父:「おい、おまえ」
「寒くは、ないか」
子:「大丈夫です、お父さん」
父:「そうか」
子:「私達は、どこへ向かっているのですか」
父:「お前はまだ知らなくていい」
子:「はい」
父:「腹はへっていないか」
子:「とても、減っています」
父:「そうか」
子:「あとわずかで、体力が尽きそうです」
父:「そうか」
子:「どこへ向かっているのか、教えてくれませんか」
父:「なぜ知りたがる」
子:「希望が、欲しいのです」
父:「そんなもの、必要ない」
子:「希望がなければ、あとわずかで私は亡がらとなります」
父:「そうか」
子:「お父さん、私達はなぜ歩くのですか」
父:「それは、餌を探すためだ」
子:「それならば、さっきおいしそうなバッタがいたではないですか」
父:「あんなものではだめだ」
子:「お父さん、私には今、栄養が必要なんです」
父:「お前がなんと言おうと私は止まらんぞ」
子:「では私だけ、ここにとどまっていいですか」
父:「好きにしろ」
子:「お父さん」
父:「好きにしろ」
子:「また、会えますか」
父:「しらん」
子:「お父さん」
父:「なんだ」
子:「 」
父:「なんだ」
子:「今まで、ありがとうございました」
父:「うむ」
子:「どうぞ、ご無事で」
父:「うむ」
子:「さようなら」
父:「うまいバッタでもさっさと喰って元気になれ」
「達者でくらせよ」