恩師の御著書「真理を求める愚か者の独り言」より
第二章 必要なのは正しい生命観の確立
◆服毒自殺の遺体に起きた奇蹟◆
まだ結婚前の二十七歳の女性が服毒自殺をされました。
青酸カリなので劇毒です。
人間を死に至らしめる毒には神経を麻痺させて心臓を止める毒と、
細胞を腐らせてゆく腐敗させる毒があるそうです。
麻痺させるほうの毒はサソリなどが持つものです。
蛇は大きな獲物を鵜呑みにして、
消化しやすいように腐敗させるそうです。
この娘さんが飲んだ毒は細胞を腐らせるほうです。
身体の床面に接した部分はすぐに変色してきます。
仰向けなら背中のほうです。
二時間くらいで真っ黒になり、五、六時間もすると
全身が腫れあがって、
鼻や口など穴という穴から汁が出て来ます。
もう見られた姿ではありません。
鼻や口には綿を詰めるのですが、細胞が腐っていますから、
鼻も口も膨れあがり、穴が広がっていよいよお化けです。
なんとかしてほしいと頼まれて、そのお宅に赴き、到着した頃には、
すでに池の底の泥といった状態にまで身体が変色していました。
お顔は紫色になり、身体は腫れあがり、
胸をかきむしって断末魔の苦しみのまま目をむいて
死んでおられました。
石のごとく硬直していて指一本動きません。
今から二十年も前のことです。
あまり気の毒な姿に胸が痛みまして、家族のご諒解を得てから、
その方に向かって話しさせていただきました。
「どんな事情があったのか私は知りません。
しかし、あなたはとんでもないことをしてくれました。
自らの命を自らが絶つとは神の御心に最も背いた行為です。
神は幸せに生きよ、健やかに生きよとおおせられます。
あなたはその神のご意志に背いてなんということをしましたか。
あなたは間違ったことをしたのです。
その過ちにまず気付きなさい。
あなたは毒を飲むことで死んでしまったのです。
自分の死をはっきりと自覚しなさい。
神様の御心に背いて救われることは誰にもできません。
自然に逆らっても同じことです。
間違いを素直に認めて、神様に心からお詫びを言いなさい。
私も共にお詫びします」
泣きながら赦しを乞い、「どうかこの方の罪過ちをお赦しください。
私たちの罪をお赦しください」とお祈りさせていただき、
目を開きますと、
真っ黒になって腐りかけたその方の顔が
きれいになっているのです。
白くなり、ピンク色さえさしてきています。
目はむいていましたが、手で瞼に触れるとさっと
閉じてくれました。
一瞬にしてお化粧をしたような顔に変わっておられました。
家族の方も親戚の方も驚いておられました。
硬直していた手が柔らかくなっていて、
ぱらっとほどけた指を組ませると今度は離れてしまいます。
縛ってはかわいそうなので、
座布団を二つ折って肘につっかい棒をして合掌してもらいました。
よかった、救われてくれたと感じまして、布をお顔にかけたのです。
有り難うございました。
この方の罪を赦していただきました、という気持ちでした。
すると、白い布が目のあたりから濡れてきまして、
見る見るうちにぐしょぐしょになりました。
「涙で濡れてしまいましたから、新しい布と替えてあげてください」
と遺族の方にお願いしました。
もはや鼻や口から汁が出ることはありませんでした。
この体験をさせていただくことにより、
神様はすべてを赦してくださることがわかりました。
そこでよく考えました。
神がもしお怒りになってお赦しにならないのなら、
いくら私のような者が泣き叫んで赦しを乞うても
こういう現象は起きないはずです。
本人が心の間違いを反省してこれを神様にお詫びしたならば、
必ずその苦しみから救われます。
ただ、赦さないのは、自分自身の内なる良心でした。
その過ちに目覚めるまでの長い時間を苦しみの中で過ごすのです。
神様はご自分に最も背いた行為をした者さえも、救われなさい、
自ら目覚めて救われなさいと、慈愛を与えてくださっていたのです。
「自殺者は永遠の地獄へ落ちる」と説く宗教がありますが、
自殺者でも悔い改めたら救われるのです。
もし神仏の心から一メートル離れたら、
私たちは自分自身を一メートルの苦しみとして
自らを裁くようになっているのです。
しかし、それも神の御心という大宇宙大自然の
正しい軌道に戻るための
調整にすぎなかったのです。