「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の500日」とあるので、この本は吉田所長を中心に書かれていると思ったが、東電の伊沢さんをメインに書かれていた。
その他にも、フクシマフィフティと東電の作業員・協力企業の人達・自衛隊・消防隊員など大勢の人達が原発事故の初期の段階で関わっていた。
その人達が、福島原発に滞在する時間の長さや回数に関係なく、命がけで事故の収束作業にあたったから今の日本がある。
この本を読んだ人の中に涙を流して、この本を賞賛している人もいたが、私は冷静に読んでいた方かもしれない。
私は原発事故以来、原発に関する本を何冊か読んだ。
その中に「ノンちゃんの原発のほんとうの話」という本があった。
この本の中で、電源三法という法律の事が書かれていた。
電源三法の交付金のおかげで地元に億単位のお金が入ってきて、立派な公共の施設を建設することが出来たり、雇用が生まれたりしたのではないだろうか。
そういう背景があることを知っていたので、冷静に読めたのかもしれない。
この本を読みたかった理由に、事故に対する幾つかの疑問点があった。
疑問点① 電源車のプラグのスペックが合わず、電源が繋がらなかった点。
疑問点② 4月4日集中廃棄物処理施設の、低濃度汚染水約1万トンを海へ放出したことに対しての記述がない。なぜメガフロートが来るまで待てなかったのか。
私は、夜7時過ぎから夜の闇にまぎれて、高濃度汚染水を放出したのではないかと疑念を抱いていた。
だが、この本には疑問点に対することが書かれていなかった。
この本の中には、吉田所長や東電の作業員が、事故を起こしたあとどう思っているのかが書かれていない。
東電社員が何を考えているのかを知るには、「最高幹部の独白 福島原発の真実」
今西憲之氏の本を見ればわかるかもしれない。