ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『誇りの報酬』1985~1986

2019-01-12 00:00:08 | 刑事ドラマ HISTORY









 
1981年か82年頃だったと思いますが、TVガイド誌に『俺たちの勲章パート2』製作決定を報じる記事が載ってました。

主演コンビは「勝野 洋&宮内 淳」って、確かに書いてありました。『太陽にほえろ!』のテキサス&ボンであり、リポビタンDのCM「ファイト1発!」初代コンビでもあるお2人です。

勿論『太陽』マニアである私は狂喜乱舞しました。これはもう、ほとんど『太陽』のスピンオフみたいなもんですから、週に2回『太陽』の新作が観られるという、私にとってパラダイスの到来です。

それにしても、松田優作=ハードなバイオレンス刑事、中村雅俊=ソフトなヒューマニズム刑事とカラー分けされた『俺たちの勲章』(’75)のキャラクターを、勝野洋&宮内淳でどう受け継いで行くのか?

両者とも暴力刑事って柄じゃないですから、勝野さんが生真面目な硬派刑事、宮内さんが軽いノリの軟派刑事って感じになるのかな?とか、色々と妄想しながら放映開始を待ちわびたもんです。

しかしその反面、この番組はヒットするんだろうか? 世間の人々は、このコンビが再び刑事を演じる姿を今、果たして観たいだろうか?って、冷静に疑問を抱いてる自分もいました。

そしたらやっぱり、企画は流れちゃいました。ちょうど刑事ドラマのブームが下火になりつつあった時期だし、優作&雅俊が再登板するならともかく、新コンビだと吸引力に欠けると判断されたんじゃないでしょうか?

で、時は流れて1985年秋。幻となった企画は『誇りの報酬』として復活する事になります。中村雅俊&根津甚八のコンビで、制作は日本テレビ&東宝、日曜夜9時の放映でした(全49話)。

『俺たちの勲章』コンビの10年後を描くって事で、当然ながら松田優作さんに出演を打診したものの「しばらく刑事物はやりたくない」って断られたんだそうで、甚八さんは言わば代役ですね。

相方の雅俊さんが、この10年の間に主演ドラマを何本もヒットさせ、当時は人気絶頂期でしたから、優作さん抜きでも数字が見込めると判断されたのでしょう。

『勲章』での雅俊さん(五十嵐刑事)は、あくまで優作さん(中野刑事)と対比され、バランスをとる為に存在するキャラクターでした。だけど『報酬』の雅俊さん(芹沢刑事)は、主役として番組を引っ張る存在でなくちゃいけません。

ゆえにか、芹沢刑事は五十嵐刑事と違って破天荒な、ルールに縛られない『ゆうひが丘の総理大臣』を刑事に置き換えたみたいなキャラに変更されてました。

そして相棒の甚八さん(萩原刑事)は逆に、優作さんが演じた中野刑事よりも落ち着いた、セクシーな大人の男って感じのキャラになってましたね。10年後って設定ですから、理にかなってると思います。

けど、そうなると『勲章』の2人みたいな、激しいぶつかり合いが無くなっちゃいます。ルールに縛られないキャラどうしだし、10年もつき合ってるワケですから、もはや「あうん」の呼吸ですよね。

主役コンビの職場も所轄署から本庁へと格上げされ、色んな地方に派遣されるフォーマットは受け継いだものの、出張先で邪魔者扱いされるような描写はほとんど無くなりました。時代の変化ですよね。捜査の描き方も随分と軽くなりました。

明るいのは良いんだけど、シリアスに物事を捉える事が「ダサい」とされ「食う、寝る、遊ぶ」の軽薄なノリが格好良いとされる’80年代の空気は、本作から緊張感ってものを失わせてたように思います。

だから、このドラマを観て感動したり、何かを考えさせられるような事は、ほとんど無かった気がします。そのせいか各エピソードの内容は、30年振りに観直すまでほとんど忘れてました。

それでも1年続いたワケですから、やっぱり時代の空気にはマッチしてたんでしょうね。この『誇りの報酬』を更に進化させ、軽いノリとダンディズムを徹底的に追究した後番組『あぶない刑事』(’86年~)は、ご存知のとおり大ヒットする事になります。

やがて私もハマる事になる『あぶない刑事』と比較すれば、この『誇りの報酬』に何が足りなかったのかが、よく分かります。月並みな分析だけど、やっぱ中途半端だったんでしょう。いくら軽薄な’80年代と言えども、創ってるのは中年以上の(それも生真面目な東宝の)オジサン達なワケで、軽いノリってヤツがイマイチ身につかず、当時は試行錯誤の時期だったんじゃないでしょうか?

『あぶない刑事』は行き過ぎた軽いノリが社風とも言えるセントラル・アーツ社(&東映)の制作であり、雅俊&甚八コンビだと表現しきれなかったダンディズムを、舘ひろし&柴田恭兵という奇跡のキャスティングで、極限にまで昇華させてくれました。

軽いノリの刑事ドラマがこの時期たくさん創られた中で、それを見事「モノにした」と言えるのは唯一『あぶない刑事』だけだったと私は思ってます。つまり、舘ひろしと柴田恭兵が揃わなければ成立しない。

『誇りの報酬』も、優作さんが出ていればまた違った見所を作り出せたかも知れません。甚八さんも決して悪くはないけど、どうせ軽いノリを目指すなら、私は映画『刑事珍道中』(’80)のコンビ(中村雅俊&勝野 洋)を復活させた方が楽しめたんじゃないかと、個人的には思ってます。

なお、同じ東宝制作の『太陽にほえろ!』にセミレギュラー出演する予定が立ち消えになった、沢口靖子さんが本作に雅俊さんの妹役でレギュラー出演されてます。当時の靖子さん、超絶に可愛いんだけど、芝居は超絶に下手くそでしたw あのキュートな棒読み台詞を、今こそもう一度聴きたい!

ちなみに『勲章』で資料室の人だった柳生 博さんが『報酬』コンビの上司(課長)役で出演されてますが、全く印象に残ってませんw あと、課長秘書として篠ひろ子さんも出ておられますが、警察に秘書なんて存在するんでしょうか?

シリーズ中盤で篠さんが降板し、代わって伊藤 蘭さんが加入してから、彼女も現場でバリバリ活躍して、内容がコンビ物からチーム物へと変化して行きました。

タケカワユキヒデ作曲によるOPテーマも、バラード調からポップなテクノ調に変更され、番組後半は『勲章』の続編である事を意識しない作りになってました。

レギュラーキャストは他に、鈴木ヒロミツ、石橋正次、宮田恭男、堀江しのぶ、といったメンツ。昭和ですねぇ~w

決してつまんなくはないけど、なかなか琴線に触れる事も無い。そんな軽~いノリの’80年代刑事ドラマを代表する作品として、CSのファミリー劇場chあたりで是非とも放映をお願いしたいです。
 

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2 コメント

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昭和〜平成〜新しい年号 (フルーツブラザース)
2019-01-13 15:59:39
昭和〜平成初期の刑事ドラマは遊び心がたくさんあったから楽しめました。シリアスで暗い物から軽すぎて何も残らない物やそのどっちつかずの泣かず飛ばす的なものまで秀作と駄作が沢山ありました。VTR作品やフィルム作品、芝居の上手い役者さんや個性のある大物役者さん、ジャズやヒュージョンを使用したB.G.Mなど映画会社とテレビ局が協力して制作したテレビ映画のジャンルは素晴らしいの一言につきます。平成最後の年になる今年、平成の制作した刑事ドラマを見直すと推理ものとシリアス重視で暗雲たれて重苦しいものなかに熱血、昭和刑事のパロディを取り入れた作品が素晴らしいです。昭和の名作が太陽にほえろ!なら、平成の名作は相棒なんでしょう。

昨今の映像技術は素晴らしいもねですが昭和の映像魂のこもった刑事ドラマは制作スタッフや役者さんの熱意が伝わってきますから。数字で判断されると作品の本質が見落とされていい作品も忘れられていくんだね。寂しいですね。ハリソン君のようなblogは絶対に必要ですね。

16mmフィルムで制作した刑事、探偵物がいい、テレビ映画バカでいい。今後も熱い作品のblog楽しみにしてますよ。
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>フルーツブラザースさん (ハリソン君)
2019-01-13 17:56:14
現在の作品にも現在ならではの良さがありますが、テレビ映画で育って来た我々世代にとっては、やはりフィルムで撮影されたアクションドラマこそが本当の刑事ドラマですよね。

もう二度と新作が観られないテレビ映画の刑事モノを、これからもどんどんレビューしていきたいと思ってます。
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