ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『マリエ』『毒入りチョコレート事件』

2024-08-31 22:20:53 | 
『マリエ』 千早茜 文藝春秋
 「桐原まりえ」が40歳を目前に離婚したところから始まる。離婚理由には納得がいかないものの、もう誰にも属していない、という軽やかさを感じているまりえ。すべて自分の自由にできる生活が一番大事でそれを危うくする欲望、たとえば恋愛などに呑み込まれたくはない。でも、なにか不安で、なにか取りこぼしている気も……。ひょんなことで懐いてきた由井君のことは好ましいのだが、折に触れ、7つの歳の差を感じるばかり。そんな折、些細なきっかけと少しの興味から、まりえは結婚相談所に登録。そこで彼女は、切実な「現実」や結婚に対する思いもよらない価値観を次々と突きつけられる。
 私の好みの小説。時々、場面が色鮮やかに浮かびあがるのが好き。料理も美味しそう。
 離婚しておこる様々な手続きの煩雑さや一人暮らしの爽快さや婚活での人間模様など、どれも興味深く面白い。
「他人に自分の幸も不幸も決めつけられたくない」「不幸だから みたされている人たちを見ると腹が立つ」「不安だから理由がほしくなる」「動かないとなにも始まりません。待っていても なにも起きないんです」「幸も不幸もそれぞれ努力するしかない」そして、人間の心も人間関係も複雑。

『毒入りチョコレート事件』 アンソニー・バークリー 高橋泰邦訳 創元推理文庫
 ロジャー・シェリンガムが創設した「犯罪研究会」の面々は、迷宮入り寸前の難事件に挑むことになった。被害者は、新製品という触れ込みのチョコレートを試食した夫妻。チョコレートには毒物が仕込まれており、夫は一命を取り留めたが、夫人は死亡する。だが、そのチョコレートは夫妻ではなく他人へ送られたものだった。会員たちは独自に調査を重ね、自慢の頭脳を駆使した推理を、一晩ずつ披露する――。誰がこの推理合戦に勝利するのか。
 えーと、私には合いませんでした。読み始めて何回寝落ちしたことか。2/3を過ぎたことから面白くなり始めたが。イギリスぽいというか、回りくどい言い方が合わなかった。
 推理が次の語り手で否定されたりして、新たな犯人が次々と出てくるのは面白かったし、ニヤリとするような最後の終わり方が好きだが。
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『板上に咲く』

2024-08-16 19:45:47 | 
『板上に咲く』 原田マハ 幻冬舎
 「ワぁ、ゴッホになるッ!」1924年、画家への憧れを胸に裸一貫で青森から上京した棟方志功。しかし、絵を教えてくれる師もおらず、画材を買うお金もなく、弱視のせいでモデルの身体の線を捉えられない棟方は、展覧会に出品するも落選し続ける日々。そんな彼が辿り着いたのが木版画だった。彼の「板画」は革命の引き金となり、世界を変えていくー。墨を磨り支え続けた妻チヤの目線から、日本が誇るアーティスト棟方志功を描く。
 『ボタニカ』を読んだあとだからか、棟方志功とチヤの関係がよかったと思う。自分の目の治療代があるならば、子どもに米を食わせてやりたいというところも、愛情があふれてよかった。
 柳宗悦らとの出会いで一気に運が開くのも劇的。それまでがんばってきたものね。人との縁を大切にしてきて。素直によかったと思える作品だった。
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『ボタニカ』

2024-08-15 21:55:50 | 
『ボタニカ』 朝井まかて 祥伝社
 明治初期の土佐・佐川の山中に、草花に話しかける少年がいた。名は牧野富太郎。小学校中退ながらも独学で植物研究に没頭した富太郎は、「日本人の手で、日本の植物相(フロラ)を明らかにする」ことを志し、上京。東京大学理学部植物学教室に出入りを許されて、新種の発見、研究雑誌の刊行など目覚ましい成果を上げるも、突如として大学を出入り禁止に。私財を惜しみなく注ぎ込んで研究を継続するが、気がつけば莫大な借金に身動きが取れなくなっていた……。貧苦にめげず、恋女房を支えに、不屈の魂で知の種(ボタニカ)を究め続けた稀代の植物学者を描く。
 う~ん、牧野富太郎と結婚はしたくないなあ。一番目の妻・猶さんが蔑ろにされて、生殺しのようでかわいそう。スエさんも金策に追われて、かわいそう。スエさんは、なんでそんなに富太郎がよかったのだろう。一心に研究に没頭するする姿は、尊いが。
 借金で首が回らなくなった富太郎は、大事な標本を売ろうとするが、援助に名乗り出たのは池長孟。神戸市立博物館の南蛮美術コレクションの人やないかい!しかも、研究所の設置場所として会下山の名前が出てくる。おぉ、通っていた高校の近所だよ。
 実は、母の名前は、祖母から牧野富太郎の弟から名付けてもらったと聞いている。婦人雑誌の懸賞に当たって名付けてもらったと。でも、牧野富太郎に弟はいない。母が存命中に真相を聞かないといけないな
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『東家の四兄弟』

2024-08-02 22:23:19 | 
『東家の四兄弟』 瀧羽麻子 祥伝社
 占い師の父を持つ東家は、男ばかりの四兄弟。上からあまり家によりつかない研究者の朔太郎、父を敬愛する占い師の真次郎、ハンサムだが気弱な会社員の優三郎、明るく愛されキャラの大学生・恭四郎。兄弟と両親が、ほどよいバランスで暮らしていたが、思いがけず小さな問題が次々と起こる。
 ころころと主人公が変わる。章の前に星が描かれており、星の数で何番目の子の語りか分かる。(三男なら星三つ)かる~く読むことができる。
 しかし、言っていることは心にしみる。
 生まれた時にもらい受ける花壇は、場所も選べず、土の質もさまざま。どの花壇にもたくさん種が埋まっている。無数の要因がからみあい、どの種がどう育つかは予想しづらい。自分ががんばって どうにかできることもあるが、どんなに手を尽くしてもどうにもならないことも。しかしである。枯れても土に還って次の種を育てる養分になる。く~、いいな。
 生き残るのは、強い種じゃない。環境に順応できた種だ。今いる場所に合わせるか、もっと合う場所を探しに行くか。世界は広いしな。長男の言葉もしみる。世界は広いしなって。
 瑠奈ちゃんの「(人と)比べても意味がなくない?だって、みんな自分の人生を自分でいきていくしかないんだもの」もいい。
 お母さんの過去も詳しく明らかにされていないし、続きがありそう。
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『水車小屋のネネ』

2024-07-29 20:45:51 | 
『水車小屋のネネ』 津村記久子
 18歳と8歳の姉妹がたどり着いた町で出会った、しゃべる鳥〈ネネ〉 ネネに見守られ、変転してゆくいくつもの人生―― 助け合い支え合う人々の40年を描く
 水車小屋というから、外国の話かと思ったら舞台は日本であった。ネネというから、碧眼の女の子かと思ったら、ヨウムという鳥で、しかもオスだった。
 それぞれの人生は重たいが、いい方向に行ってよかったとしみじみと思う。周りに支えられていた姉妹が、やがて周りの人を支えるようになっていく。嫌な人もでてくるけど。
 いろんな人によくしてもらって、自分はこんな人間になった。出会った人が分けてくれたいい部分で自分は生きてる。世の中の子どもたちが そう思って生きることができたらと思う。
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