松山英樹がメジャーを制覇した。
ゴルフ4大メジャーのうちの一つ、マスターズで優勝した。
偉業である。快挙である。
Congratulations!、marvelous!、great!!
なんでもいい、ありとあらゆる賞賛と感嘆の言葉を述べよう。
ついに、この日がやってきた。
全英オープン(The OPEN)、全米オープン、全米プロゴルフ選手権、そしてマスターズ。
尾崎将司、青木功、中嶋常幸、丸山英樹、片山晋呉、石川遼・・・。日本ゴルフの頂点を極めた男たちが何人も挑戦して破れなかった壁。それがメジャーの壁。
親父がゴルフをやっていたせいで、ガキの頃からゴルフ中継はよく見てた。日本のツアーは日曜日(最終日)ね。大人になってからゴルフをするようになったが、日曜は休みじゃないから録画して観てた。メジャーは深夜(または早朝)だからありがたい。
1980年の全米オープンでジャック・ニクラウスと死闘を繰り広げた青木功は届かなかった。
1989年の全米オープン最終日、途中までトップだった尾崎将司は14番以降ボギー連発で届かなかった。
2004年の全米オープン、丸山茂樹は予選で人気絶頂のタイガーウッズと同じ組で回り初日・二日目をトップで通過したが、決勝でグーセンに逆転を許し届かなかった。
全米プロでも、マスターズでも全英オープンでも日本人が活躍したり、いいとこまで行ったのは結構ある。
中嶋常幸は1978年の全英オープン3日目、首位に一打差で追っていたが、バーディーパットが外れてバンカーに入り9打を叩くという悪夢のようなことがあった。そのバンカーは「トミーズバンカー」と今も呼ばれている。
その中嶋常幸が今回のマスターズ、TBSのスタジオからの生中継に解説として参加してた。本来なら現地オーガスタからの生中継だが、コロナ禍の今、仕方がないね。
小笠原亘アナウンサーは、松山がグリーンジャケットに袖を通す時に「日本人が招待されて85年、ついに、ついに、世界の頂点に松山が立ってくれました」と伝えた後、もう言葉が出なかった。(松山と縁があるだけに)感極まっていたのだろう。
選手・関係者・パトロンの祝福を受ける松山の姿は画面の映しだされている。でも言葉が出ない。次に小笠原アナウンサーが声を出せたのは(実況を再開できたのは) 55秒後だそうだ。本来なら放送事故扱いである。
隣を見たら解説の中嶋常幸は突っ伏して震えてる。話題を振っても感極まっていて言葉になってない。
同じく解説の宮里優作も同様。上を向いて涙をこらえてる・・・。「こんな日が来るなんて・・・。」
と、ここまでだったら感動だなぁ。そうだよな、人って本当に感動したら言葉なんか出てこないんだよな。ついにやったよな。言葉は邪魔なだけだよな。
なんて思えたのだが・・・。
そのあと、優勝インタビューでグリーンジャケットを着た松山と中継をつなぎ、中嶋は「英樹おめでとう。本当に良かったなぁ。こんなうれしい日が来るとは思わなかった。」
ここまではいいのだが、そのあとが余計だった。
「日本に帰ったら一度袖を通させてくれ」
この言葉は全くダメだ。冗談のつもりなのか何の気なしに行ったのかはわからないが、これはダメだ。
あのグリーンジャケットはマスターズ覇者である証だ。
ボビー・ジョンズが引退後に自ら設計したコースに、1934年に全米・全米の過去の優勝者を招き第一回を開催したマスターズ(1-4回まではオーガスタ・ナショナル招待)。
全世界から招待されたトップクラスのゴルファー達が、4大メジャーの中で唯一オーガスタ・ナショナルGCに固定されて行われる大会。まさに選ばれし者達(名手達=マスターズ)が競うゴルフの祭典、それがマスターズだ。
「世界一美しく、難しい」と言われるオーガスタを、制した者だけが袖を通す資格のあるジャケットだ。(ちなみにマスターズ優勝者はオーガスタGCの名誉会員になれる)
そのグリーンジャケットを気軽に「日本に帰ったら一度袖を通させてくれ」って?
その言葉、ジャック・ニクラウスに言えますか?タイガー・ウッズに言えますか?セルヒオ・ガルシア、ジョーダン・スピース、フィル・ミケルソン、ニック・ファルド、フレッド・カプルス、トム・ワトソン、ゲーリー・プレーヤー・・・過去の覇者たちに言えますか?
袖を通せるのは、マスターズを制した者だけだ。それくらい中嶋常幸はわかっているだろうに。
中嶋常幸は松山英樹を後輩としか見ていないのだろう。そりゃそうなんだけどさ。あまりにも簡単に言いすぎじゃない?
こういった何気ない言葉にいちいち目くじらを立てるのもなんだが、こういったところに日本のアスリート組織の限界が見えてる気がするので書いた。
良くも悪くも体育会系の縦社会が未だに残ってるなって。ゴルフ協会も陸連も水連も各競技団体にも。
丸山茂樹も海外ツアーに参加したり、メジャーチャレンジしていたが、ちょっと「?」な祝福コメント出してた。
「松山選手には東京オリンピックでも普段の力を存分に発揮してもらえるようにできる限りのサポートをさせてもらいます。」
今は東京五輪ヘッドコーチだから仕方がないのかもしれないが、メジャー覇者に今更五輪?マスターズ制覇よりも五輪の金メダルの方が上だというのか?
しかも夏のくそ暑い時に、コロナ禍の今に、だいたい開催できるかどうかもまだ未定なのに。開催ありきを前提で喋るのやめてくれないか。気分悪い。
ただ純粋に「おめでとう」「すごいなぁ」「やったなぁ」って、後輩を祝福してあげなよ。まっmでいちいち五輪に結びつけるかなぁ。
1977年の全米女子プロゴルフ選手権で日本人ゴルファーとして初のメジャーを制した樋口久子さんは現在日本女子プロゴルフ協会顧問。純粋に「感動しました」「アマチュアから10年、いろんな苦労があったと思いますが、優勝を成し遂げた瞬間、走馬灯に走馬灯のように思い出されたのではないですか」「優勝おめでとう」と祝福コメント。
同じく日本女子プロゴルフ協会の現会長を務める小林浩美さんも「優勝おめでとうございます」「感動で涙が暑れました」「この偉業は日本ゴルフ界の至宝であり、今後の大きく明るい道標です」と祝福。
女性ゴルファーの先輩たちの方が純粋に祝福してるのがわかる。
男はやっかみや妬みなんかや、未だに俺の方が上だ、先輩だ、っていうのがどこかにあるのかな。メジャーを制した時点で、メジャー取れんかった人より松山の方が上になったんだけどなぁ。
何でもかんでも五輪に結びつけるのはやめてくれ。
誰だ?あの記者。松山の優勝会見・インタビューで、馬鹿な質問をした記者は。
「東京五輪で聖火台の点火役(聖火リレーのラスト走者)を打診されたら受けるか」
この質問に松山はあっさり「現実的ではない(スケジュール的に無理です)」って返してる。
なのに、またしつこく
「東京五輪に向けての抱負は?」
あのなぁ。
失礼極まりないってこと、この記者は気づいてるか?
お前が言ってるのは、グラミー賞受賞した歌手に「紅白歌合戦のトリに選ばれたらどうしますか」とか「レコード大賞への抱負は?」なんて聞いてんのと一緒だぞ。
ゴルフ4大イメージャー大会の一つであるマスターズ優勝と、オリンピックでのゴルフ競技。どっちが上とか下とかないけど、ランク(レベル)の違いはわかるだろ?
少なくともオーガスタGCでの、マスターズ競技者への取材が許されてる記者なんだから。
「次はセント・アンドリュース(全英)制覇ですね」とか「グランドスラム(メジャー4大会制覇)狙ってますか」とか聞くならわかる。
それなら三大モーターレースの一つ、インディ500を制した佐藤琢磨に「次はF-1ですね」とか「ル・マンも狙いますか」とか聞くようなもんだからな。
それを東京オリンピックって・・・。トホホだよ。
英ガーディアン紙が松山英樹の偉業を讃える記事を掲載するとともに「コロナウイルスのため、松山について詳細に報じてきた日本メディアが現地にいないのは残念。長い間追い求め、いつまでも忘れないであろう瞬間に立ち会えないのだから」と書いていた。
インタビューとか囲まれるのがうっとうしいと感じてる松山英樹にとっては、日本人記者やマスコミ関係者が全然いないのは、競技に集中できてよかったかもしれない。
このコロナ禍で現地からの実況中継さえできなかった日本メディア。
だからこんな不躾な質問する記者やリポーターしか残っていなかったのか?そもそもこの質問したのが日本人記者かどうかも曖昧だが・・・。
何でもかんでも五輪に結びつけるのやめてほしいわ。
テニス四大大会の全米女子オープンを2018年日本人で初めて制した大坂なおみ。その後2020全米オープンと2019年に続き2021年も全豪オープンを制覇した。その際も「東京五輪への意気込みは?」などと返答に困る質問してたバカがいたなぁ。
病み上がりで奇跡の復活を遂げた池江瑠花子選手。
素晴らしいと思うし、頑張ってると思う。笑顔の裏には涙ぐましい努力と不安と葛藤があっただろう。
でも、マスコミはうるさすぎ。まとわりすぎ。今は休養もしっかり取らせなきゃいけないのに、インタビューや取材でヘトヘトだろう。それでも恩返しのつもりか、池江瑠花子選手は笑顔を絶やさない。それを感じて見てるこっちが辛い。
そしてこう書く。
「池江瑠花子、五輪への抱負」
「まぁこれだけ頑張ってるんだから、東京五輪やってあげた方が」なんて世論を動かしたいのか?
「無観客なら開催してもいいかなぁ」「コロナ対策さえしっかりしてれば、競技自体は問題ないよね」なんて国民が思うことを期待してるのか。
そう思わせてるうちに、どさくさに紛れて開催さえしちゃえばあとは勝手に盛り上がってくれるだろうってか。そこまで日本人は馬鹿か?
だいたいマスコミは池江瑠花子選手を持ち上げすぎ。
「奇跡の復活」「神がかり」「不屈の精神力」とか、感動と応援を含め持ち上げたい気持ちはわからんでもない。すごいことだと思うし、それを否定する気もない。
感動劇場を作り上げたいマスコミだから、彼女を持ち上げたいのはわからんでもないんだけど、ちょっと待て。
オリンピックでは、パラリンピックというのが同時に開催されるよな。
そのパラリンピックの選手ってどんな人なんだ?
障害やハンデを負ってるがアスリートとして頑張ってる人だよなぁ。
生まれつきや先天性の病気などの人もいるだろうし、健常者だったけど事故や怪我、病気などで障害やハンデを背負ってしまった人もいるだろう。それでも頑張ってる。そして競技を続けてる。
この人たちがパラリンピックに出場すること自体、もう「奇跡の復活」とか「神がかり」なことではないのかね。違うかね。
池江瑠花子選手を取り上げるなら、同じくらいパラリンピックの選手にも取材にいけよ。記事にしろよ。なぜしないのだ?
なんか支離滅裂になってきてしまったが、最後にもう一つ感動の記事。
今回の松山英樹の優勝を支えたキャディの早藤将太さんだ。
彼は、松山がウイニングパットを沈めた後、ピンを戻し、コースに対して深々と一礼をした。
まさに武士道。
空手や柔道や剣道でも道場に入る前、出る時に礼をする。対戦前、大戦後に礼をする。例に始まり礼に終わる。
野球でもグラウンドに礼をする。
ナンセンスだ、時代遅れだ、精神論だ。いろんなことを言う人はいるだろう。
でも、彼が帽子を脱いでコースに礼をしている後ろ姿に対し、ケチをつけれる人がいるだろうか。
歓喜と祝福の裏側に、支えた男の礼を忘れない精神があった。
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