この本は、弁護士である日隅氏とフリーライターの木野氏によって書かれたものである。おわりにこう書かれている。
私達がこの本を書く直接の動機は、これほどの大事故に際し、事故の当事者である東電や監督官庁が、どのような姿勢で市民に情報を伝えたのかを記録に残しておく必要があると感じたからだ。情報公開のあり方に対する評価は読者の判断に委ねたいが、「はじめに」でも述べたように、私たちは二度と同じようなことが許されてはならないと考えている。
原発事故後、一人は関わっていた仕事を断り、一人は胆のうがんの宣告を受けながらもこの本は出版された。そのおかげで知りたいと思っていたことをこの本で知ることが出来たし、また新たに気付いた点もあった。
○東電は10mを超える津波を予測していた。
2006年 7月 原子力工学国際会議で、東電の専門家チームが英文レポートを発表している。内容は、当時福島第一原発で想定していた津波を上回る津波が、50年以内に襲来する確率は約10%、10メートルを超える津波が襲来する確率も1%弱あると記載されていた。
*保安院は東電による2008年の貞観地震モデルの試算について、2009年9月に報告を受けていた。
東電が「津波は想定外」といい続けたのには理由があった。それは原子力損害賠償法に、「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない」という規定があったからだ。
○低濃度汚染水の濃度と、放水量を直接保安院が確認していない!
東電は、4月4日集中廃棄物処理施設の、低濃度汚染水約1万トンを海へ放出した。私は、夜7時過ぎから夜の闇にまぎれて、高濃度汚染水を放出したのではないかと疑念を抱いていたが、日隅氏によると東電の仮設タンク発注時期が遅れたのがすべての原因ではないかと考えたそうだ。
○汚染水を飲むように強要したフリージャーナリスト
10月31日の統合会見で園田政務官に対して、複数のフリージャーナリストが敷地内に散水している処理された後の汚染水を飲むように繰り返し迫り、実際に、園田政務官が現地から取り寄せて飲むという事件が起こった。
私はこの本を読んで初めて知ったけれど。
4月25日から、福島原発事故に関する記者会見を東電と政府が合同で始めている。その記者会見に対する参加資格で、フリージャーナリストやインターネットメディアの一部が排除されそうになった。
この事件の発端には、そういう理由もあるような気がするけれど…