石原裕次郎! 渡哲也! そして勝新太郎! なんと丹波哲郎! さらに倉田保昭! おまけに財津一郎!
……倉田さんと財津さん以外は亡くなられてるもんで、これは倉田さんが昭和スーパースターの亡霊たちと香港カラテで闘い、財津さんがいちいち「厳しぃーっ!!」と茶々を入れる新たな『魔界転生』なのかと思いきや、実は1984年の元旦に放映された『西部警察』シリーズ初の2時間スペシャル『燃える勇者たち』(脚本=峯尾基三/監督=小澤啓一) なのでした。
さらに当時の西部署メンバーとして、舘ひろし(ハト)、柴俊夫(大将)、峰竜太(イッペイ)、御木裕(ジョー)、小林昭二(長さん)、そしていつどこで見てもダサい石原良純(ジュン)も参戦! ダサい!
もちろん、ストーリーは今回もあって無いようなもの。政府要人(丹波さん)から密命を受け、木暮課長(裕次郎さん)が凶悪な国際強盗団の黒幕を炙り出すミッションに着手。団長(渡さん)率いる大門軍団の面々は名古屋刑務所へ潜入し、先に逮捕された強盗団メンバーのヘリパイロットを脱獄させるのでした。
そんな感じで序盤は後の『ゴリラ/警視庁捜査第8班』(’89∼90’) を彷彿させるスパイ活劇調アクションで、コンバットスーツに身を包んだ渡さんと舘さんはまんま『ゴリラ』ですw
で、脱獄させたパイロットを巧みに騙し、彼の雇い主が矢野大サーカスでマジシャンをしてる東郷という男(勝新さん)であることを聞き出した団長たちは、三重県の四日市で公演中の矢野大サーカスに潜入し、やたらめったら大物オーラを発する得体の知れない流れ者=ミスター東郷の正体に迫るのでした。
ところが! 強盗団の罠に堕ちて絶体絶命の危機に瀕した大門団長を救ったのは、なんとミスター東郷その人だった! 実は彼も同じ密命を帯びたCIAの潜入捜査官で、しかしわざわざマジシャンに化けなくたって……とは思うんだけど、それはきっと彼の趣味なんでしょうw(『警視ーK』でもトランプばっかやってたし)
で、団長を助けたせいで敵に正体を知られてしまった東郷は、マジックショーのパートナー(大竹かおる)を人質に取られて絶体絶命! そこでついに現れた強盗団の真ボスはなんと、後にかれこれ20年以上も中古ピアノを買い取り続ける財津一郎だった!
さすがは財津さん、人質に取った大竹かおるさんのエッチな唇に、わざわざ親指をなすりつけるアドリブが無意味にいやらしくて笑えますw 単なるオールスターじゃなく、私が大好きな俳優さんばかり登場するキャスティングがホント最高!
しかしキャストの豪華さとは裏腹に、今回はカーチェイスも銃撃戦もやけに控えめ。サーカス会場で繰り広げられるクライマックスアクションに至っては(テント内にいるライオンや熊、象たちがパニックにならないよう)ドンパチ禁止の肉弾戦オンリー!という、これは撃ちまくってナンボの『西部警察』としてはかなりの異色作。地方ロケ編で爆破シーンが無いのも多分シリーズ唯一かと思います。
もしかすると、メインゲストである勝新太郎さんのご要望だったのかも? 自ら主演&監督された『警視ーK』では全13話通して一度たりとも銃撃戦やカーチェイスをやられてなかったですから。
それはきっと、あくまで映画は人間が主役であって欲しいっていう、確固たるポリシーがあってのことでしょう。銃撃戦ではピストルが主役、カーチェイスでは車が主役になっちゃいますから。
その点は私も大賛成で、まあ私の場合はGUNアクションも大好きだったりするんだけど、『リーサル・ウェポン』をずっとマイフェイバリット映画に挙げ続けてるのは、最終的な決着を殴り合いでつけてくれるからなんです。『太陽にほえろ!』をひたすら愛し続けるのも肉体アクションがあくまで基本だから。
『西部警察』で銃撃戦が無いのは確かに寂しくもあるんだけど、そのぶん肉体アクションにたっぷり時間を割いてくれてますから私は大満足! そのために倉田保昭さんや福本清三さん、更にウィリー・ドーシー氏(『俺たちの勲章』で松田優作さんをフルボッコにした黒人さん)まで敵側にいるワケです。
特に渡哲也VS倉田保昭の肉弾戦は迫力満点! 倉田さんの本格カラテに対して渡さんのケンカ殺法も全然負けてない! 団長が最後にショットガンじゃなくナイフで決着をつけるのも、たぶんシリーズ唯一じゃないでしょうか?
え? 日本の警察官が犯人を殺しちゃってクビにならないのかって? 貴様あーっ!! しみったれた事をほざくなぁあああーっ!! 俺はもう明日の撮影には出ねえからなあああああーーっ!! ಠ益ಠ
刑事たちがただ突っ立って謎解きするだけの刑事物しか知らない、世にも哀れな貴様たちに教えてやろう。凶悪犯は、問答無用でぶっ殺す。それが本来の刑事ドラマだ。以上。
悪そうな顔したヤツらを片っ端からぶっ殺し、なんとなく一件落着。どんでん返しも人情話もいっさい不要。石原裕次郎と勝新太郎が最後に笑顔で握手する、ただそれだけでドラマは成立するんです。それしか要らないワケです。
セクシーショットはミスター東郷のマジックパートナーを演じられた大竹かおるさん、当時22歳。8代目クラリオンガールとして注目された’82年に映画『ジェラシー・ゲーム』で女優&歌手デビュー、ヌードグラビアもその時に撮られたものと思われます。