ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『地雷グリコ』『うらはぐさ風土記』

2024-12-03 23:03:22 | 
『地雷グリコ』 青崎有吾 KADOKAWA
 射守矢真兎(いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。平穏を望む彼女が日常の中で巻き込まれる、風変わりなゲームの数々。罠の位置を読み合いながら階段を上ったり(「地雷グリコ」)、百人一首の絵札を用いた神経衰弱に挑んだり(「坊主衰弱」)。次々と強者を打ち破る真兎の、勝負の先に待ち受けるものとは――
 読んでいて、「えっえっ、どういうこと???」と私の頭は理解するのに時間がかかった。グリコやだるまさんが転んだなどのゲームが、ちょっと独自のルールを加えるだけで、ものすごく頭脳戦になる。すごいな。ゲームのルールを守りながら、ルールの穴や解釈で思いもつかない方法で相手を負かす。心理戦でもあり、伏線回収がやばい。作者は、どんな頭脳の持ち主かと思う。

『うらはぐさ風土記』 中島京子 集英社
 30年ぶりにアメリカから帰国し、武蔵野の一角・うらはぐさ地区の伯父の家にひとり住むことになった大学教員の沙希。そこで出会ったのは、伯父の友人で庭仕事に詳しい秋葉原さんをはじめとする、一風変わった多様な人々だった。コロナ下で紡がれる人と人とのゆるやかなつながり、町なかの四季やおいしいごはんを瑞々しく描く物語。
 ほんわか、じんわりする。ご飯も美味しそう。
 個人的には、私の好きなブルーチーズのスティルトンが出てきてうれしかった。スティルトンを食べると不思議な夢を見るんだって?
 あと、日本兵のPTSD。父が学生だった頃、ある家の人が、よく屋根にのぼって日本刀を振り回していたと聞いたことがある。その人も戦争によるPTSDだったのかもしれない。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『この父ありて』『アーサー王物語』

2024-11-13 20:59:53 | 
『この父ありて 娘たちの歳月』 梯久美子 文藝春秋
 石牟礼道子、茨木のり子、島尾ミホ、田辺聖子、辺見じゅん……。不朽の名作を生んだ9人の女性作家たち。唯一無二の父娘(おやこ)関係が生んだ、彼女たちの強く、しなやかな生涯。
 父を含めた家族の物語。友達は「しょうもなかった」と言っていたが、私は、おもしろかった。どの話も興味深くて圧倒された。

『アーサー王物語』 ジェイムズ・ノウルズ 金原瑞人訳 偕成社文庫
 魔術師マーリンに守られ、不思議な運命を持って生まれたアーサー王。岩から剣をひきぬき、王となるや、名剣エクスカリバーを手に入れ、ブリテン国を統一する。アーサー王と円卓の騎士たちの物語。
 Kroiの歌にアヴァロンとあり、アーサー王物語にアヴァロンが出てくると聞き、読んでみた。
 まず、岩から引き抜いた剣がエクスカリバーだと思っていたが、違った。湖の姫からもらったのがエクスカリバーだった。
 アーサー王物語というよりは、アーサー王と円卓の騎士の物語。
 登場人物が多くて、自分で家系図を書きながらじゃないと こんがらがった。とにかく、瀕死になるまで戦うから、命がいくつあっても足りないんじゃないかと思う。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『名画を見る眼』『無人島ロワイヤル』『どうしてパパとけっこんしたの?』

2024-10-22 07:36:13 | 
『カラー版 名画を見る眼Ⅰ 油彩画誕生からマネまで』 高階 秀爾  岩波新書
 名作はどのように生まれたのだろうか? 本書は、西洋絵画の本質について一歩進んで理解したいとする人びとの願いに応えて執筆された西洋美術鑑賞の手引きである。一枚の絵に隠された芸術家の意図、精神性を探りながら歴史を一望する。
 私は知らなかったが、著者の高階先生は、知る人ぞ知る重鎮なのだとか。昔書かれたものを絵をカラーにして。
 カラー版で絵があるので、わかりやすい。また、こんなところにこんなものが描かれていたのか とか、これには約束事があったのか とかなど、説明してもらえるのでわかりやすい。Ⅱもあるが、Ⅰに比べて私には少し難解だった。でも、おもしろい

『無人島ロワイヤル』 秋吉理香子 双葉社
 「無人島に3つ持っていくとしたら?」初夏の夜、この定番の他愛ない話題で盛り上がっていたバーの常連たちは、マスターの告げた一言「俺、無人島持ってるよ」でさらに沸く。かくして、彼らは3つのアイテムのみを手に無人島を目指すことに。だが、一夜明けると、マスターとヨットは消え、代わりにビデオメッセージが残っていた。「これからバトルロワイヤルをやってもらいます」 そして、最後に残った一人には「10億円の賞金」がもらえるという――。
 裏切りが怖い。下司さがなんともいえない。紅一点のりりこには、とことんおバカキャラを演じてもらいたいところだが、途中から覚醒するのだ。
 最後にバーのマスターの一人語りが聞きたいところだ。
 果たして、私ならば無人島に何を持っていき、誰を信じるか?
 
『どうしてパパとけっこんしたの? どうぶつたちそれぞれのこたえ』 桃戸栗子 福音館書店
 動物によってそれぞれ違う求愛行動。メスはどうやってオスを選ぶのか……動物の生態をベースにしつつ、ユーモアあふれる親子のやりとりが楽しい内容。
 絵本。へぇー、そうなんだと思うことたくさん。動物によってプロポーズは違うのね。最後のタヌキの答えには、大人はちょっと心揺さぶれるかも。関係ないが、ゴリラがイケメン。
 一歳半の孫に読んだら、パパという単語が出てくるたびにパパを指さし、ニッコリしていた。動物がたくさん出てくるし、繰り返しがあるので好きみたい。幼稚園くらいの子は「ママは、どうしてパパとけっこんしたの?」と親に聞くらしいが、まだ孫はしゃべれないので、聞いていない。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『続 窓ぎわのトットちゃん』『スラムに水は流れない』

2024-09-16 22:40:06 | 
『続 窓ぎわのトットちゃん』 黒柳徹子 講談社
 泣いたり、笑ったり……トットの青春記。
 一作目のようなインパクトは少ない。しかし、徹子さんやお母さまのバイタリティーや創意工夫には脱帽。
 そして、何よりも徹子さんの反戦の気持ちが伝わってきた。

『スラムに水は流れない』 ヴァルシャ・ハジャージ 村上利佳訳 あすなろ書房
 そもそもの問題は、水がたりないことだった。インド有数の大都会ムンバイ。12歳のミンニと15歳の兄サンジャイが暮らすスラムには、ムンバイの人口の40パーセントが住んでいるにも関わらず、水は市全体の5 パーセントしか供給されていない。水不足がきびしくなる三月のある夜、サンジャイが「水マフィア」を目撃してしまい……。
 児童書。
 安全な水を飲むために煮沸しないといけない、水を確保するために並んで水を汲みにいかなくてはいけない。いまだ残るカースト制の差別。ミンニの周りには問題が山積。しかし、勉強が好きなミンニが勉強を続けられるように大人たちは助けてくれている。ミンニも前を向いて頑張る。
 そして、水を違法に盗む水マフィアを告発するミンニと友達。始めは電話をしても警察官に笑われて切られてしまう。しかし、知恵と勇気をもって行動をおこす。ミンニは、偉いなあ。
 暮しをよくするためのアプリの案を考える場面は、明るい未来が見えるようでよかった。世界の子どもたちの勉強が中断されない環境を望む。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『動物たちは何をしゃべっているのか?』

2024-09-02 22:25:58 | 
『動物たちは何をしゃべっているのか?』 山際寿一・鈴木俊貴 集英社
 つい最近まで、動物には複雑な思考はないとされ、研究もほとんどされてこなかった。ところが近年、動物の認知やコミュニケーションに関する研究が進むと、驚くべきことが分かってきた。例えば、小鳥のシジュウカラは仲間にウソをついてエサを得るそうだ。ほかにも、サバンナモンキーは、見つけた天敵によって異なる鳴き声を発して警告を促すという。動物たちは何を考え、どんなおしゃべりをしているのか?
シジュウカラになりたくてシジュウカラの言葉を解明した気鋭の研究者・鈴木俊貴と、ゴリラになりたくて群れの中で過ごした霊長類学者にして京大前総長の山極寿一が、最新の知見をこれでもかと語り合う。話はヒトの言葉の起源、ヒトという生物の特徴、そして現代社会批評へと及ぶ。そして、その果てに見えたヒトの本質とは!?
 冒頭で鳥の鳴き声に鈴木氏は「あれは、危険を知らせる声。・・・ほら、オオタカが飛んでいますよ!」って、スゴイ!シジュウカラは見通しの悪い森に住む鳥で視覚のコミュニケーションでは不十分なので言葉を発達させたのではないか、森の中ではおしゃべりなシジュウカラは飼育下では環境が単純なのであまり鳴かないとか、シジュウカラの言葉に文法があったとか、興味深い話がいっぱい。
 そして、一流の研究者同士の対談は、動物だけに終わらず、言語や戦争、SNSの炎上へと話が及ぶ。
 言葉に頼りすぎたことで「文章を読み解く力」が衰退しているのではないか。一から十まで言葉で説明しないと伝わらないという話には共感した。読み聞かせをしていて、想像する力が弱っていると漠然と感じていたことだったので。
 動物にできてヒトにできないことは山ほどある。人間の考える知性が唯一絶対ではない、我々の知らない知性があるかもしれない。という謙虚な姿に好感が持てた。
 おもしろかった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする