浄心庵・長尾弘先生「垂訓」

恩師の歌集「愛」より

極楽と地獄の在り処
たずぬれば我が内にこそ
共にあるなれ

「独り言」より。

2015-12-18 00:19:01 | 浄心庵 長尾弘先生垂訓

    恩師のご著書「真理を求める愚か者の独り言」より


        第五章 心の曇りをとるための反省


         子供の問題はまず親の反省から


先の続き・・・

今から数年前に家内をくも膜出血で亡くしました。
ある日突然、子供二人を残して他界してしまいました。
その時、下の子は中学三年生、上の子は高校三年生でした。
子供たちにしてみれば、突然母親を失ってしまい、
特に下の子は中学三年ですから一番心の揺れやすい年ごろでもあり、
心の不安定な日が続いたのです。
ちょうど次の年は上の子の大学入試、下の子は高校入学という時期でした。
下の子は寂しいのでつい友達の所へ遊びに行き、
しだいに夜遅くなるまで帰らないということが続きました。
家内がいてくれたら、「お前、留守番していてくれ、わしが探してくる」とか、
あるいは「お前のしつけがわるいから、こんなことになったんだ」とか言って、
喧嘩もできるわけですが、一人ぼっちになってしまうと、喧嘩相手もいません。
そうこうするうち、上の子は大学に合格し、寮に入りました。

下の子と私と二人きりになりますと、
夜、十時になっても十一時になっても午前零時になっても、
いっこうに家の玄関の戸はコトリともしません。
しいんと静まりかえる家の中で、
深夜まんじりともせずに何時間でも子の帰りを待っている男寡の親の気持ちといったら、
言い表しようもありません。
自分自身に与えられる苦しみで自分さえ耐えればいいというのならともかく、
我が子を通しての苦しみになりますと、子供が立ち直ってくれない限りはどうにもなりません。
外出の時に下駄を履いていっていないのは知りながらも、
表で下駄の音がしたり、かすかな足音でもすると、
つい我が子が帰ってきたのではないかなどと思い、外に飛び出してみたり、
どこへ行ったかわからない子を探してあてもなく出歩いたりと、
本当にいろいろと辛く悲しい体験をさせてもらいました。

最初のうちは、夜遅くでも帰ってきた子を、
「何をしてたのか」とまるで鬼みたいな剣幕で叱りつけていました。
「言うことを聞かないなら、髪の毛をつかんで引きずり回すぞ」と、おどしてみても、
いっこうに聞きいれてはくれないのです。
「これだけ言ってもお前が聞いてくれず、口で言ってもわからないなら、
牛や馬のように体罰によるしかない。
もし今後、こういうことをしたら、姉さんの竹刀でお尻を叩くから」と言いましても、
「ハイ」と言うだけです。
それでまた相変らず夜遅く帰宅します。

約束した以上は私も約束を破った子に体罰を加えないわけにはまいりませんで、
「来い」と言って、竹刀を持って家の外へ出ると黙ってついて来ます。
「ごめん、今度からはしなから」と謝ってくれれば、「もうしないでな」と言って済むことなのに、
黙ってついて来るので、やめるわけにはいきません。
「じゃ、向こうをむけ」と言い、竹刀でお尻を叩いてしまいました。
「痛い」と言って、本能的に尻をかばいます。
私は鬼みたいな心になっているので、一回では済まず、何回も叩きました。
「もういいから、お休み」と言うと、子供の部屋は二階にありますから、
泣きながら上に上がっていきました。


             ~ 感謝・合掌 ~



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