皆さんは今年はお花見に行かれましたか?新緑の季節に、桜が大好きな日本人向けの話題をお届け。
今回は福岡伸一の『動的平衡2』(木楽舎)を読んでの発見。
これは生物学者の福岡が、「生物は変化し続けることによって均衡を維持している」という生命観を打ち出した『動的平衡』の続編である。本書も、生命と生物に関する様々な話題が盛り込まれているのだが、その中でソメイヨシノに関する衝撃的な説が紹介されている。
私たちが春に目にする桜のほとんどはソメイヨシノである。この桜は葉よりも花が先に咲き、その満開ぶりが美しいことから、今では日本のあらゆるところにある。
ソメイヨシノは一代雑種である。一代雑種とは異なる系統をかけ合わせて出来る交配種のことで、ソメイヨシノはコマツオトメとオオシマヒガンを交配したもの。その起源は諸説あるが、江戸時代後期に天然の交配が発見されたか、あるいは人為的に作り出された。その後、明治期に入り、江戸の染井村(今の東京都豊島区)の造園業者によって育成され、全国に広まった。
一代雑種は多くの場合、子孫を残す能力が劣ってしまう。ヒョウとライオンのかけ合わせによって作出された一代雑種レオポンは生殖能力がなかった。
(中略)
では、発芽するタネができないのに、日本の春を彩っているソメイヨシノはいったいどのようにして全国に広まっていったのだろうか。それはクローン化による。でもそんなに不気味に思う必要は全然ない。植物のクローンはごく普通の現象である。挿し木、接ぎ木はすべて植物のクローン化である。
(中略)
驚くべきことは、日本のほとんどすべてのソメイヨシノは、もともとたった一本のソメイヨシノに由来するらしいという事実である。北海道のソメイヨシノも九州のソメイヨシノも、DNAを分析してみると同じ特徴(DNA指紋)を持つという。つまり日本のソメイヨシノはすべて同じ個体のクローンだということになる。
ここから様々な憶測が流れ出ることになった。その最大のものは、日本のソメイヨシノは同一のクローンなので、みな同じ寿命を持つのではないかという説である。山に咲く大きなヤマザクラに比べて、ソメイヨシノには老木がない。
近い将来、日本のソメイヨシノは、もとの樹であれ、そこからの挿し木であれ、同じ寿命を迎え一斉に枯れる。(中略)つまり日本の春から桜が消える日が来るのではないか。そういう説である。
このくだりを読んだとき、日本中の桜が消えて無くなる光景を想像してゾッとしてしまった。
ソメイヨシノはすべて同じ個体であるため、同じ場所に植わっているものは、みな一斉に花が咲く。それゆえに開花予想が成立する。この説が正しいとすれば、一斉に開花するのと同じように、一斉に寿命が尽きて枯れてしまう、という事態が起こりうるわけだ。
福岡自身は、「植物は基本的に不死である」ので「私はこの説に与しない」と述べている。しかし、絶対にありえないと言い切れるだろうか。
もちろんソメイヨシノだけが桜ではないので、ソメイヨシノの消滅イコール桜の消滅ではない。だけど、桜と言えばソメイヨシノというくらい、現代の日本人にとってソメイヨシノはなじみ深い。そんな状況において、もしソメイヨシノが絶滅してしまえば、日本人の桜に対する意識や、お花見の習慣、そして春のイメージは、大きな変容を余儀なくされてしまうかもしれない。
今回は福岡伸一の『動的平衡2』(木楽舎)を読んでの発見。
これは生物学者の福岡が、「生物は変化し続けることによって均衡を維持している」という生命観を打ち出した『動的平衡』の続編である。本書も、生命と生物に関する様々な話題が盛り込まれているのだが、その中でソメイヨシノに関する衝撃的な説が紹介されている。
私たちが春に目にする桜のほとんどはソメイヨシノである。この桜は葉よりも花が先に咲き、その満開ぶりが美しいことから、今では日本のあらゆるところにある。
ソメイヨシノは一代雑種である。一代雑種とは異なる系統をかけ合わせて出来る交配種のことで、ソメイヨシノはコマツオトメとオオシマヒガンを交配したもの。その起源は諸説あるが、江戸時代後期に天然の交配が発見されたか、あるいは人為的に作り出された。その後、明治期に入り、江戸の染井村(今の東京都豊島区)の造園業者によって育成され、全国に広まった。
一代雑種は多くの場合、子孫を残す能力が劣ってしまう。ヒョウとライオンのかけ合わせによって作出された一代雑種レオポンは生殖能力がなかった。
(中略)
では、発芽するタネができないのに、日本の春を彩っているソメイヨシノはいったいどのようにして全国に広まっていったのだろうか。それはクローン化による。でもそんなに不気味に思う必要は全然ない。植物のクローンはごく普通の現象である。挿し木、接ぎ木はすべて植物のクローン化である。
(中略)
驚くべきことは、日本のほとんどすべてのソメイヨシノは、もともとたった一本のソメイヨシノに由来するらしいという事実である。北海道のソメイヨシノも九州のソメイヨシノも、DNAを分析してみると同じ特徴(DNA指紋)を持つという。つまり日本のソメイヨシノはすべて同じ個体のクローンだということになる。
ここから様々な憶測が流れ出ることになった。その最大のものは、日本のソメイヨシノは同一のクローンなので、みな同じ寿命を持つのではないかという説である。山に咲く大きなヤマザクラに比べて、ソメイヨシノには老木がない。
近い将来、日本のソメイヨシノは、もとの樹であれ、そこからの挿し木であれ、同じ寿命を迎え一斉に枯れる。(中略)つまり日本の春から桜が消える日が来るのではないか。そういう説である。
このくだりを読んだとき、日本中の桜が消えて無くなる光景を想像してゾッとしてしまった。
ソメイヨシノはすべて同じ個体であるため、同じ場所に植わっているものは、みな一斉に花が咲く。それゆえに開花予想が成立する。この説が正しいとすれば、一斉に開花するのと同じように、一斉に寿命が尽きて枯れてしまう、という事態が起こりうるわけだ。
福岡自身は、「植物は基本的に不死である」ので「私はこの説に与しない」と述べている。しかし、絶対にありえないと言い切れるだろうか。
もちろんソメイヨシノだけが桜ではないので、ソメイヨシノの消滅イコール桜の消滅ではない。だけど、桜と言えばソメイヨシノというくらい、現代の日本人にとってソメイヨシノはなじみ深い。そんな状況において、もしソメイヨシノが絶滅してしまえば、日本人の桜に対する意識や、お花見の習慣、そして春のイメージは、大きな変容を余儀なくされてしまうかもしれない。