’80年代アイドル特集第9弾、伊藤智恵理さん! 今回レビューする『あぶない刑事』#20が芸能界デビュー作で、翌年放映される連ドラ『キスより簡単』へのレギュラー出演で知名度を獲得、同作の挿入歌で歌手デビューも果たされ、バラエティー番組へも進出。刑事ドラマは他に'92年放映の『刑事貴族3』#11にもゲスト出演されてます。
しかし上画像の智恵理さん、ケバい化粧にふてくされた表情であまり可愛くないんだけど、今回はそういう役柄でこれしか寄りのカットが無かったもんで仕方ありませんm(_ _)m
だけど見応えあるストーリーだし、こないだ記事にした又野誠治主演のVシネマ『凶悪』シリーズを手掛けられた成田裕介さんの監督デビュー作で、仙元誠三さんが撮影を担当された唯一の回でもあり、そんな気合いが画面から伝わって来たのでレビューする事にしました。
『あぶない刑事』は1986年10月から1987年9月にかけて日本テレビ系列で全51話が放送された、セントラル・アーツ制作による東映系の刑事アクションドラマ。
言わずと知れた’80年代を代表するヒット作で、続編の『もっとあぶない刑事』とスペシャルドラマ版、そして7本の劇場版で2016年までシリーズが続くことになります。
横浜・港警察署捜査課の「タカ」こと鷹山敏樹(舘ひろし)と「ユージ」こと大下勇次(柴田恭兵)の最強コンビに、若手の町田 透(仲村トオル)、少年課の真山 薫(浅野温子)を加えた4人が30年間不動のレギュラー。
そして初代捜査課長=近藤役の中条静夫を筆頭に、ベンガル、山西道広、御木裕、秋山武史、衣笠健二、長谷部香苗、藍物房子etc……といった主要キャスト陣。少年課の松村課長(木の実ナナ)はレギュラーみたいな顔してるけど実はTVシリーズにはほんの数回しか出てません。
☆第20話『奪還』(1987.2.15.OA/脚本=大川俊道/監督=成田裕介)
鷹山の宿敵である暴力団=銀星会が仕入れた10億円相当の覚醒剤が盗まれ、港署にも緊張が走ります。
盗んだのは10年前に行方をくらませた元組員の尾崎と見られ、鷹山&大下は尾崎の妻だった奈津子(赤座美代子)に話を聞こうとするんだけど、警察嫌いの奈津子は尋問を拒否。
そして尾崎と奈津子の一人娘である絵里香(伊藤智恵理)が河口湖に遊びに行ってるという情報をキャッチし、彼女が銀星会に狙われる可能性が高いと睨んだ鷹山&大下は現地へ急行! 案の定、銀星会一派の刺客たちに襲撃され、ペンションに立て籠もる羽目に。
ドーナツをコーヒーに漬けて食べる絵里香を見て、大下が言います。
「そんな食い方、誰に教わったんだ」
「トム・クルーズ」
「男の真似するこたぁ無いだろ? 原節子を目指して欲しいな」
当時の感覚でも「古っ!」っていうツッコミが入りそうな、往年の大女優さんのお名前。カッコつけてる割にオッサン丸出しなことを言うのが『あぶデカ』コンビの特徴で、こういう一見ムダな会話遊びが絶妙なスパイスとなって、刑事ドラマのマンネリを打破してくれます。
そこが『あぶない刑事』の新しさで最大の魅力だと思うんだけど、他の番組がこぞって真似してもみんな失敗しちゃったのは、やっぱり舘ひろし&柴田恭兵でないとサマにならないから。奇跡のキャスティングが生んだ奇跡の番組なんですよね。
ところで、タイトスカートじゃ走りにくいからって事で、当時15歳の伊藤智恵理さんがここで着替えシーン&パンスト越しの純白パンティー姿をサービスしてくれます。グラビアでは水着止まりでしたから、これが智恵理さん史上一番のセクシーショットかも? ありがとう!
ここで前半のクライマックス。大下が脱出用のモーターボートを調達しに行ったスキに奇襲を受けた鷹山が、脚を撃たれて負傷! 絵里香を無事に逃がすため、鷹山は宿敵=銀星会に捕まる覚悟を決めます。
「オレは大丈夫だ、先に行ってろ!」
「バカヤロ、先に行ったらオマエ捕まっちまうじゃないかよ!」
「行かなきゃ3人とも捕まるんだ! 迎えはキャデラックで頼むぞ」
トランシーバー越しで躊躇する大下に、鷹山が初めて怒鳴ります。
「バカ野郎、さっさと行けっ!!」
「……ロールスロイスだろうが潜水艦だろうが、絶対迎えに来るからな!」
相棒を置き去りにして逃げるという、男としてこれ以上ない屈辱を味わって寡黙になった大下に、怖いもの知らずの絵里香が当時流行りのツッパリ口調で話し掛けます。
「私が戻ったって、ママは喜ばねえよ。ママはパパの帰りを待ってるんだ、ずっと。ママにはパパが生き甲斐なのさ」
こんな喋り方する女子、テレビにはしょっちゅう出てきたけど、ホントにいたんですかねえ?(私は出逢ったことありません)
「一生懸命やったのに、ガッカリじゃん? 刑事さん」
「少し黙ってろ」
’70年代ならビンタの1発ぐらい飛びそうなとこだけど、時代は変わりつつあります。それでも優作さんなら殴ったかもw
女性に対してはかくもフェミニンだけど、本気で怒ったユージはタカよりも怖い! 銀星会が経営するバーに単身で乗り込んだ大下は、組員たちを片っ端からボッコして恫喝し、最後には腕をへし折ります。
「会長に伝えろ。タカを殺してみろ、テメエも生かしちゃおかねえぞ!」
そして捜査課の刑事部屋に、銀星会の幹部(浜田 晃)から電話が入ります。
「鷹山さんは預かってますよ」
「世話を掛けてすまんな。引き取りに伺おうか?」
近藤課長までちょっと洒落たセリフで返しちゃうのが粋だけど、これも中条静夫さんが演じればこそですよね。二代目課長の小林稔侍さんには似合いません。
銀星会は、覚醒剤を持ってる筈の尾崎と鷹山の身柄交換を要求して来ますが、課長としてはイエスと答えるワケにいきません。
「タカを見捨てるんですか?」
「連中に尾崎を渡しても同じことだ」
「同じこと?」
「鷹山は銀星会に恨まれとる。生きて返すという保証は無いんだ」
「…………」
課長への怒りを露わにして出ていく大下を見て、事務の瞳ちゃんが号泣。たしか大下に惚れてる設定でしたね。
さて、ここで警察嫌いだった筈の尾崎の妻=奈津子が大下を訪ねて来て、尾崎が可愛がってたジョニーという子分の存在を教えてくれます。娘の絵里香を救ってくれたお返しなんでしょう。
「それはどうも」
「お礼なんて言わないで。私は真実が欲しいだけ」
「シャブを奪ったのは尾崎じゃないと、そう信じてるんですね?」
「…………」
奈津子は正しかった。大下がジョニーを優しく拳銃で尋問してるところに襲いかかり、二人もろとも消そうとして来たのは、尾崎ではなく元マルボーの刑事でした。
かつて尾崎を情報屋として使いながら裏切り、銀星会にいられなくしたのがこの刑事で、だから奈津子は警察を信じなくなったのでした。今回も尾崎の仕業と見せかけて覚醒剤を奪ったワケです。
しかしそれにしても、武骨でクラシックなリボルバー拳銃=COLTローマン2インチも、柴田恭兵さんが持つとやたらスタイリッシュに見えちゃうのが凄い!
思えばアクション物の主役たちがリボルバーを愛用する、最後の番組が『あぶない刑事』だったかも知れません。亜流の『ベイシティ刑事』や『あいつはトラブル』あたりからオートマチックが主流となり、やがて鷹山=舘ひろしさんもオートマ拳銃の代表格=COLTガバメントを使うようになっちゃいますから。
閑話休題。マルボー刑事から覚醒剤を押収した大下は、単身で銀星会との取引に臨み、なんとか鷹山を救出するんだけど廃屋に追い詰められます。
援軍を呼んで数十人の兵隊を揃えた銀星会に、たった2人で勝てる見込みはありません。
この展開は完結編の映画『さらばあぶない刑事』によく似てます。原典は言うまでもなく、あのアメリカンニューシネマの傑作西部劇。
「まるで映画のラストシーンみてえだな」
「観た観た。『明日に向って撃て!』だろ? 俺、ロバート・レッドフォードと誕生日一緒なんだぜ」
「俺なんか、ポール・ニューマンと血液型一緒なんだぜ」
「いいなあ。じゃあポール鷹山じゃないか」
「じゃあユージはロバート大下だ」
絶望的な状況でも他愛ないジョークを交わしちゃうのが『あぶデカ』流で、しつこいようだけど舘ひろし&柴田恭兵じゃないと似合わない。『太陽にほえろ!PART2』#02の記事にも書いたけど、あとは寺尾聰さんか藤竜也さんぐらいしかいないでしょう。
「……来るぞ」
「派手にやらかすか!」
だけど今回は完結編じゃないですから、2人が大軍に突っ込む前にパトカー軍団が駆けつけました。
「はい、それまでだ。銃を捨てて大人しくしろ!」
すでに「フラグ」は立ってましたね。近藤課長が部下を見捨てるような発言をした時点で、結末はコレしか考えられません。
「課長、張り切っちゃって」
「血圧上がんなきゃいいけどな」
そこで感激の涙を流すどころか笑いのネタにしちゃうのも『あぶデカ』流というか、’80年代の空気感。そうしてお涙頂戴を「クサい」「寒い」とみんなでバカにしてた筈なのに、’90年代後半の『踊る大捜査線』あたりからまた「泣かせ」至上主義が復活しちゃいました。
のんきな時代に笑いを、暗い時代に涙を求めるのって、普通に考えれば逆のように私は思うけど、そこが人間社会の摩訶不思議で興味深いところです。
「悔しいけど、トム・クルーズよりもカッコいいわ」
厚化粧を落とし、本来の可愛らしさを取り戻した絵里香が駆けつけ、大下に賛辞を贈ります。
「トム・クルーズなんかハナっから眼じゃねえよ。ま、向こうもそう思ってんだろうけどな」
当時から35年以上経った今でも「イケてる男」の例えに使われそうなトム・クルーズ氏もなにげに凄い! 国内でそれに匹敵するのが恭兵さんであり舘さんですよね。
絵里香は、実はアメリカの牧場で働いてる父=尾崎から手紙を貰ってて、彼がもうすぐ帰国するかも知れないことを大下に打ち明けます。
「ママには話したのか?」
「内緒にしてたの」
「どうして?」
「だって……パパが帰って来たら、ママはますます遠い所へ行っちゃうかも知れないでしょ? パパなんか帰って来なくたっていいのよ。パパなんか……」
「素直にならないとな、イイ女にはなれないんだぞ? 正直に話すんだ、ママに」
「…………うん」
要するに淋しくて、構ってもらいたくてツッパってたワケですね。いつの間にやら変なヤンキー言葉も使わなくなってる絵里香なのでした。
「絵里香、ママぐらいイイ女になったらデートしてやるよ」
我々がそんなセリフを言った日にゃあ「いらんわ!」「キモいわ!」で終わっちゃうことでしょう。大下勇次だからこそ、恭兵さんだからこそ言われた女子も笑顔になる。やってられませんw
ラストシーンは何の脈略もなくトランプ遊びに興じる港署の刑事たちと、今回ほとんど活躍しなかった薫さんのアップショットで THE END。浅野温子さん、すでにキャラが崩壊し始めてますw
仲村トオルさんも今回はちょっとしか出番がなく、タカ&ユージの主役コンビにフォーカスを絞った『あぶない刑事』の原点的エピソードと言えましょう。
シリアスとコミカルのバランスもちょうど良い按配で、この辺りから劇場版の2作目『またまたあぶない刑事』までが本当に面白い『あぶデカ』だったと私は思ってます。
そしてゲストの伊藤智恵理さん。さすがにデビュー作だけあって演技は拙いけど、15歳という年齢を考えれば堂々たるもの。爽やかな後味を残してくれて素晴らしかったです。
木の実ナナさんは毎回オープニングに顔は出るのに名前のテロップが抜けてるのがちょっとマヌケでした。劇場版には欠かさず出ておられるんですけどね。
ベイシティ刑事では世良さんがガバで、藤竜也さんは44マグナムの3インチカスタムでした。オート&リボルバーでリーサル・ウェポンを意識してたのかも知れないですね。
おっしゃるように刑事=リボルバーからオートへの移行期だったかもしれません。「ベイシティ…」の藤竜也はガバだった気がします。
関係ありませんが、同級生にカタヤマとユージと言う遅刻常習犯のふたりがいまして、いつも怒鳴られていました。中条静夫に怒鳴られているシーンにかぶって、笑いを堪えるのに苦労しましたw。
刑事もの好きだった我が家のバァちゃんは「あぶ刑事」も観ていまして、浅野温子を気に入っていました。「この娘はいつもバカっぽいけどそうじゃないんだよ」と言っていました。
木の実ナナはオープニングに出て来るので、レギュラーだと思っていましたが…。
『あぶない刑事』はやっぱり恭兵さんがいればこそ。舘さん1人だと単にカッコつけてるだけになっちゃうのを、恭兵さんがシャレに転化してくれるから面白くなったんだと思います。
ほかの似たような番組がうまくいかなかったのも、恭兵さんがいなかったからですよね。ただの二枚目がやってもシャレに転化するのは難しい! ほんと凄い俳優さんです。
しかし今回のレビュー、改めて当時の柴田恭兵さんのカッコよさがズバ抜けてる印象を受けました。
シンプルなローマン2インチしかりゴールドのレパードしかり、恭兵さんが操るだけで小道具も一段とカッコよく見えるんですよねぇ。でもカッコイイだけじゃなく怒りモードの八つ当たり芝居はマジで怖いですし。大下勇次は柴田恭兵の魅力を全開に見せつけた最高の当たり役だったんだなぁと思います。
あ、伊藤智恵理さんの純白パンティは少年時代大変お世話になりました笑
これがデビュー作ってことで、右も左も分からないまま上手く乗せられて脱いじゃったのかも? 当時のアイドルは水着グラビアで「透け」があったりして、事務所のチェックがまだ甘かったり、起用する側も今より強気だったのかも知れませんね。いい時代でしたw
私もツッパリ言葉って聞いたことないです。学校に不良の人はいましたが、普通に女子言葉(の方言)でしゃべってました。
杏子