猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

イスラエル政府は国際世論を無視してガザ地区のパレスチナ人を大虐殺するだろう

2023-10-25 00:20:10 | ガザ戦争・パレスチナ問題

まれにみる大虐殺が、21世紀のいま、パレスチナのガザ地区に起きようとしている。ガザ地区には発電の燃料も切れだし、この惨劇を外から見ることができない状況になりつつある。

この事態を受け、今週の月曜日から、BSフジのプライムニュースで、各界のゲストを迎え、議論が続いている。

月曜日のゲスト、ひげの隊長こと自民党参議員の佐藤正久、元自衛隊陸将の山下裕貴、慶大大学院の田中浩一郎が、イスラエル政府はハマスを根絶やしにするために地上軍侵攻の固い決意をもっており、世界からの非難や人質の犠牲をいとわないだろう、と言っていた。

火曜日のゲスト、東大大学院教授の鈴木一人、兵器オタクの東大講師の小泉悠は、ハマスにイスラエルに勝てる兵器を持ち合わせていず、戦争で勝つつもりは初めからなかった、と言っていた。

私は、このゲストたちの認識はまったく正しいと思う。アメリカ政府やイギリス政府、フランス政府のイスラエル国の報復支持から、日本政府が距離をおいていることは、賢明なことである、と思う。

今回、ハマスが、ガザ地区からイスラエル国に侵入し、イスラエル人を約1000人殺害し、人質を連れ去った奇襲攻撃を、イスラエル政府が、逆に、ハマスをせん滅する絶好のチャンスだと考えた、と私は思う。ガザ地区のパレスチナ人を大量に殺す大義名分ができた、と考えた、と思う。すでに、この1週間で、5000人以上のパレスチナ人をガザ空爆で殺している。

     ☆       ☆       ☆       ☆

ひげの隊長の佐藤は、国連から派遣されてゴラン高原の平和維持活動に従事した。そのとき、イスラエルが国連をまったく尊敬していないことに、愕然としたと言う。

イスラエルの現在の首相は、シオニスト武闘派のリクード党党首ベンヤミン・ネタニヤフである。リクード党の考え方は、世界を敵か味方かに分け、敵を軍事力でせん滅すべきとする政党である。

鶴見太郎は、『イスラエルの起源』(講談社選書メチェ)のなかで、彼らの考え方をリアリズムと分析している。リアリズムはつぎの4点を国際社会の前提とする。

  1. 集団主義:国際社会は国民国家単位で動く。
  2. エゴイズム:個人や集団は自己の利益のために動く。
  3. アナーキー:国際政治は無政府状態である、法と秩序がない。
  4. パワー・ポリティクス:国際政治は力と安全保障についての政治に基づく。

すなわち、紛争は軍事力で解決するしかない、という考えである。

世界が尊敬するのは戦う者だけで、それを知らなかったのはユダヤ人だけで、われわれは甘かった、とリクード党の創始者メナヘム・ベギンが発言した、と鶴見は書く。すなわち、ホロコーストにあった者たちは甘ちゃんであると言うのだ。

1948年11月にベギンがアメリカを訪れたとき、理論物理学者アルベルト・アインシュタイン、思想家ハンナ・アーレント、シドニー・フック、そのほか数人のラビなどアメリカに住むユダヤ系の著名人らが、彼のグループの政治姿勢や行いがナチスに近く、ファシズム政党だと批判する連名の書簡をニューヨーク・タイムズに掲載した。

     ☆       ☆       ☆       ☆

これまでのところは、リクード党は成功している。イスラエル周囲の国々は、イスラエルの軍事力に圧倒され、ガザの住民を見捨てるようになっている。ガザの住民は、1948年にシオニストが武力でパレスチナに建国したときに、その地を追われた難民である。高い壁に囲まれた狭いガザ地区に約220万人の難民が閉じ込められているのに、いまや、周囲の国々は彼らを救おうとしないのである。

しかし、それは正義なのだろうか。

火曜日のゲスト小泉は、今回の攻撃でハマスは勝つつもりはなく、イスラエル国の暴虐さを世界に明らかにするためである、と言う。ハマスは近代的な兵器をまったく持ち合わせていない。

イスラエル政府のハマスせん滅とは、殺すことである。武力に圧倒的差があるのにまだ歯向かってくるハマス構成員は全員殺すしかないとイスラエル政府が考えるのは、リアリズムの当然の帰結である。

ハマスがガザのパレスチナ人の代表としての正当性がないというが、1回だけあったパレスチナ自治区の選挙でハマスが勝ったのである。最近の世論調査でも、ガザとヨルダン川西岸のパレスチナ人の過半数がハマスを支持しているという。

したがって、イスラエル政府が、人質やパレスチナの女子供をいとわず、空爆だけでなく、地上軍を送ってガザ地区のパレスチナ人を大量に殺害するのは間違いない。21世紀の歴史に残る大惨劇がこれから始まる。

シオニストの建設したイスラエル国とユダヤ人を切り離して考えることが、これから、以前に増して重要になる。イスラエル国を非難するが、反ユダヤ運動になってはいけない。


イスラエル政府やアメリカ政府の血の報復に抗議するユダヤ系団体と米国国務省幹部

2023-10-21 15:32:22 | ガザ戦争・パレスチナ問題

(議事堂内)

きのう、10月20日の朝日新聞に、いまも続くイスラエル・ハマス軍事衝突の記事と社説が、1面、2面、11面、12面と集中した。このなかから、テレビでは見過ごされがちなニュースを見ていきたいと思う。

1面で注目すべきは次の記事である。

<(ラファ)検問所はエジプトの管理下にあるが、エジプト政府によると、ハマスとの戦闘が始まって以降、イスラエル軍は検問所付近を4回空爆。イスラエルの同意なしに通行ができなくなっている。>

<イスラエル首相府府は声明で、「食料、水、薬に限り、人道支援を阻止しない」と発表した。病院の発電機や患者の搬送に必要な燃料は対象に含んでいない。>

2面にはさらに重要な記事『練られた決議案 唯一反対 侵攻容認貫く米国』がのっている。この記事は、ちょっと、紙面の都合でわかりにくなっている。

10月16日以来、15ヵ国からなる国連安全保障理事会(安保理)でイスラエル・ハマス軍事衝突の即時停戦の決議案が、アメリカの反対で、否決され続けているという記事である。安保理の決議採択には少なくとも9票の賛成と、常任理事国5カ国が拒否権を行使しないことが必要になる。

16日のロシア案は、ハマスへの非難がないというアメリカの反対で、賛成が5票、反対が4票、棄権が6票で否決された。

18日に、<ハマスへの非難を盛り込み、「停戦(ceasefire)」でなく「人道的中断(humanitarian pauses)」という文言を使った>ブラジル修正案も、アメリカ1国の反対で、否決になった。賛成が12ヵ国、棄権がロシアと英国の2ヵ国である。アメリカの反対理由は<決議案にはイスラエルの自衛権について言及がない>であった。

これについて、時事通信は「米国の拒否権行使は、イスラエルのハマス壊滅に向けた地上作戦を容認する余地を残した」ものと報道した。

2面には、この記事の横に、『ホロコースト重ね 報復の世論 引けないイスラエル』がのっている。

<(今回のハマスの攻撃が)第2次世界大戦中のホロコースト(ユダヤ人大虐殺)とも重ねられ、市民の間では徹底的な報復を望む声が強い。

ハマスの計画を察知できずネタニヤフ政権への国民の反発は激しい。いまの政権に、攻撃の手を緩める選択肢は、ほぼない。>

ハマスの攻撃をホロコーストと重ねるのは、ことの性質が異なり、無理である。自分たちより弱いはずのハマスがイスラエル領内に侵入でき、大量に人を殺せたことに、現在、イスラエル国民はパニックになっているだけと私は考える。ハマスの計画を事前に察知できず、また、国境警備も巨大な壁も役に立たなかったという現実を直視し、武力でパレスチナ難民を抑えこんできたリクード党の軍事路線をイスラエル国民は再検討すべきであろう。

11面にもっと注目すべき記事、欧米にイスラエル国を非難するデモが広がっているとの記事がのっている。とくに、記事『米議会内で停戦デモ ユダヤ系団体 300人逮捕』に私は注目する。

この記事は、18日、ユダヤ系団体が連邦議会議事堂前でイスラエルとハマスの停戦を訴えるデモを呼びかけ、その一部が議事堂内に通常の保安検査を受けて入館し、議事堂内に座り込んだ抗議者を300人以上逮捕したというものである。しかし、朝日新聞の記事では、デモの参加者がどの程度かわからない。

ニューズウィーク日本語版によると、ユダヤ系の平和活動団体「平和へのユダヤ人の声」が、停戦を求めて、「アメリカ在住のユダヤ人数百人が現在、議会で座り込みを行っている。米連邦議会がガザ地区での停戦を呼びかけるまで続けるつもりだ。議会建物の外では数千人、中では350人を超えるユダヤ人が抗議を行っている。この中には24人のユダヤ教指導者も含まれ、祈りを込めて抗議活動を行っている」と公表したという。

イスラエルの地上軍のガザ侵攻を容認するバイデン政権への非難が、アメリカ国内のユダヤ人にも広がっている様子がうかがえる。

きょうの朝日新聞11面に、これを補足する記事『米政権苦しい同時支援 掲げる「大義」国内外冷ややか』がのっていた。とくに注目すべき箇所はつぎである。

<バイデン氏の民主党内では、左派を中心に一部で懐疑的な意見があり、現職の米国務省幹部が支援に反発して辞職したことも明らかになった。>

イスラエルの地上軍のガザ侵攻を止めようとするアメリカのユダヤ系団体、民主党左派、米国務省幹部の存在に、私は平和への希望を見いだす。


イスラエル国とパレスチナ人の軍事衝突は宗教戦争ではなく土地の争奪戦だ

2023-10-21 01:27:41 | ガザ戦争・パレスチナ問題

きのうから、図書館から鶴見太郎の『イスラエルの起源 ロシア・ユダヤ人が作った国』(講談社選書メチエ)を借りて読む。この本は2020年11月10日に発行の書で、今回のハマスのイスラエル攻撃に対する徹底した報復の、約3年前に出版されたものである。

私には、イスラエル国がなぜパレスチナ人を軍事力で追い払って建設されたのかが、長らく謎であった。

第1次世界大戦以前は、パレスチナの地はトルコ帝国の一部であって、イスラム教徒(ムスリム)、キリスト教徒、ユダヤ教徒が争わずに住んでいた。第1次世界大戦後、敗戦国のトルコ帝国は解体され、パレスチナはイギリスの統治下にはいった。第2次世界大戦後の植民地解放の流れのなかで、当然、パレスチナの地のイスラム教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒が共同で戦線を組んで、パレスチナ独立国を作ることができたはずである。それなのに、1948年に、ユダヤ人が、なぜ、パレスチナの地にユダヤ人の国家を武力で建設し、パレスチナ難民や周りの国々と戦い続けたのか、と疑問である私は疑問に思っていた。

鶴見も、また、「ホロコーストを体験したユダヤ人がなぜイスラム教徒を武力攻撃するのか」という疑問に答えるために、本書を書き上げたと述べている。

彼によれば、まず、抑えておくポイントの1つは、ユダヤ人とユダヤ教徒とは異なるということである。

ユダヤ教徒とは、シナゴーグで日に3回祈りを捧げ、タルムードの規定する生活様式を守る人々である。ユダヤ人とは、自らをユダヤ人と考えるか、他からユダヤ人と見なされる人びとのことである。近代にはいり、ユダヤ人は必ずしもユダヤ教徒ではなくなった。ユダヤ人は、それぞれ、非常に多様な思想をもって、多様な生活を送るようになった。しかし、彼らの内面は、歴史からくるユダヤ人としての側面と生まれ育った国の文化からくる側面とが複雑に入り混じっており、並存型、融合型、不協和音型、矛盾型、相補型に分けられるという。

第2のポイントは、ユダヤ人すべてが、パレスチナの地に国家を建設しようとしたわけでないということだ。じっさい、現在、イスラエル国のユダヤ人とほぼ同じ数のユダヤ人がアメリカに住んでいる。

鶴見は、イスラエル国建設は、ロシア・東欧を発祥の地とするシオニスト運動によるものだという。このロシアとは、現在のリトニア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドヴァのことで、かって500万人のユダヤ人がいた。

けっして、イスラエル国は、ホロコーストを体験したユダヤ人が建設した国ではない。イスラエルの歴代の首相は、ロシアからの入植者か、その子孫である。

第3のポイントはシオニストにもいろいろあるということだ。軍事訓練を行っていた武闘派のシオニストが中心になってイスラエル国は建設された。鶴見は、モノの考え方の根底に、「敵か味方か」の2者択一があると、軍事的な防衛と敵のせん滅に走りやすい、と言う。

これは、現在の自民党右派にも当てはまると思う。

私もリアリストとのところがあり、各集団は自己の利益を最大にするために戦っていると考えがちだ。しかし、軍事的な戦いは非常な労力と人的犠牲をもたらす。軍事的な戦いよりも共存のためのコストのほうが安い。軍備にお金を掛けることに反対する。

とりあえず まとめると、鶴見の『イスラエルの起源』は、従来のユダヤ人の古代史やヘブライ語聖書やタルムードにもとづいたユダヤ人論ではなく、現代史と国際関係論にもとづいたユダヤ人論になっており、現在のイスラエル紛争を理解するに最適の書と思う。


軍事力に酔いしれるイスラエル国民よ正気に立ち戻れ

2023-10-17 21:11:09 | ガザ戦争・パレスチナ問題

 

私たちはユダヤ人とイスラエル国とを区別しないといけない。

ユダヤ人は歴史をもつ。80年前にはホロコーストを経験している。これをもって、現在のイスラエル政府は、パレスチナの住民を軍事力で追い払ってイスラエル国を守ることを正当化する。

しかし、1948年のイスラエル建国をすべてのユダヤ人が支持したわけでない。当時のパレスチナはイギリスの植民地であった。ユダヤ人は、パレスチナ人とともに、そのイギリスと戦って独立し、パレスチナ国家を立てることができたわけだ。そうすれば、その貢献をもって、ユダヤ人は平和的にパレスチナの地に住むことができただろう。

エルサレムの地にユダヤ人の国家を建設しようとしたユダヤ人の一派をシオニストと言う。ポーランド・ウクライナ・ロシアで、19世紀に起きた運動である。現在のキブツに見られるようなユダヤ人共同体の国をパレスチナの地に作ろうとしたのである。現在のイスラエル国は、ポーランド・ウクライナ・ロシアからのユダヤ人の入植によって生まれたのである。

共同体幻想は排除を生む。それは正義でもなんでもない。

昔々、2800年前に、自分たちの祖先が住んでいたから、と言って、現在の住民を武力で追い払って、自分たちの土地だと主張することは、ホロコーストを経験したからといって、正義だと言えない。ホロコーストを行ったナチスも、ドイツ民族の共同体運動である。

私はコスモポリタンとしてのユダヤ人を尊敬する。祖国を持たないから尊敬に値する。しかし、祖国をもったユダヤ人は、もはや、尊敬に値しない。

イスラエル国民は武器を捨てて、パレスチナ人を呼び戻し、家を与え、土地を与え、共存するよう、路線を変えなければならない。それが軌道にのったとき、イスラエルが国名として適切であるか、の議論が発生するだろう。

現在のイスラエル国は、名称から明らかなように、ヘブライ語聖書の作り話をもとに、古代の統一王国イスラエルの名前をつけている。

考古学的に確認できるのは、対立するイスラエル王国とユダ王国とであって、長谷川修一は、ダビデやソロモンによる統一したイスラエル国はなかったという説を掲げる。

現在のユダヤ人は、ヘブライ語聖書にもとづくと、ユダ王国の末裔となる。かってのユダ王国は、現在のイスラエル国よりはるかに小さい。山岳地帯の痩せた土地がユダ王国であった。

ユダ王国の北に位置するイスラエル王国はアッシリアによって、紀元前723頃に先に滅ぼされた。イスラエル王国の一部の住民がユダ王国に逃げた。この難民を受け入れるため、祖先が短い間だが統一王国を作った、との神話が作られたというのが、長谷川の仮説である。

1948年建設の国名をイスラエルとしたのは、伝説上の統一王国イスラエルの栄光にあずかろうというのだろう。しかし、イスラエル王国とユダ王国とがあった当時、海岸には、いまのガザ地区よりはるかに大きなペリシテ人(パレスチナ人)の都市国家連合があったのだ。ユダ王国には海への出口がなかった。

1948年の国連の仲介によるアラブ―イスラエルの停戦ラインが、日本の地図帳で国境とされているが、イスラエルはアラブとの4回の戦争に勝って、占領地を拡大している。ヨルダン川西岸も占領地であるが、現在もパレスチナ人を追い払ってイスラエル国民が入植している。

今回のハマスの侵入は、パレスチナ人がアラブの国々から見放されるなかの、必死の反攻と見なせる。イスラエル国が弱小のパレスチナ難民に、一時的にせよ、負けると思っていなかったので、この必死の反攻に、イスラエル国民が正気を失ったようだ。イスラエル政府が「ハマスを根絶やしにする」「悪を絶滅する」とか言うのは、気が狂っているか、傲慢かつ身勝手である。

現在のパレスチナ人難民とイスラエル国との争いは宗教によるものではない。パレスチナ人の土地を奪ってシオニストがイスラエル国を作ったからである。パレスチナの地に入植して、イスラエル国を建設したのが誤りのもとである。

イスラエル国が圧倒的な軍事力を持つ間に、イスラエル国民が、自分たちの祖父や祖母が犯した間違いを悟って、イスラエル国内にパレスチナ人とイスラエル人がいっしょになって住めるように、策を尽くすべきだ。


イスラエル地上軍のガザ侵攻、イスラエルもアメリカも正気を失っている

2023-10-12 22:58:56 | ガザ戦争・パレスチナ問題

ガザには水道も電気もなく、あるのは空爆だけ

いま、BSフジ『プライムニュース』で、駐日イスラエル大使の話を聞いて、あまりにも自分の都合ばかりを主張しているので、私は とても腹立った。彼は常軌を失っている。

彼がハマスをテロだったと言って、ハマスを壊滅するために、ハマスと戦争すると言うのは矛盾する。これまで、パレスチナ人の抵抗を、テロだと言って、犯罪人だとしてイスラエルの司法で勝手に裁いてきた。

しかし、戦争なら、人道的観点からはジュネーブ条約でいろいろな規制がある。民間人の住む所を空爆できない。捕虜を殺害したり、虐待できない。住民への水道や電気や食料を止めることができない。今回のガザ空爆、地上軍のガザ侵攻と、いったい、どうするつもりなのだ。

彼は、イスラエルの赤ん坊が殺され、女が強姦されたから、戦争をすると言いながら、それは報復ではない、イスラエルの国を守るため、犠牲がでるのはやむをえない、と言う。どれだけの犠牲者をだすつもりなのだ。今回、女を強姦する暇がハマスにあったのか。デマではないか。

彼は、民主主義の国のイスラエルを支持するのか、それとも、イスラム法を押しつけるパレスチナを支持するのか、と言う。事実は、イスラエルが民主主義の国というより民族主義の国で、ガザ地区のパレスチナ人の労働者を使って、イスラエルの経済的繁栄、強力な軍事力を築いてきた。そして、ヨルダン川西岸の占領地ではパレスチナ人の土地をイスラエル人が奪っているのを黙認してきた。いや、黙認と言うより、イスラエル人の入植者を軍隊で守っている。だいたい、もともと住んでいるパレスチナ人を追い出して、武力でイスラエル国を建設したところから誤っている。

彼は、今回、ハマスと最終決着をつけるという。最終決着とはなんのことかのみんなの質問に答えない。

彼がこう発言したのは、10月12日の『プライムニュース』のなかである。ゲストは、駐日パレスチナ常駐総代表部大使ワリード・シアム、駐日イスラエル大使ギラッド・コーヘン、通称「ヒゲの隊長」自由民主党参議院議員の佐藤正久、放送大学名誉教授の高橋和夫である。

キャスターの反町理もゲストの佐藤も高橋も、イスラエル政府は今後のことを何も考えていない、と言う。

ガザの住民を全部殺しても、パレスチナ人の親族は世界中に散らばっているから、憎しみの連鎖がめんめんと続くだけだ。日本政府は慎重に動くべきだ。欧米の政府に追随してはならない。いま、情報戦に入って、イスラエル側からの映像だけがメディアに流れている。事実は、イスラエルが、ガザ地区への電気・水道・燃料・食料・医薬品を止めて、ガザ地区の空爆を繰り返しており、これから地上軍をガザに送り、完全に制圧すると言っている。

反町も佐藤も高橋も、首相の岸田文雄が、双方に自制を求める慎重な発言をしたことを評価している。

いま、アメリカの国務長官アントニー・ブリンケンがイスラエルと、地上軍を送る前にガザ住民を逃がす人道回廊を作る交渉をしている。いっぽう、アメリカはイスラエルにすでに弾薬などの武器をイスラエルに届けている。アメリカ政府はイスラエルの地上軍がガザ地区に侵攻し、ハマスをせん滅することを承認しているのだろう。国際的非難をかわすためだけに、「人道回廊」を提案したのだと私は思う。

ゲストの高橋は、ガザ地区からエジプトへの「人道回廊」は実現しないだろう、と言う。ガザ地区には220万人のパレスチナ人がいる。この大量の難民をエジプトは受け入れられない。また、ガザからエジプトに逃げても、ガザの地に戻ってこれないことを、パレスチナ人は、過去のイスラエルの占領政策から、知っているから、自ら逃げないだろう、と言う。

それでは、どうなるのだろうか。ゲストのみんなは悲惨な予見に言葉を濁す。

敢えて私が想像するのは、イスラエル政府は、ガザからイスラエルを通って占領地ヨルダン川西岸に、パレスチナ人を強制輸送することだ。ガザにとどまるものはすべてハマスとしてイスラエル地上軍が殺すだろう。ガザとイスラエルとの間に高い壁がある。イスラエルに抵抗する疑いのある者はそこを通さない。あるいは、その場で殺す。一人ひとり、イスラエル軍は壁の検問所でチェックするだろう。そして、イスラエル政府は、戦争では犠牲は付きものだと言うだろう。平和のために戦争をしたと言うだろう。

とにかく、現在、アメリカもイスラエルも正気でないから、これから、もっと大掛かりな悲劇が起きる。そして、中東は不安定化し、世界にそれが伝番する。世界大戦が起きないよう、日本の外交は慎重であるべきだ。

[追記]

10月13日、イスラエルが、「人道回廊」をも拒否し、ガザ地区の北部の住民は24時間以内に南部に移動せよ、と国連に通告した、とTBSテレビの『ひるおび』やイギリスのBBC放送ニュースが報道した。100万人を超えるガザ地区北部の住民が24時間以内に南部に移動することは無理である。BBCは、ガザ地区から死に怯える住民の姿を放映していた。

[追記]

[エルサレム 10月13日 ロイター]  イスラエルのネタニヤフ首相は13日、これまでに行っているイスラム組織ハマスに対する報復攻撃は「始まりに過ぎない」と言明した。

また、「前例にない威力で敵を攻撃している」とも述べた。

これに先立ちイスラエル軍主席報道官は、イスラエル軍の歩兵部隊と戦車部隊が13日、ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ内で「局地的な奇襲」を実施したと発表した。空爆作戦から地上作戦への移行を初めて明らかにしたとみられる。

[追記]

[10月14日BBC] イスラエル国防軍は14日、パレスチナ自治区ガザ地区の北部に住む約110万人に対して、住民が通るべきという2つの避難経路を示した。イスラエル空軍は同日、7日のイスラエル侵入作戦を指揮したイスラム組織ハマスの司令官をドローン攻撃で殺害したと明らかにした。他方、ガザ当局によると、イスラエルの空爆によるガザの死傷者は1万人を超えた。