比較的暖かい日々が続いていて、すごしやすい今年の冬。皆さんご機嫌いかがですか的なM‐1の感想文をお届けいたします。
個別の感想は以下の通り。
まずはファーストラウンドから。
ニューヨーク・・・ほかにもっといいネタなかったのかな、という感じ。よく「出番があとだったらもっと点数いってた」という発言ありますけど、これだと後半に出てても厳しい。
中川家礼二が「屋敷の意地悪なツッコミが聞きたかった」って言ってたけど、曲の間奏のときの「女子は「LINEが既読にならない」に大喜びする」と「とりあえず100万回言うとけばいい」というセリフは、ツッコミに見せかけたイヤミ。ニューヨークには売れっ子ミュージシャンのコントがあるんですけど、それは「感動する歌なんてお決まりのワードを入れとけば簡単に作れるだろ」っていう――マキタスポーツとパーマ大佐にも通じる――日本の音楽シーンを皮肉ったネタなんですね。この漫才は、いわばそのコントの派生形で、ニューヨークらしさが出ていたと思います。
松本きんに君の「ツッコミは笑わないでほしい」という意見はわからなくはないです。ますだおかだなんて、昔はおかださんが「お前観客かよ」ってくらいヘラヘラしてて、ネタはすごくよくできてるのに冷めてしまうところがありましたからね。でも今回の屋敷は相手を小馬鹿にした笑い、もしくはあきれ笑いといった程度の笑い方だったので、減点対象にするほどではなかったと思います。
かまいたち・・・前々からやってるネタですけど、磨きをかけてきましたね。言い間違いを認めないのと訂正させようとするシンプルなケンカ形式。口を挟もうとする濱家の手をつかんで止めるタイミングがだんだん速くなるところとか、「晒せよ」の間髪入れない言い返しとか、あきれたあまりにステージを動き回りながらツッコむところなど、精度が上がっていました。
和牛・・・また違うスタイルできましたね。家を出ていくときに後ろに下がる動きをしていましたけど、その動きがあまり活かせてないように感じました。でも「お邪魔しました」の3段階変化はよかったです。あと、セリフだけでなく、ネクタイ緩める動きでも自宅感を出すさりげなさはさすが。4件目の住んでる物件は省略したほうがよかったのでは。
最後の事故物件を、人が住んでいないというだけで「いいねいいね」って喜びだしますけど、これはあまりよくない物件を契約させるために、わざと最初により条件の悪い物件を見せるという、実際に不動産屋がやる手口の模倣になっていて、わざとらしい社会批評という一面も兼ね備えたネタになっています。ツッコミがいつの間にかボケに変わっていて、尻上がりに面白くなっていきました。
すゑひろがりず・・・出囃子に合わせて鼓を打つのが心地よい。「おぬしはたそ」で不覚にも笑っちゃったんですけど、この「場違いな人が出てきて「お前誰だよ」とツッコむ」というパターンって、誰にでもできる使い古された形式なんですね。能のスタイルと古めかしい言葉遣いであれば、ベタな笑いでも新鮮味が出て面白くなっちゃうのは、ちょっとずるいな、って思いました。お菓子の銘柄がクイズになってるところがよかったです。
からし蓮根・・・ネタの内容にせよ技術力にせよごく普通、という感じ。暖を取るために免許証を燃やしたというボケはやや強引。「大型犬顔舐められモード」というワードと、教官に罵倒されまくる溜めからの車ではねる流れはよかったです。これからに期待。
急に和牛の批判を始める上沼恵美子の情緒がこわい。自分の好き嫌いを評価に反映させすぎでは?去年のとろサーモン久保田とスーパーマラドーナ武智の暴言は、言葉遣いはよくなかったにせよ、批判内容自体はあまり的外れではなかったと思います。
見取り図・・・最初ボケが弱くて、「このままいくのか」って不安になりましたけど、ひねり効かせたたとえで侮辱しあうくだりまできて爆発力が上がりましたね。「あおり運転の申し子」は今年ならでは。「お昼に爆竹食べました」は、噛んだ時にそなえて用意してるフレーズですね。場数を踏んで身に着けたのでしょう。「実生活でやらない攻撃」をもうひとパターンくらい見たかったです。
スタジオに堀江選手がいてネタの続きができたのはラッキー。
ミルクボーイ・・・全体的に昭和臭がします。ダブルのスーツ着てる人ひさしぶりに見た。客席から物もらうのもいい意味で古い。
ギャグやらオーバーアクションやらキラーフレーズやらキャラ設定やらを削ぎ落し、シンプルに「コーンフレークだ、いやコーンフレークじゃない」のやり取りの反復だけでここまで面白くするその腕前はすさまじいの一言。「煩悩に牛乳かけてる」が特によかったです。「コーンフレークとミロとフルーチェにあこがれる」のは特定の世代にしか共感されないかもしれませんが。セリフの速度や間の取り方や(内海の)言葉の強調ぐあいも安心して聞いていられるちょうどよさ。
様々な要素を削ぎ落しているから「これぞ漫才」という、原初的な漫才の形になっている。このスタイルが年齢層高めの審査員から高評価されるのも当然だし、M‐1史上最高得点も納得。今までどこで何やってたの?
オズワルド・・・この斜に構えたような、飄々としたスタイルはあまり爆発的な笑いを生まないので、おぎやはぎもそうだったけど、高得点を得られにくいんですね。特にミルクボーイの爆発のあとだったので、余計やりにくかったはず。その意味で、ハンデを背負ってよく頑張ったと思います。おしゃれな衣装にも表れていますけど、スタイリッシュな笑いを目指しているんですね。このまま突き詰めていただきたい。
寿司とバッティングセンターをいろんな形に組み合わせていて、高度に練り上げられていると感じました。このスタイルのツッコミはあまり声を張らないほうがいいのではないでしょうか。
インディアンス・・・彼らのスタイルはつかみが早いのが強みですね。「おっさん女子」というキャラだけですでに面白いので、普通の言葉をしゃべっていても面白く感じられる。それゆえ、個々のボケをきちんと作りこめていなかったきらいがあります。博多華丸のキャラに相通じるものがあるけど、だとするとあまり早口じゃないほうがいい。「東急ハンズ」や「すしざんまい」など、自然な動きをギャグに組み込む流れがスムーズ。
礼二が「田渕の素の一面が見たい」って言ってたけど、この芸風だとそれは難しい。
ぺこぱ・・・志らくとオール巨人が「最初好きなタイプじゃないと思った」というのはよくわかる。若手芸人は「見た目で笑いを取ろうとするな」って先輩に教えられるそうなんですけど、松陰寺のキャラは漫才をやるうえでは卑怯な感じがしますので。ボケツッコミというのか、ツッコミに見せかけたボケのスタイルで、それを松陰寺の前向きナルシストキャラで見せられていると、だんだん癖になってきて、「こいつをずっと見ていたい」って思い始めてしまう。彼ら独自の、おそらくは彼らにしかできないスタイル。
「知識は水だ。独占してはいけない」とか、マネしたくなるフレーズ。「キャラ芸人になるしかなかった」という言葉がネタ全体を説得的なものにしている。礼二が「シュウペイのキャラが固まってない」って指摘してましたけど、相方を立てるために無個性でいたほうがいいと思います。
続きまして最終決戦。
ぺこぱ・・・「まちがいは故郷だ」が一番の名言。名言のあとにたっぷり間を取るので余韻で笑える。たしかに「マンガみたいなボケ」ってよく言うけど、そんなボケをえがいたマンガが実際にあるのかは不明。「時を戻そう」ってセリフも何度も聞きたくなる。
今大会のMVP、および今後一番ブレイクしそうなコンビ。松陰寺ひとりで売れっ子になるかもしれませんけど、一生このキャラでやっていく覚悟はあるのだろうか。いろいろ試してここにたどり着いたって話してたけど、だとすると自分のキャラにどこまで納得しているのかって疑問が生じますので。おせっかいながら心配。
かまいたち・・・山内の憎たらしい態度がだんだん狂気を帯びてくるけど、恐怖にまでは至らず、ちゃんと笑いの領域に踏みとどまっている。ところどころ目をむくのが怖面白い。一本目もそうだけど、トトロ観た観てないの言い争いだけで勝負する姿勢がいさぎよい。
ミルクボーイ・・・もなかという、昔からあるけどあまり人気ない和菓子を話題に持ってきたのが絶妙。たしかにこれだけもなかの話を聞かされても全然もなかの口にならないし、ギネス記録が2個というのも事実でしょう。「もなかの組事務所」は情景を想像して笑える。
ガタイのいい駒場はまだ何か武器を持っている予感がします。
今回はニューフェイスの姿が多くみられましたね。第7世代うんぬんとはまた別の話なんでしょうけど、少しずつお笑い勢力図が変わりつつあるのを感じました。
今朝の「グッとラック!」で、志らくが「自信と緊張のバランスが大事。自信のほうが多いと可愛げがなくなる。今回の和牛は自信しか出てなかったので上沼さんに怒られた」って話してまして、そのへんは素人目にはわかんねえな、って思いました。
あと私事なんですけど、本編のほうに気を取られて敗者復活戦の録画予約を忘れちゃいましてね。観たいんですけどね。GYAO!で観れないかな。
それでは。メリークリスマス、ミスターローレンス!
個別の感想は以下の通り。
まずはファーストラウンドから。
ニューヨーク・・・ほかにもっといいネタなかったのかな、という感じ。よく「出番があとだったらもっと点数いってた」という発言ありますけど、これだと後半に出てても厳しい。
中川家礼二が「屋敷の意地悪なツッコミが聞きたかった」って言ってたけど、曲の間奏のときの「女子は「LINEが既読にならない」に大喜びする」と「とりあえず100万回言うとけばいい」というセリフは、ツッコミに見せかけたイヤミ。ニューヨークには売れっ子ミュージシャンのコントがあるんですけど、それは「感動する歌なんてお決まりのワードを入れとけば簡単に作れるだろ」っていう――マキタスポーツとパーマ大佐にも通じる――日本の音楽シーンを皮肉ったネタなんですね。この漫才は、いわばそのコントの派生形で、ニューヨークらしさが出ていたと思います。
松本きんに君の「ツッコミは笑わないでほしい」という意見はわからなくはないです。ますだおかだなんて、昔はおかださんが「お前観客かよ」ってくらいヘラヘラしてて、ネタはすごくよくできてるのに冷めてしまうところがありましたからね。でも今回の屋敷は相手を小馬鹿にした笑い、もしくはあきれ笑いといった程度の笑い方だったので、減点対象にするほどではなかったと思います。
かまいたち・・・前々からやってるネタですけど、磨きをかけてきましたね。言い間違いを認めないのと訂正させようとするシンプルなケンカ形式。口を挟もうとする濱家の手をつかんで止めるタイミングがだんだん速くなるところとか、「晒せよ」の間髪入れない言い返しとか、あきれたあまりにステージを動き回りながらツッコむところなど、精度が上がっていました。
和牛・・・また違うスタイルできましたね。家を出ていくときに後ろに下がる動きをしていましたけど、その動きがあまり活かせてないように感じました。でも「お邪魔しました」の3段階変化はよかったです。あと、セリフだけでなく、ネクタイ緩める動きでも自宅感を出すさりげなさはさすが。4件目の住んでる物件は省略したほうがよかったのでは。
最後の事故物件を、人が住んでいないというだけで「いいねいいね」って喜びだしますけど、これはあまりよくない物件を契約させるために、わざと最初により条件の悪い物件を見せるという、実際に不動産屋がやる手口の模倣になっていて、わざとらしい社会批評という一面も兼ね備えたネタになっています。ツッコミがいつの間にかボケに変わっていて、尻上がりに面白くなっていきました。
すゑひろがりず・・・出囃子に合わせて鼓を打つのが心地よい。「おぬしはたそ」で不覚にも笑っちゃったんですけど、この「場違いな人が出てきて「お前誰だよ」とツッコむ」というパターンって、誰にでもできる使い古された形式なんですね。能のスタイルと古めかしい言葉遣いであれば、ベタな笑いでも新鮮味が出て面白くなっちゃうのは、ちょっとずるいな、って思いました。お菓子の銘柄がクイズになってるところがよかったです。
からし蓮根・・・ネタの内容にせよ技術力にせよごく普通、という感じ。暖を取るために免許証を燃やしたというボケはやや強引。「大型犬顔舐められモード」というワードと、教官に罵倒されまくる溜めからの車ではねる流れはよかったです。これからに期待。
急に和牛の批判を始める上沼恵美子の情緒がこわい。自分の好き嫌いを評価に反映させすぎでは?去年のとろサーモン久保田とスーパーマラドーナ武智の暴言は、言葉遣いはよくなかったにせよ、批判内容自体はあまり的外れではなかったと思います。
見取り図・・・最初ボケが弱くて、「このままいくのか」って不安になりましたけど、ひねり効かせたたとえで侮辱しあうくだりまできて爆発力が上がりましたね。「あおり運転の申し子」は今年ならでは。「お昼に爆竹食べました」は、噛んだ時にそなえて用意してるフレーズですね。場数を踏んで身に着けたのでしょう。「実生活でやらない攻撃」をもうひとパターンくらい見たかったです。
スタジオに堀江選手がいてネタの続きができたのはラッキー。
ミルクボーイ・・・全体的に昭和臭がします。ダブルのスーツ着てる人ひさしぶりに見た。客席から物もらうのもいい意味で古い。
ギャグやらオーバーアクションやらキラーフレーズやらキャラ設定やらを削ぎ落し、シンプルに「コーンフレークだ、いやコーンフレークじゃない」のやり取りの反復だけでここまで面白くするその腕前はすさまじいの一言。「煩悩に牛乳かけてる」が特によかったです。「コーンフレークとミロとフルーチェにあこがれる」のは特定の世代にしか共感されないかもしれませんが。セリフの速度や間の取り方や(内海の)言葉の強調ぐあいも安心して聞いていられるちょうどよさ。
様々な要素を削ぎ落しているから「これぞ漫才」という、原初的な漫才の形になっている。このスタイルが年齢層高めの審査員から高評価されるのも当然だし、M‐1史上最高得点も納得。今までどこで何やってたの?
オズワルド・・・この斜に構えたような、飄々としたスタイルはあまり爆発的な笑いを生まないので、おぎやはぎもそうだったけど、高得点を得られにくいんですね。特にミルクボーイの爆発のあとだったので、余計やりにくかったはず。その意味で、ハンデを背負ってよく頑張ったと思います。おしゃれな衣装にも表れていますけど、スタイリッシュな笑いを目指しているんですね。このまま突き詰めていただきたい。
寿司とバッティングセンターをいろんな形に組み合わせていて、高度に練り上げられていると感じました。このスタイルのツッコミはあまり声を張らないほうがいいのではないでしょうか。
インディアンス・・・彼らのスタイルはつかみが早いのが強みですね。「おっさん女子」というキャラだけですでに面白いので、普通の言葉をしゃべっていても面白く感じられる。それゆえ、個々のボケをきちんと作りこめていなかったきらいがあります。博多華丸のキャラに相通じるものがあるけど、だとするとあまり早口じゃないほうがいい。「東急ハンズ」や「すしざんまい」など、自然な動きをギャグに組み込む流れがスムーズ。
礼二が「田渕の素の一面が見たい」って言ってたけど、この芸風だとそれは難しい。
ぺこぱ・・・志らくとオール巨人が「最初好きなタイプじゃないと思った」というのはよくわかる。若手芸人は「見た目で笑いを取ろうとするな」って先輩に教えられるそうなんですけど、松陰寺のキャラは漫才をやるうえでは卑怯な感じがしますので。ボケツッコミというのか、ツッコミに見せかけたボケのスタイルで、それを松陰寺の前向きナルシストキャラで見せられていると、だんだん癖になってきて、「こいつをずっと見ていたい」って思い始めてしまう。彼ら独自の、おそらくは彼らにしかできないスタイル。
「知識は水だ。独占してはいけない」とか、マネしたくなるフレーズ。「キャラ芸人になるしかなかった」という言葉がネタ全体を説得的なものにしている。礼二が「シュウペイのキャラが固まってない」って指摘してましたけど、相方を立てるために無個性でいたほうがいいと思います。
続きまして最終決戦。
ぺこぱ・・・「まちがいは故郷だ」が一番の名言。名言のあとにたっぷり間を取るので余韻で笑える。たしかに「マンガみたいなボケ」ってよく言うけど、そんなボケをえがいたマンガが実際にあるのかは不明。「時を戻そう」ってセリフも何度も聞きたくなる。
今大会のMVP、および今後一番ブレイクしそうなコンビ。松陰寺ひとりで売れっ子になるかもしれませんけど、一生このキャラでやっていく覚悟はあるのだろうか。いろいろ試してここにたどり着いたって話してたけど、だとすると自分のキャラにどこまで納得しているのかって疑問が生じますので。おせっかいながら心配。
かまいたち・・・山内の憎たらしい態度がだんだん狂気を帯びてくるけど、恐怖にまでは至らず、ちゃんと笑いの領域に踏みとどまっている。ところどころ目をむくのが怖面白い。一本目もそうだけど、トトロ観た観てないの言い争いだけで勝負する姿勢がいさぎよい。
ミルクボーイ・・・もなかという、昔からあるけどあまり人気ない和菓子を話題に持ってきたのが絶妙。たしかにこれだけもなかの話を聞かされても全然もなかの口にならないし、ギネス記録が2個というのも事実でしょう。「もなかの組事務所」は情景を想像して笑える。
ガタイのいい駒場はまだ何か武器を持っている予感がします。
今回はニューフェイスの姿が多くみられましたね。第7世代うんぬんとはまた別の話なんでしょうけど、少しずつお笑い勢力図が変わりつつあるのを感じました。
今朝の「グッとラック!」で、志らくが「自信と緊張のバランスが大事。自信のほうが多いと可愛げがなくなる。今回の和牛は自信しか出てなかったので上沼さんに怒られた」って話してまして、そのへんは素人目にはわかんねえな、って思いました。
あと私事なんですけど、本編のほうに気を取られて敗者復活戦の録画予約を忘れちゃいましてね。観たいんですけどね。GYAO!で観れないかな。
それでは。メリークリスマス、ミスターローレンス!