この本に対する疑問箇所は幾つかあるけれど、一番価値観が違うなと感じた点がトップの在り方だった。
3月15日5時30分過ぎに菅元首相が東電本店に着いて、東電の幹部や社員を前に話しをしたあと、6時過ぎ…
直前に何かが爆発して、二号機のサプレッション・チェンバー(格納容器の圧力を調整する圧力抑制室)の圧力がゼロになる。
吉田所長は「各班は、最小人数を残して退避!」と指示を出す。
さらに「(残るべき)必要な人間は班長が指名すること」と続けた。
この発言は、班長が作業員の生死を選べ(命の選別)と言っていることと同じだと私は理解した。
そんな生死に関することを、トップである吉田所長が班長に委ねていいのだろうか。
そして指示された班長も、誰を選んだらいいか分からなくなるだろう。
吉田所長は、緊対室の椅子と机の間にできたスペースで胡坐をかいて座り込んでいる時に、こう考えたそうだ。
「私はあの時、自分と一緒に‘死んでくれる’人間の顔を思い浮かべていたんです」
「何人を残して、どうしようかというのを、その時に考えましたよね。ひとりひとりの顔を思い浮かべてね。私は、東電に入社してから、福島第一は長いんです。若い時から何度も勤務しているし、あわせると十年以上、ここで働いていますからね。若い時から、一緒にやってきた仲間が結構いるんですよ」
吉田所長の指示の後、伊沢が若い人間に早く退避するように促していく。
それは本来 吉田所長が担うべき役割なのではないかと思う。
価値観が違う点のあと一つが、‘最悪の事態’が訪れるまえの段階で、免震重要棟にいる600人以上の中の、技術系以外の人達や女性を早い段階で第二原発に避難させることができたのではという点だ。
1号機のベントをする前の段階で避難させていれば…
*2013年4月5日 国会で民主党の長妻議員が福島第二原発の廃炉の件で、安部首相に質問した。
安倍首相は、運転を停止している福島県の東京電力福島第二原子力発電所1~4号機の再稼働について、「仮に安全性が確保されたとしても、地元自治体、住民に理解をいただくのは簡単ではない」と述べた。
廃炉にするかどうかについては、「事業者(の東電)が(廃炉を求める地元の)そういう状況などを総合的に勘案しながら判断していく」と述べるにとどめた。
首相は明確に廃炉にするとは答えなかった。
トップの在り方は正しいのだろうか?