ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『イオカステの揺籃』『汝、星のごとく』

2023-07-29 21:50:05 | 
 読み応えのある二冊。私的には、おススメの二冊。

『イオカステの揺籃』 遠田潤子 中央公論新社
 バラが咲き乱れる家で、新進気鋭の建築家・青川英樹は育った。「バラ夫人」と呼ばれる美しい母。ダムと蕎麦が好きな仕事人間の父。母に反発して自由に生きる妹。英樹の実家はごく普通の家族のはずだった。だが、妻が妊娠して生まれてくる子が「男の子」だとわかった途端、母が壊れはじめた……。
 女の人は、前半部分に描かれる仕事人間の父の自分に都合のよい勘違い、英樹の丸く収めようとするところにイラッするだろう。男たち(完以外)は、わかってないなあ。
 後半は、母・恭子の壮絶な成育歴、わずか二歳で死んだ次男の死の真相が明らかになり、怒涛のごとく読んだ。恭子の毒親が、酷過ぎて・・・。でも、恭子のお母さんは、どんな育て方をされたのか、お父さんに責任はないのか?毒親の影響は、怖い。毒親に育てられた子供は、どうやって普通に暮らせるのだろうか?


『汝、星のごとく』 凪良ゆう 講談社
 風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。
 暁海と櫂の二人は、親に振り回されるが、縁を切ることができない。島の閉鎖性にも息がつまる。大人になり、すれ違い、別れた二人は、再び会って。すべてを投げうって、二人の世界を築く二人は、他人からすれば身勝手かもしれないが、感動した。
 北原先生や暁海の父の愛人・瞳子の自分の脚でしっかりと立った生き方がすがすがしい。
 プロローグとエピローグは、ほぼ同じことを描いているのだが、印象が全然違うのがすごい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ピーター・シスの闇と夢」

2023-07-27 23:32:11 | 美術鑑賞
「ピーター・シスの闇と夢」 2023年4月14日-6月11日 市立伊丹ミュージアム

Happy Children  青が美しい


『三つの金の鍵-魔法のプラハ』  左上の人影が気になる

 共産党統治下のチェコスロヴァキアに生まれ、自由を求めてアメリカに亡命した絵本作家ピーター・シス。影から光へとたどったシスがつむいた作品を紹介。

 冒頭にあった『かべ -鉄のカーテンのむこうに育って』の一場面を映像化したものに度肝を抜かれた。空中を飛ぶ自転車を照らすサーチライト。サーチライトはぐるりと自転車を追い、私を照らす。照らされた私は恐怖を感じ、私の後ろにいるであろう自転車の子は無事に逃げおおせたのだろうかと思った。
 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「芦屋の美術、もうひとつの起点 伊藤継郎」

2023-07-26 23:03:23 | 美術鑑賞
「芦屋の美術、もうひとつの起点 伊藤継郎」 2023年4月15日-7月2日 芦屋市立美術博物館
 芦屋の地で描き続けた伊藤継郎。多くの文化人が集い、絵画教室で多くの人を教えた、芦屋美術の中心であった伊藤継郎と伊藤と交流のあった画家の美術展。


 存じ上げなかったが、結構私の好み。特にスケッチなどの小品が好き。また、「二人の司教」「ギリシャの老人」など茶色の人を描いた絵がいい。親交のあった小磯良平や白髪一雄、吉原治良の作品もあった。


ピエロ うまいなあ


二人の司教 好きな作品


ギリシャの老人 好き


インドの風景 画面下部の白い服を着た多くの人


猫のいる風景 紫が印象的。下部中央に猫ちゃんが二匹。伊藤は、大切に手元に置き、自宅の玄関に飾っていたという。


夕暮れ 雰囲気が好き。写真ではうまく伝わらないけれども。


阿蘇の赤牛 画面いっぱいの牛。迫力。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「修理のあとにエトセトラ」

2023-07-25 14:21:34 | 美術鑑賞
 夫が倒れる前に見ていた美術展。

「修理のあとにエトセトラ」 2023.4.8-5.21 中之島香雪美術館
 「文化財の修理って、何をどうしているの?」修理は、高度な技術と厳選された材料や道具を使い、そこに多くの人の知識と熱意が加わることで成り立つ一大プロジェクト。作品1点1点の文化財的な位置づけを足がかりに、いま成しえる最善の方法を模索しつつ、長い時間をかけて行われる。この展覧会では、修理を終えた所蔵作品およそ 30 件を、修理をとり巻くひと、もの、わざとともに紹介。


上畳本三十六歌仙絵 猿丸太夫


薬師如来立像

 具体的に修理の仕方がわかって興味深かった。失われた絹の部分を補うのに、あえて劣化した絹を使って強度を合わせるなど、「そうなんだー」と思ってしまう。
 巻物などの折れが亀裂へと進まないように帯状の紙で補強する「折り伏せ」という技の映像にビックリ。すごい技だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『弧剣の涯て』『木挽町のあだ討ち』

2023-07-23 22:17:45 | 
 なんか疲れた。どうして、きちんとできないのだろう。ちょっと片付ければすむことをズルズルと後回しにしている。こんなんじゃだめだ。でも、できない。そんなときは、とにかく先ず体を動かすのだ 。
 食卓の上のものを片付ける。網戸が汚いと汚れた空気が入ってきて運気が下がるとなんか聞いたことがあるので、網戸を拭いた。ちょっと気持ちが明るくなったような気がする。

『弧剣の涯て』 木下昌輝 文藝春秋
 かつて戦場で名を馳せた宮本武蔵の剣も、時代遅れの遺物になり果てていた。弟子たちは武蔵を見捨て、道場の存続は危ぶまれている。父親の病いも手伝って、借金まみれの生活をするまでに落ちぶれていた。そのとき武蔵の元に「五霊鬼の呪い」の探索の依頼が舞い込む。この呪いをかけられた者は二年以内に死ぬと言われているが、大御所・徳川家康が「呪い」の標的になったというのだ。家康に呪いをかけた者(=呪詛者)を生け捕りにするのが武蔵の役割だという。
 誰が首謀者なのか???刀の行方もあって、二転三転。戦場の臨場感もバッチリ。おもしろいのだが、複雑で理解が追い付かないところもあった。
 ただ、千姫が大阪城から脱出する場面は、はて???史実は、そうなの???
 
『木挽町のあだ討ち』 永井紗耶子
 ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙はたくさんの人々から賞賛された。二年の後、菊之助の縁者だというひとりの侍が仇討ちの顚末を知りたいと、芝居小屋を訪れるが――。
 直木賞受賞作。文句なしにおもしろかった。最後、そうだったのかと!仇討ちの場面が芝居のように鮮やかだったわけが、きれいに解き明かされる。もういっぺん、読み返したくなる。
 芝居小屋の人たちが、仇討ちの目撃談を語りつつ、自分の人生を語るのが秀逸。不幸な生い立ちや苦労をしてきた人たちの優しさにグっとくる。特に、与三郎さんとほたるさんの話がよかった。ほたるさんの「焼いたらみんな骨になる」がいい。人を見下す奴だって いずれ焼かれて骨になるか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする