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バーボングラス片手のロックな毎日

たたみきれなかったな テセウスの船

2020-03-23 15:35:16 | MUSIC/TV/MOVIE

TBS日曜劇場『テセウスの船』が最終回を迎えた。

最初に結論を書くが、感想は「なんじゃそら」だ。

この終わり方って・・・。

モヤっとするほど後味悪いわけでもなく、イラっとするほど悪くもない。「ふーん。なんだ、こんな感じで終わるのね」ってラストだ。映画なら「金返せ」とか「時間損した」とまではいかないが、「違うのを観りゃよかったな」くらいである。

 

すべての謎が解き明かされてないとか、強引だとか、やっぱりなのかとか、あの設定の回収はどうなったとか、この伏線忘れてないかとか、あの意味深の行動や表情は一体何だったんだとか、まぁ言いたい放題言えるほどに、とにかくまとめきれてないドラマだった。

 

***注意***

今回の記事もかなりのネタバレが含まれます。ドラマを録画しててまだ見てない人や、オンデマンド配信などでこれから一気観する人は読まないでください。また、登場人物の役名や役者名、設定などはうろ覚えで記載していますので間違っている場合があります。

 

このドラマ、第1話を見た時点では「面白いぞ!」って書いた。そして回を重ねるごとに「あれ?迷走してるなぁ」と先日書いた。そして今回、最終回まで見ての感想。終わったドラマの事を今更わざわざ書いても仕方がないんだがね。

 

不満の原因は2個ある。ひとつは裏テーマに「家族(親子)の愛(繋がり)」を持ってきてきたこと。これは後で書く。

そしてもうひとつが、怪しい登場人物多く出しすぎてしまったこと。どいつもこいつも怪しいって感じで描いてたくせに、その伏線や過去すべてが実は単純だったこと。さらにそれらをめっちゃ適当に描かれてたことだ。ひどい時は台詞のみで語って終わり。これでは、ふーんそうだったのねくらいにしかならない。

NHK大河「真田丸」での、本能寺の変とか関ヶ原の戦いなどもうみんなが知ってることは、ナレーションで語らせてスルーする「ナレ死」ってのは斬新だった。本能寺で誰がどうなったかとか、その後の山崎の合戦も、関ヶ原の合戦の結果も、他のドラマやマンガ本などでさんざん描かれてきたから、みんな知ってるよね、なくてもいいよね(わかるよね)、時間(尺)の無駄だってね。

しかしこの「テセウスの船」は原作マンガを読んでないドラマ視聴者は、誰がどんな人か全く知らない。だから、意味深な発言、怪しい行動する登場人物は、その経緯や設定をちゃんとわからせてほしい。そしてその伏線はちゃんと最後に回収(明らかに)して、「あ〜、あれはここに繋がってたのね」とか「そういうことだったのか」って納得させてほしいのだよ。

 

不評だった「あなたの番です」がなぜか「高視聴率ドラマ」と勘違いされてるからか、やたらと登場人物を増やし、それぞれに謎を持たせ、やきもきさせる手法のドラマが流行ってるのか?。今クールも多かったが、「トップナイフ」にしても「シロでもクロでもない世界で〜」も「10の秘密」も、謎が多すぎてついていけないどころか、最後に伏線がちゃんと回収できてないって始末になってた。これじゃぁ不完全燃焼、胸焼けがするよ。

 

過去のドラマになるが野沢尚脚本で木村拓哉主演の「眠れる森」(1998年)というドラマがあった。中山美穂につきまとう謎の男・木村拓哉をはじめ、記憶と過去に複雑に絡み合う人間模様が描かれた傑作だ。仲村トオル、ユースケ・サンタマリア、陣内孝則、本上まなみ、原田美枝子、夏八木勲、石橋凌。どいつもこいつも怪しく、胡散臭いのだが、それぞれ丁寧に描かれ終盤に近づくにつれ一人づつ暴かれていく。最終回までわからなく、そして最後にすべてが回収され、すべてに納得できるドラマだった。

それに比べて、今回のテセウス、怪しい登場人物それぞれの怪しい理由がなんのこっちゃ。怪しそうに描いてただけの人もいれば、こいつが怪しそうにしてたのはなんだったんだっての満載。だめだ。

 

ストーリーのおさらいにもなるのだが、平成元年(1989年)に起こった青酸カリによる無差別連続殺人。この事件の犯人は、主人公田村心(竹内涼真)の父であり警察官の佐野文吾(鈴木亮平)とされてた。

令和2年(2020年)の今、それまで殺人犯の家族として世間から責められ隠れるように生きてきた竹内涼真は父を憎んで生きてきたが、妻・由紀(上野樹里)の言葉に揺り動かされる。

妻・上野樹里の死後、竹内涼真は事件のあった小学校の場所に行くが、そこで吹雪にあい、気がつくとそこは平成元年、事件のあったちょっと前にタイムスリップしてしまう。

31年前、まだ家族みんなが笑って仲が良かった頃の実家。そこに居候させてもらい、悲惨な事件を食い止めるごとく奔走する竹内涼真。そして憎んでたはずの父は尊敬できる父だった。

 

ね、面白そうでしょ。ここまでは良かったのよ。

 

そして上野樹里がスクラップしてくれてた当時の新聞記事を頼りに、父と協力して事件を未然に防ぐも、その度に歴史が変わり、新たな事件が次々と襲いかかる。登場人物はどいつもこいつも怪しい奴ばかり。連続事件の真犯人は誰なのかわからない、そして最大の事件である児童職員21人が亡くなったお楽しみ会での事件を防ぐ前に、竹内涼真は現代に一度戻されてしまう。

戻った現代は、父は収監されたままで、母・和子(榮倉奈々)と兄・慎吾は自殺して死んでいる。上野樹里とは結婚してなくて、雑誌の事件記者担っている。お姉ちゃん佐野鈴(貫地谷しほり)は顔を整形し、名前も村田藍と変えて、事件のあった小学校の職員だった木村さつき(麻生祐未)の養子・木村みきお(加藤みきお/安藤政信)の子供を身ごもっていた。

被害者遺族の会で上野樹里が熱弁してくれたおかげで、当時、恋人の長谷川翼(竜星涼)に青酸カリを渡した松尾紀子(結婚して今は佐々木紀子/芦名星)が、真犯人を知ってると証言してくれることになって家に行くが、貫地谷しほりは麻生祐未に脅され渡された薬を自分で飲んで倒れ救急車で運ばれる。そのどさくさの間に麻生祐未に薬を飲まされ芦名星は死亡。

養子縁組で今は木村姓になってる加藤みきお(安藤政信)は、事件の後遺症で車椅子生活だが、実は歩けるんでしたってお約束のオチ。小学校跡で竹内涼真は襲ってきた安藤政信から「俺が犯人だよ」と事件のカミングアウトされる。「ジ・エンド〜」と叫ばれながらもみ合ってたら、また竹内涼真は過去に飛ばされる。

 

平成元年に再び戻った竹内涼真は、真犯人は加藤みきおだと鈴木亮平に言い、事件を防ぐためみきおを探すも・・・。

 

竹内涼真と鈴木亮平を手玉に取り、翻弄させる加藤みきお。演じた柴崎楓雅君の演技は良かったね。見事なサイコパス具合だ。将来大丈夫かって心配するほどだ。彼のまだ幼いが整った顔立ちが、子供の無邪気さで虫と同じように平気で人殺しができる狂気さを引き立ててる。

 

普通こっからは、加藤みきおを止めること、協力者(真犯人)は誰かってのに焦点当てながら、それまでの登場人物の過去や伏線とか回収すればいいドラマになったはずなのにね。何を欲張ったのかなぁ。

 

お楽しみ会を中止にしてくれと頼むも、校長(笹野高史)には無下に断われ、麻生祐未には反対され、住民の六平直政や今野浩喜にも却下される。多分これは、まだまだみきおの協力者や影で操る真犯人は明かさないぞって引っ張りたかったんだろう。

竹内涼真に説得され、妻の榮倉奈々に子供連れて村を出ろと言う鈴木亮平。最後の夜にみんなでパーティー、楽しそう。そしてタイムカプセルを埋める。これ、てっきりすべてが終わった後、31年後の未来(令和)で掘り出して開けるのかと思ったら、あっさり最終話で開けちゃった。まぁこれはこれで話の流れとしてはいいんだけど、この家族、やたらと信じない、信じる、いや信じないって二転三転しすぎ。

 

みきおに呼び出されたロッジでスタンガン当てられ縛られ監禁される鈴木亮平。次はどうする?って協力者に尋ねるもスタンガン当てられて、鈴木亮平のパトカーの後部座席に転がされる加藤みきお。この事件にいきなり登場してきた宮城県警のキャリア・小藪千豊。

で、いかにも裏で操ってた感満載で登場してきて、実はこの事件には警察組織の闇がどうたらとかあるのかなと思ったら、ただ単に鈴木亮平と過去に因縁があって、何にが何でも鈴木亮平を犯人に仕立て上げたかっただけみたいだ。それなら過去の因縁ってなんだったのか最後にちゃんと描けよ。

 

加藤みきお誘拐は嫌疑不十分で釈放された後、家に帰った途端タイミングよく現れる六平直政と今野浩喜。二人は昨日、草をむしり穴を掘っていた。実は鈴木亮平一家を労うためにイノシシを仕留めて、はっと汁を作ってくれたその用意の穴掘りというオチ。

この二人は、最終回でも記者に囲まれた榮倉奈々を助けるがごとく颯爽と現れ(軽トラだけど)、虫除けスプレーを両手持ちで噴射するいい人達だった。これはちゃんと回収してくれたからいいのだが、今野浩喜のお母さんは過去に村祭りで食べたはっと汁食中毒事件で亡くなってる。これ、最終話前にいきなり差し込まれてきた話で、横に立ってる霜降り明星のせいやもなんかいわくが有るみたい。

最終回でせいやのお母さんが間違えて入れたキノコで食中毒が起こってたらしいが、今野はそれ許せてるのか?それとも、せいやの父(仲本工事)が事件を圧力かけてもみ消したから、今野ら村人は真相は知らされてないままなのか。そこらへんが最後よくわからんかった

 

そして最終回前に、鈴木亮平が逮捕される。

またもや警察に留置されて釈放された鈴木亮平が、迎えに来てくれた榮倉奈々と車で家に帰ったのだが、村はずれに不法投棄されたゴミの中にフロッピーがある(通報者せいや)と、連絡受けたら速攻鈴木家に向かい、鈴木亮平より早く鈴木家に着く小藪。どんだけ早いねん。

それで小藪は鈴木亮平のワープロを調べる。そこには今までの事件の真相が犯人目線で入力されてた。そして使用した青酸カリも裏の庭に埋めたと書かれてる。

おい、この脚本書いたやつはまだ若いやつなのか。当時のワープロ本体のメモリ、どれくらいあると思ってるねん。最新式の文豪でも書院でもこんなにたくさん内蔵メモリに保存できへんわ。当時のPCのハードディスクは基本9800メガ、最新のMac(パフォーマー)でさえ2Gやぞ。スーパーディスクもMoもしらん世代なんやね。

だいたい、鈴木亮平の家と隣接してる(中でつながってる)派出所においてあるワープロに、どうやって入れてん?さらに言えば、派出所の机に絵が置いてあったり、でかい封筒が届いてたりしてたけど、あれ誰が?一瞬、娘の鈴ちゃんが協力者?なんて思ったけど、それじゃぁ今までの話とつじつま合わへんし。最終回予告の際にわざわざアップで鈴ちゃん映してミスリードさせようとしてたね。

 

みきおが鈴ちゃんのHEROになりたかったからって理由でこんな事件を起こしたんだ、鈴木亮平がHEROだったから邪魔だったんだ、そして今、鈴ちゃんが喜ぶのはお父さんが釈放されることだから望み叶えてあげると自白したボイスレコーダー。これを竹内涼真に突きつけられ、鈴木亮平を釈放する時も「これで警察の威信は保たれた」とか小藪言ってるけど、ただの誤認逮捕だからね、それ。

ワープロもそうだが、ボイスレコーダーもこの時代には、まだこんなICのやつないはずやけど?これは誰もツッコまへんかったのかい。このドラマ結構いたるところで時代考証が無茶苦茶なのだ。

 

そして最終回、すべての謎が解き明かされ、伏線が回収されるのかと思いきや、いろんなところにほころびが。

真犯人は加藤みきおくんっていうのは書いたが、裏で操ってた(協力者)は霜降り明星のせいや。鈴木亮平を逆恨みもいいとこな憎み方。狂気じみた偏屈な圧を演じてるのだが、演技と呼べる代物でもない。霜降り明星の粗品も今クール「絶対零度」に出てたが、これも狂気を含んだいかれた刑事の役立ったが期待外れだった。

小藪千豊、今野浩喜、せいや、仲本工事・・・。そして最後には澤部佑まで出てきた。なんかコメディアン多すぎ。鈴木亮平、竹内涼真、上野樹里、榮倉奈々でギャラ予算オーバーしてしまったのか?そんなわけないわな。

 

ここからはラスト見終わってのツッコミや不満。

親子の絆とか、家族の愛って裏テーマは要らなかったなと思えるシーン満載。

 

事件を防いで、そのまま月日がたった現代で兄・田村慎吾役(あれ?名前変える必要ないから佐野慎吾だよね)で澤部佑が出てきたのにはびっくりしたが、それ、ただの坊主頭つながりだけで選んでない?

しかも、姉の田村鈴役(あれ、今結婚して名前変わってるのかどうかは不明だが、上野樹里は竹内涼真と同席してるこの場に連れてきてないとこから考察するとまだ独身か?)が、貫地谷しほりのままだったこと。事件起こってないんだから、整形する必要ないよね。って製作陣誰も気づかんかったん?設定とか細かいところ全然ダメだね。

ついでにダメなのは鈴木亮平と榮倉奈々の老け顔メイク。ドラマ当初は「連続殺人容疑で長年収監されて刑務所暮らしの疲れが出てる父」のメイクと、「犯罪者家族としてと世間に罵られ、生きることに疲れてしまってる母」だから、老け顔メイクでよかったけどさ。事件はなかったんだったら、もっと若々しいはずやろ?そういや、麻生祐未も新しい現代で、歴史が変わった現代と全く同じ髪型メイクだったな。

とにかくヘアメイクは途中で予算が尽きたかのような手抜きっぷりだ。

 

麻生祐未の演技はすごかったなぁ。でもさ、一度戻った現代で、なんで安藤政信に殺されちゃったんだろう。竹内涼真にバラされるのを恐れてなら、自分でカミングアウトしてるんだからおかしいよね。新しい現代では二人で喫茶店やってるけど、もうお年な麻生祐未を店に立たさんでも・・・。

 

親子の絆とか家族の愛っていうのが裏テーマだからか、孤独で育ったみきおを親代わりで育てる麻生祐未を強調したかったのか?

でもそれなら、雪崩に巻き込まれて死ぬはずだったメッキ工場の親父・不破万作は、竹内涼真に助けられたんだが、彼女は全然それを感謝してないぞ。っていうか、この設定忘れてるやろ。

14歳の時に子供身ごもってどうたらこうたらっていうのが、最終回で校長(笹野高史)の口から語られたが、その相手は、笹野高史の息子か?

みきおにだけ親身になって「誰一人悲しい思いをさせたくない」とか言ってたのはいいけど、あんた学校の職員じゃないの?先生なのかどうかはよくわからんままだったが、他にも生徒はいるんだしね。

そもそもなんで彼女はあんなに鈴木亮平を憎んでたんだ?ことあるごとに「佐野文吾〜ォ、あいつだけは許せない〜ぃ」と血走った目で言ってたけど・・・。それはなぜだが最後までわからんかった。

その校長・笹野高史は最終回、机の上に鉛筆で塗りつぶした不気味な絵を置いたまま行方不明だったが、実はその息子に会いに行っていたってオチ。しかも、和解したと。これ、要る?

 

麻生祐未の実家のメッキ工場で働いてたパート・芦屋星は、真犯人を見て恐ろしくなって逃げたとか言ってたが、霜降り明星のせいやが怖いか?そして、麻生祐未に変わった方の現代では殺されちゃったけど、なんで?麻生祐未はみきおのことを知ってると勘違いしたのか?

 

同棲してる彼女(芦名星)にDVして、何かと竹内涼真に敵対心燃やしてた新聞配達員・竜星涼の自殺理由がいまいちよくわからん。最初に除草剤飲んで死んじゃった子の姉を誘拐して殺そうとしたが、昔から可愛がってた子だから殺せなかったってとこまではまだいいが、それで何で自殺するのかよくわからん。

 

鈴木亮平に、その女の子が監禁されてた山小屋へ重大な証拠を探しに行くと言ってた刑事・ユースケサンタマリアは、何を探しに行ったのか?また、崖から突き落とされあっけなく死亡した彼の死は、事故と早々と片付けられたが、それはなぜだんだ?

 

ユースケ・サンタマリアに連行される前に、これだけは見つかっちゃいけないと投げ捨てたスクラップブックと免許証は、誰が拾ったのだ?免許証は後日、居候してる鈴木亮平の家に届けられたが、年号などは黒塗りにされてた。何のために?

 

他にもいろんなツッコミどころ満載。

上野樹里が近くの防犯カメラを解析して、竹内涼真の前に誰かが来て出て行った事を証明するが、ただの事件記者がどうやって防犯カメラの映像を借りれたのか。

犯人から絵の入った封筒が竹内涼真の部屋に届くが、なぜ安藤政信かせいやは竹内涼真の住所を知ってたのか?とか、なぜそう都合よく在宅中に配達されるのか。

 

再度過去に行く前に、上野樹里と話してて、最後に『戻ってきたら今度は俺が美味しい鍋を作りますよ』とネタ振りしてたが、最終回最後の鍋のシーンは店の鍋だったな。意味のない伏線、回収できへん伏線は張ってはいけません。

 

ワープロで「そろそろ始めよう」とか「実験は済んだ」とか打ち込んでたのは、小学5年生の加藤?それともせいや?

 

そして、最後、留置所に入れられてる鈴木亮平に本が差し入れられる。俵万智のサラダ記念日だが、表紙カバーが付いている。留置所、拘置所、刑務所に差し入れされる本はカバー外されるんですけど・・・。

せめてもう少し取材なり考証なりして脚本作るとか、演出してほしい。

まぁ、ここまでいろんなツッコミができるドラマも珍しい。

手抜きか?それとも撮影スケジュールが圧してたのか?ただ単にキスカなかったのか?

 

このドラマの視聴率は高かったはずだが、それは決してドラマの質が良かったというわけではないと思う。

 

竹内涼真の今度の映画(藤原竜也とW主演)に期待しようっと。



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