと思ったなぁって感心してしまう。実母が到着して振り返ったとたん「おっかあ!」って泣きつくシーンは秀逸。これで家康は実母と確信するというシーンは、画面登場からずーーーっと仏頂面してた清水ミチコ演じる旭でなければいきなかっただろうね。

他にも豊臣秀吉を演じる小日向文世がいい。いや、小日向文世に合わせて豊臣秀吉を描いた三谷幸喜がすごいのか。
愛嬌と冷酷さ。人情と合理的さ。多分本当の秀吉はこういう人物だったんだろうなって思わされる。
NHK大河の今までの秀吉役は「秀吉」での竹中尚人だと思っていたが、この小日向秀吉はそれを超えるかもしれない。

徳川家康を演じる内野聖陽もいい。これも内野聖陽に合わせた徳川家康を描く三谷幸喜がすごいのか。
多分ほとんどの視聴者ががっかりというか戸惑った、コミカルな徳川家康。タヌキと織田信長に呼ばれてたくらいだから、本当はこれくらい攻撃的で劇場型だが、ユーモアセンスがあった人なのかもしれない。

17話目で、上洛の謁見の事前打ち合わせをする小日向秀吉・内野家康・堺雅人信繁の三人の掛け合いは、特に良かった。面白かった。三谷幸喜らしいテンポあるコミカルな台詞回しと演出だったね。

でも同じ俳優を、この脚本ではこの役をこう言わせて、別の脚本では違う役で使ってこう演出って、三谷幸喜はよく使い分けできるもんだ。

お父さんの真田昌幸に翻弄される真田信幸(源三郎)を演じる大泉洋は、三谷幸喜脚本監督の映画【清洲会議】では豊臣秀吉役だった。
秀吉役の小日向文世は丹羽長秀役だったし、秀吉の正室の寧を演じる鈴木京香はお市の方(信長の妹)、真田昌幸に仕える出浦昌相(乱波衆頭領)を演じる寺島進は黒田官兵衛だった。
石田三成を演じる山本耕史は、三谷幸喜脚本の大河前作【新撰組!】では土方歳三役で、堺雅人は山南敬助役だった。
両方見てる人はちょっとごっちゃになってしまうが、見ているうちに馴染んでくるから不思議。
脚本に合わせて演じわけられる俳優がすごいのか、俳優に合わせて脚本をかける脚本家がすごいのか。どっちだ。

今回徳川家康を演じる内野聖陽は大河【風林火山】で主演・山本勘助役もはまっていたが、なんといってもJIN-仁-の坂本龍馬役がすごくハマってた。
家康家臣の本多正信を演じる本多正信は、大河【龍馬伝】での山内容堂役も印象的。

ちなみに、もう昌幸に殺されちゃったので今後出てこないだろうが、西村雅彦が演じた室賀正武が面白かった。これこそ西村雅彦のキャスティングに合わせて三谷幸喜があて書き脚本を書いた典型的な例っていう感じだった。大泉洋演じる信幸が、会議で何か口を挟んだり意見を言う度に一喝する名台詞「黙れ小童!」がもう聞けないのは残念。
出雲阿国一座の踊り子「藤」として見事に復活してきた木村佳乃のように、「黙れ小童!」復活望む。