恩師のご著書「思いの中に生きる」より
喜びの体験記
「反省」がもたらした今の幸せ H.M.
私は、今振り返ってみると、
十五年前に身体の調子がおかしかったのです。
見掛けは別に悪い所がないし、いたって健康でした。
それがちょっと仕事をすると疲れてくるのでした。
朝起きようとするのですが、
どうも身体全体がだるくてなかなか起き上がれない時もありました。
この頃は店の方も忙しかったので、仕事の疲れかなと思って、
別に気にも留めずにいたのですが、一年、二年と経つうちに、
腰がだるく足が重く感じてくる
ようになってきました。
この時から病魔に少しずつ蝕まれいたのですね。
五十年四月、何日かは忘れましたが、突然足腰がだるく歩くのも困難になり、
物を下げることもどうすることもできなくなってしまいました。
一度大きい病院で診察を受けてみようと思い、
同年八月、国立泉北病院に検査のため四十日間入院しました。
入院して、
脳波・心電図・筋電図、それに目、耳とありとあらゆる検査を受けましたが、
病気に繋がる原因は無かったようでした。
結局、原因は、はっきりしませんでした。
主治医が言われるには、
「あなたの病気はク―ゲルベルグベランデル氏病といって、
病状は急に進まないが、治らないと思います。
八百屋を続けていくことは無理ですから、
何か他に身体に合った仕事を考えなさい」ということでした。
その言葉を聞いて、私はすごくショックでした。
こんな身体になって、これから先どうなるのだろうと思うと、
目の前が真暗になり、不安な想いで愕然としました。
病気は一年一年進んでいきました。
「このままいくと、まもなく車椅子の世話になるのとちがうやろか」
「寝たきりの身体になるのではないか」と思うと、夜も眠れないこともありました。
「この上、妻や子供に苦労をかけると思うと済まない、申し訳ない」とか、
「車の中に排気ガスを引き込んで死のう」とか、いろいろな思いが交錯して、
毎日イライラ、クヨクヨして過ごしておりました。
このような私を見て、妻は「お父ちゃん、そんなにクヨクヨせんでええよ。
なるようにしかならないのやから、何も心配しなくてええ。
店の方は私がお父ちゃんの分まで働くから。
お父ちゃんはお陰で車の運転ができるのやから運転だけしてくれたら、
それだけでええのや。
私が仕入れするから」と言って慰めてくれました。
その時は「すまないな、申し訳ないな」と思っているのに、その思いと裏腹に、
身体の自由がきかないものですから、妻や子供に当たり散らす毎日でした。
~ 感謝・合掌 ~