私の名はロメオ。
町中の子供たちは私のことをロメオおじさんとからかう。
目が三つあるから、目立ってしまうのか。
妻とは中学生の時同級生だった。
初年度、オリエンテーリングの際
私は廊下で踊る方のバレエ部の勧誘をうけた。
聞くふりだけをして
手はテーブルの饅頭にのびた。
そしてひとつ、いただいた。
結果的に申し上げると、それが入部の責任となった。
饅頭を食べた人間は、入部しないといけないと。
私は妻とはなれたくなかった。
しかし、バレエ部の練習は船の上で行われており
酷いときは何日も船上で過ごすのだ。
またわりがひどくきつかった。
新井先生のサングラスの下の視線は常に鋭く
震え上がったものだ。
といっても、練習後は人間味溢れるひとで
先生自身の悩みなんかを僕に打ち明けたりした。
しかし、退部は絶対にみとめられなかった。
練習のない放課後私は妻と作戦をねった。
退部するにはどうすればよいのかと。
そもそも、あの饅頭がいけないのだ。
あの饅頭にどれほどの効力があるというのだ。
ちょっと法的に調べてみようじゃないか。
ということになった。
私と妻は希望を胸に図書室へとむかった。
そこでいろいろな専門書を物色していると
諏訪部先生が現れた。
事情を説明すると、力を貸してくれるらしい。
いよいよこれは、なんとかなるかもしれないぞ。
自由の身に戻れるかもしれないぞ。
諏訪部先生は酒のにおいを漂わせながら
なぜか地図をひろげている。
私たちが知りたいのは法律的な知識なんですが。
なにやら地図に赤鉛筆で書き始めた。
?
結局なにもわからずじまい。