猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

血の報復、イスラエルがパレスチナに開戦を宣言した

2023-10-09 18:29:13 | ガザ戦争・パレスチナ問題

いま、イスラエルとパレスチナの間に戦争が始まっている。戦争は殺し合いである。ルールはない。憎しみと狂気の爆発である。殺しやすい者から殺す。子どもや年寄りや女が殺される。

戦争は避けるべきものである。

イスラエルは、1948年に、一部のユダヤ人がパレスチナ人を武力で追い払って彼らの地に建設した国である。それ以来、イスラエルは武力によって、国を大きくしてきた。

ようやく和平がみえたのは、1993年である。その年の9月13日、イスラエルとPLO(パレスチナ解放戦線)とが、アメリカの大統領クリントンのもとワシントンで、パレスチナ人の暫定自治と和平の宣言に調印した。翌年、PLOのアラファト議長とイスラエルのラビン首相、ペレス外相がノーベル平和賞を受賞した。

30年前に、イスラエルとパレスチナの間に平和が訪れる可能性があったのだ。

悲しいことに、1995年にイスラエルのラビン首相はテルアビブにおいてユダヤ民族至上主義者に射殺され、パレスチナ武力制圧を掲げる右派がイスラエルの政権を握って、今日にいたっている。

いまや、イスラエルは、アメリカの支援を受けて圧倒的武力のもとに、占領地のパレスチナ人の土地を奪い続けている。学校で使う地図帳のイスラエルの国境を越えて入植している。

イスラエルは、この間、あまりにも傲慢だった。自分の圧倒的武力のもと、パレスチナ人の人権を押しつぶしてきた。パレスチナ人の抵抗をテロだとして、話し合いを拒絶してきた。

今回、アメリカ政府がウクライナ支援で疲れ果てている隙を狙って、パレスチナは30年ぶりの大反撃を行った。イスラエルは戦争を宣言し、ゴザの空爆を繰り返している。これから、地上軍を送って、抵抗するパレスチナ人を殺していくだろう。戦争は人殺しを正当化する。

残念なことに、欧米各国の政府は、イスラエルのパレスチナへの血の報復を支持している。それでは、パレスチナ人の憎しみを深めるだけだ。このままでは、パレスチナ人全員を抹殺するしか、平和が訪れないことになる。欧米のウクライナ支援もおぼつかなくなるだろう。

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おすすめの高橋和夫の『中東から世界が崩れる』

2022-01-30 22:36:39 | ガザ戦争・パレスチナ問題

(殺されたジャマル・カショジ)

先日、たまたま図書館で高橋和夫の『中東から世界が崩れる イランの復活、サウジアラビアの変貌』(NHK出版新書)を見つけた。ネットで本を探すのも悪くないが、図書館で偶然、本と出合うことはもっと楽しい。

彼の国際政治の講義を、10年以上前、放送大学で聴いていたが、それよりも、本書は、大胆に率直に現在のアラブ世界の実像を語っている。

高橋は、アラブ世界の政治を理解するのに、宗教というものにとらわれては、例えばシーア派とスンニ派の教義の違いなどにこだわっては、本質を見まちがうと言う。宗教の教義ではなく、歴史的ないきがかりや経済的な事情が現在のアラブ世界を作っているという。

彼は、ヨーロッパよりもずっと長い文明の歴史をもつアラブが、100年前の極東アジアがそうだったように、ヨーロッパやアメリカの工業化社会の力の前に圧倒され、どう変わっていくべきか、いま混乱しているのだという。

アラブの国々は、イラン、トルコ、エジプトを除き、第1次世界大戦後に、ヨーロッパやアメリカによって、人工的に作られた国々だという。サウジアラビアなどは「国もどき」にすぎないという。

「国もどき」というのは、国境で囲まれた中の住民が、国民の一員という意識がないということだ。国に属するというより、部族に属するという意識のほうが強いのである。

私がアラブ世界の部族主義を感じ取ったのは、2014年12月のことである。「イスラム国」(IS)を攻撃したヨルダン軍パイロットのムアーズ・カサースベ中尉がISにつかまったが、このカサースベ家は名門の部族で、ヨルダン政府に彼の解放交渉を求めるデモが、ヨルダン、イラク、トルコで起きた。国を越えて、部族が示威行動をしたのである。

サウジアラビアの政治は、たまたま得た自分たち部族の王権をいかに守るかで、動いているという。自分たちを大きく見せるために人口を3千万人と言っているが、2千万人の自国民に1千万人の外国籍労働者を加えての数である。高橋はその2千万人も「かなりのインフレ気味」であるという。

石油がとれていなければ、サウジアラビアの王族は砂漠の遊牧民にすぎないのだから、国としての実体がないのは当然だろうと私は思う。

これまで、サウジアラビアは身の丈にあった慎重な外交をしていたが、国王が代替わりし、新国王の息子のムハンマド・ビンサルマン副皇太子がイエメンを爆撃するなど、暴走をはじめたと高橋はいう。サウジアラビアが新たな不安定要素をアラブ世界につくっているという。

私の記憶に新しいところでは、副皇太子のビンサルマンは2018年、自国のジャーナリスト、ジャマル・カショジをトルコ国内の大使館で生きたまま切り刻んで殺させた。

高橋は、欧米がトルコやイランやエジプトの社会を理解せず、自分たちの国内政治の駆け引きで動き、これらの国々の思いを裏切ってきたという。せっかくの「アラブの春」でエジプトで民主的選挙が行われ、ムスリム同胞団が政権の座についたのに、アメリカは軍事クーデターを黙認し、エジプトが独裁国に戻ってしまったという。

私たちが、日ごろ、アメリカ寄りのメディア報道に騙されているアラブ理解を修正してくれる良書である。

本書は2016年の出版である。昨年6月、イスラエルで、12年ぶりに政権交代があった。8月には、バイデン政権はアフガニスタンから米軍を完全撤退させた。また、昨年末から今年に掛けて石油価格が高騰し、アメリカのバイデン政権が日本に備蓄石油の放出を要請している。

高橋によれば、ここ数年の石油の低価格は、サウジアラビアがイランやロシアやアメリカに揺さぶりをかけるために行なったことだという。じっさい、現在の石油価格の値段はそれ以前に戻っただけである。石油価格が上がったほうが、アメリカのシェール・オイル産業にとっては利益がでる。

昨年来の新しい展開のなか、『中東から世界が崩れる』の続編を、高橋和夫にぜひ出版して欲しい。


アメリカ大統領たる者が福音派に左右されてイスラエルに肩入れするな

2021-05-17 23:42:52 | ガザ戦争・パレスチナ問題
 
きょうも、パレスチナとイスラエルの衝突が続いている。衝突というより、圧倒的にイスラエル軍のほうが強く、世界の世論を見ながら、壁の中のパレスチナ人をどれだけ殺そうか思案している。テレビでは、192人のパレスチナ人が殺され、50人以上が子供だという。
 
宗教的な争いではなく、土地あらそいである。ユダヤ人の一派は、イギリスより、その占領地、パレスチナの地をもらう約束を、第2次世界大戦時のイギリスへの経済的支援の見返りにもらった。これを、根拠に、1948年に、ユダヤ人は、パレスチナに住むアラブ人を武力で追い払って、イスラエル国を建設したのである。
 
イスラエル建国は、いっぽう、旧約聖書(ヘブライ語聖書)の中のモーセの五書ならびに『ヨシュア記』のなかで、神がイスラエル12部族にカナンの地を約束したという神話にもとづいている。ヘブライ語聖書がキリスト教の聖書の半分を占めることが事態を複雑にしている。
 
前の大統領トランプが、親イスラエルよりの立場をとり、アメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移動し、世界に先駆けて、エレサレムをイスラエルの首都と承認した。そればかりか、イスラエルがヨルダン川西岸の占領地域に入植し、パレスチナ人を追い払うのを支持した。
 
トランプの親イスラエルよりの行動は、アメリカ国内の福音派の支持を固めるためだ、と言われている。今回、私がびっくりしたのは、パレスチナとイスラエルとの停戦を呼び掛けるバイデン大統領が、電話で、イスラエルの肩をもつような態度をとったことである。イスラエルは明らかな強者であるから、アメリカは、パレスチナに人道上の配慮をみせ、イスラエルをいさめるかたちをとることで、和平の仲介者たることができるのに。
 
ユダヤ人は、いまのイスラエルの南半分にあった、約3000年前の小さなユダ国の末裔である。建国にあたって、ヘブライ語聖書から、イスラエルという国名をとったのは、神の約束ということを前面にだすために、大きく出たわけである。そして、2000年前には、ユダヤ人がヘブライ語を話さなくなって、周りのセム語系の人たちと同じ、アラム語を話すようになった。にもかかわらず、1948年のイスラエル建国ともに、ヘブライ語を母国語にし、ヘブライ語聖書によって、国民の一体感を高めようとした。
 
それでは、モーセの五書やヨシュア記とはなにか。私は、国を失ったユダヤ人が1つの民族としての意識を維持するために、祭司たちが書いた偽書である、と思う。ユダ王国が滅びてバビロンに捕囚となる前には、それらの書は、ほとんどなにもなかった。捕囚期、捕囚後のエルサレムへの帰還後に書き続けられ、捕囚後300年して、完成した物語である。エルサレムの地への帰還の物語が、神に導かれてのカナンの地獲得の物語に変わったと考えられる。
 
現在のイスラエル国民の多数派は、ヘブライ語聖書を歴史的事実だと考えていないと思う。20世紀の初めから、多くの歴史学者は、モーセに率いられたイスラエル人のエジプト脱出が歴史的事実ではなく、また、モーセも実在しなかったと主張するようになっている。
 
アメリカの福音派というのは、私は、よくわからない。福音派という統一した団体があるのではなく、漠然としたキリスト教の信仰の1つのありかたように、思える。竜巻、洪水、雨、吹雪、争いが起こって、大地がうめき、キリストが再臨(携挙)して神の統治する世界がくると信じるのである。そのためには、ユダヤ人がエルサレムにイスラエル国を再建することが必要である。
 
私は、そんなことが聖書のどこにも書いてないと思うが、そう信じて日々暮らしている人びとがアメリカにいると、アメリカの政治家が思っているのである。
 
しかし、アメリカの大統領たる者は、そのような思い込みに影響されて、強い者が弱い者を殺すのを自衛権だと言うのは、間違っている。

5月16日現在イスラエルとパレスチナの衝突が拡大している

2021-05-16 22:43:34 | ガザ戦争・パレスチナ問題
左図の黄色がイスラエル国、緑がイスラエルの占領地(パレスチナ自治区)
 
ロイター通信によると、イスラエルによる空爆で、この1週間で、パレスチナのガザの死者は181人となった。ガザからのロケット弾でイスラエル側で10人が死亡した。
 
ガザとはパレスチナ人の地中海側の自治区である。マンガ『進撃の巨人』のように高い壁に囲まれたなかに180万人が住んでいる。人口密度は1km平方あたり5千人である。『進撃の巨人』と違い、壁を作ったのはイスラエル側である。普段は壁に設けられた検問所を通ってイスラエルの工場に働きに出る。
 
パレスチナ人とは、もともと、イスラエルの地に住んでいたアラブ人のことである。1948年、ユダヤ人がパレスチナの地に、イスラエル国の建設を宣言し、武力で、アラブ人をガザ地域とヨルダン川西岸に追い払った。
 
ヨルダン川西岸も高い壁に囲まれているが、近年、イスラエル人が入植してきて、パレスチナ人の土地を奪うようになっている。今回の衝突も、イスラエル側がパレスチナ人の立ち退きを迫ることから、発生した。
 
パレスチナ人が181人殺されたのに対し、イスラエル人が10人殺された。軍事的に圧倒的な差があり、イスラエル政府は、壁の中のパレスチナ人全員をいつでも殺せる。イスラエル側はいつでも空爆したり、地上軍を派遣できるが、パレスチナ人にはそれを阻止する力がないのである。飛行機も高射砲も戦車もないのである。イスラエル側がパレスチナ人全員を殺さないのは、国際的な世論があるからである。
 
実は、ビル・クリントンが大統領のとき、パレスチナ人とイスラエル人が和解する希望が見えたのである。1993年9月13日、クリントン大統領のもとワシントンで、イスラエルとPLO(パレスチナ解放戦線)とが、パレスチナ人の暫定自治の宣言に調印した。1994年、PLOのアラファト議長とイスラエルのラビン首相、ペレス外相がノーベル平和賞を受賞した。
 
残念ながら、イスラエルのラビン首相はテルアビブにおいてユダヤ民族至上主義者に射殺され、事態は和平と反対方向に進み、今日にいたっている。ラビン首相は労働党であり、PLOも社会主義だった。イスラエルの政権は民族主義のリクード党にとって代わられ、パレスチナ自治政府もイスラム原理主義ハマスにとって代わられ、和平が見えなくなった。
 
もちろん、イスラエル国民は強硬派だけではない。
3月のイスラエル総選挙ではネタニヤフ首相のリクード党は獲得できず、連立工作もうまくいっていない。この結果、強い首相を演じるため、ネタニヤフはパレスチナ人に対してより強硬な立場をとるようになっている。
また、2000年から、イスラエルのユダヤ人人口が減少に転じているのは、イスラエル政権の武力による解決に嫌気をおぼえて、海外脱出する人が後を絶たないからだ、と思う。
 
アメリカのバイデン大統領は、きのう、イスラエルのネタニヤフ首相と、パレスチナ自治政府のアッバス議長(選挙で選ばれている自治区の大統領)にそれぞれ電話で停戦を呼び掛けた。ところが、がっかりしたことに、バイデン大統領は、対等な扱いをしなかったのである。以下はNHKやTBSのニュースをまとめたものである。
 
《ホワイトハウスによると、バイデン氏はアッバス氏やネタニヤフ氏に対し「2国家共存」を支持する考えを伝え、戦闘で子供を含む民間人が犠牲になっている状況を指摘した。
一方、ネタニヤフ氏には、イスラエルの自衛権への支持を改めて伝達するした。
アッパス氏には、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるロケット弾発射については停止する必要があるとの認識を強調した。》
 
181人を殺したイスラエルの自衛権を支持し、10人を殺したパレスチナにロケット弾発射停止を呼びかけるのは、公平な仲介者とはいえない。バイデン大統領は、アメリカ国内の福音派を意識して、イスラエルに腰が引けている、と思う。

きのうのシリア空爆はバイデン政権の外交政策の混迷からくる

2021-02-27 00:30:39 | ガザ戦争・パレスチナ問題
 
きのう、2月25日、アメリカのバイデン政権が、シリア国内の民兵組織の拠点に空爆を行った。これは、有効な対外政策を打ち出せないアメリカのイライラを象徴するもので、戦略的に意味がないばかりか、倫理的にも問題がある。
 
たとえると、こんなことだ。
カラスは、外猫の食べ物を横取りしたり、また、生まれたばかりの子猫を襲い食べてしまう。それで、私は、猫を守るため、よく、高い木の上のカラスと にらめっこをする。すると、カラスは、私を脅すため、足で小枝を折る。私を威嚇するが、決して襲ってこない。カラスがアメリカだ。
 
今回のシリア攻撃も単にアメリカの威嚇に過ぎない。しかも、目的は対シリアではなく、対イランであり、対中国である。どちらに対しても、叩きのめしたいが、それで何が解決するのか、見通せない。したがって、弱い相手を叩いて、アメリカのプライドを保とうとしている。シリアの人々が可哀そうだ。
 
米国防総省のジョン・カービー報道官は、米軍や有志連合に対する最近の攻撃だけでなく、「そうした兵士に対する進行中の脅威」に対抗するためという曖昧な説明をした。じつは、米軍や有志連合に対する最近の攻撃は、シリア国内ではなく、2月15日のイラク北部のアルビル国際空港付近で米軍率いる有志連合の部隊にロケット弾が着弾し、民間請負企業の1人が死亡、米軍兵士1人と民間請負企業の4人が負傷していたことをさしている。
 
このような、アメリカの対外政策の混迷のため、混乱しているシリアを叩くことは初めてでなく、トランプ政権による2017年4月6日のシリア攻撃もそうだった。
 
対イランの問題では、アメリカはヨーロッパと協調するから、大きな衝突にならないだろう。問題は、対中国である。
 
米中対立は根深い。トランプ政権が振り上げたこぶしのこともある。また、ウイグルや香港の人権問題もある。日本が経験した経済摩擦よりも大きな経済対立が米中の間にある。バイデン政権としては軍事衝突を避けたいであろうが、アメリカのプライドがそれを許すだろうか。日本や韓国がアメリカをなだめることができるか、予断を許さないと私は思う。