前回(#459)からいよいよボス(石原裕次郎)が不在となり、スコッチ(沖 雅也)も先んじて戦線離脱。番組始まって以来のスクランブル体制となった七曲署捜査一係の陣頭指揮は、ナンバー2の山さん(露口 茂)、そして西山署長(平田昭彦)が務めます。
第460話『スニーカーよ、どこへゆく』
(1981.6.5.OA/脚本=尾西兼一&小川 英/監督=山本迪夫)
ガソリンスタンドの店主が暴行され、死亡。かねてから被害者と折合いが悪かった、元非行少年の店員=佐藤浩(中西良太)に容疑がかかります。
で、刑事として成長著しいスニーカー(山下真司)がいち早く浩を見つけ、尋問しようとしたら彼が逃げたもんで、緊急逮捕します。
しかし決定的な証拠はなく、警察嫌いの浩はのらりくらりと山さんの追及をかわし、スニーカーを苛立たせます。
確たる根拠もなく浩を犯人と決めつけることに、先輩のドック(神田正輝)やローキー(木之元 亮)は疑問を挟むんだけど、スニーカーは聞く耳を持ちません。
そんなスニーカーが退勤後の帰り道、駅前で署名活動する若者たちと出くわします。彼らは、警察の高圧的な取調べにより自白を強要された、とある殺人容疑者の無実を訴えてるのでした。
で、スニーカーにも署名を求めてくるんだけど、相手が刑事だと知った途端に眼つきが変わっちゃう。彼らにとって「権力の犬」たる警察官は、たとえその事件とは無関係でも憎い、誰より信用ならぬ敵なのでした。
そんな眼で見られたことにスニーカーはショックを受け、ふと、浩を問答無用で逮捕した自分自身を振り返ります。
駅前で貰ったビラには「取調べた刑事たちにとって、そのときの被告は殺人鬼でしかなく、同じ人間ではなかった」と書かれてる。果たしてオレは、浩を同じ人間として見てただろうか?
スニーカーは、浩とチョメチョメ関係だった圭子(平野真理)に会いに行きます。
「佐藤浩が犯人であってもなくても、あいつの事をもっとよく知っておきたいんだ」
真摯にそう訴えるスニーカーに、圭子は浩とチョメチョメするようになったキッカケを打ち明けます。
かつて、色々あって自暴自棄になってた圭子は、走って来た大型トラックに飛び込もうとしたけど、たまたま自転車で通りかかった見知らぬ青年が、身体を張って助けてくれた。それが浩。
競輪選手を目指してた浩は、そのときに足を負傷し、夢を断念する羽目になったのに、いっさい圭子を責めないどころか、彼女にこう言って励ました。
「人生、大事にしろよな」
「オレが尊敬してる先輩刑事も、昔そう言った。人生、大事にしろって……」
そう、かつて荒れてたスニーカーが刑事になろうと決めたのは、殉職した田口刑事=ボン(宮内 淳)に言われた、その一言がキッカケでした。
「あの人……浩を逮捕したかな……」
人を騙すくらいなら騙された方がマシと言う、ボンみたいな刑事になりたかった筈なのに、今のスニーカーは……
「オレはカッとなった……ただカッとなって、権力を振るったんだ」
まぁ、ボンもかなり短気だったから実は一緒かも知れないけどw、それは知らぬが仏。とにかく今の自分に絶望したスニーカーは、刑事を辞める決意を固めます。
これで3度目。同じような壁にぶち当たっても、先輩刑事たちはそんなすぐには辞めなかった筈。この辺の描写にも時代の変化を感じます。
で、鎧であると同時に鎖でもあった国家権力を捨て、解放されたスニーカーは、こっそり浩を釈放して行動を共にするのでした。
「なんのマネだよ、オレは釈放されたんだろ?」
「釈放はオレの独断だ。厳密に言うとお前は脱走したことになる」
「はあっ?」
「それにオレは脱走幇助。オレたちは共犯なんだ」
浩が犯人じゃないなら、あの時なぜ逃げたのか? なぜ無実を晴らそうとしないのか? 彼が送検される前にそれを確かめたいスニーカーだけど、勝手に脱走犯にされた本人はたまったもんじゃありませんw
どうせ何かの罠だろう、芝居だろうと、浩はスニーカーを信じません。学校や職場でさんざん悪事の濡れ衣を着せられて来たトラウマで、権力を持った人間には「虫酸が走る」と彼は言う。
「オレもそう思った。自分に虫酸が走ったんだ」
ボンと出逢い、人間的で素晴らしい仕事だと思って刑事になったスニーカー。
「だけど2年経って気がついてみたら、容疑者追っかけて手錠をぶち込むのに無我夢中で……もうそれしか無くなってた」
「…………」
「結局、デカはオレの柄じゃなかったんだよな。もう人を追っかけ回すことも無いと思うとホッとするよ」
「……本気なのかよ? オレが本当に犯人だったらどうすんだよ?」
スニーカーは、浩のチョメチョメパートナーから話を聞いたことを打ち明けます。
「お前は彼女に生きることを教えた。自分の一生の夢を犠牲にしてな。そんなヤツが人を殺すワケがないんだよ」
「そんな浪花節を信じるっつーの?」
「確かに浪花節かも知れん。だがオレはそう信じた。信じたかったんだ」
「はっ、青春感動路線かよ。1人でやってろ、バカ」
さすがは後に熱血教師役でブレイクするスニーカー。1つの林檎を2人で噛り合ったり、見つけて追ってくる先輩刑事から一緒に逃げたりして、まさに青春ドラマの手法で浩の心を開かせ、ついに真相を聞き出します。
浩には、修(中村好男)という学生時代からの親友がいて、お互いどんな時でも味方になると誓い合ってた。
で、今回の事件で殺されたGSの店主が、浩を一方的に解雇して退職金も払わなかったことを知り、修はひどく憤慨していた。
浩が逃げたのも無実を主張しなかったのも、修が犯人かも知れないと直感したから。案の定、浩との密会場所に現れた修は「殺す気はなかったんだ」と犯行を認めます。
「修! 自首するんだ!」
そう叫んで現れたスニーカーを見て、警察に「売られた」と誤解した修は、浩にナイフを向けます。
「解らないのか、修! お前を庇おうとした浩の気持ちが、お前には解らないのかっ!?」
命懸けで浩を守り、身体ごと修にぶつかって行くスニーカーを見て、泣き虫先生の誕生を予感せずにいられない浩なのでした。
修が逮捕され、事件は解決したものの、拘留中の容疑者を脱走させたスニーカーの罪は、リアルに考えれば懲戒免職に値するでしょう。
それをスーパースターのオーラだけで食い止めてくれるボスが不在で、西山署長もどう処理してよいやら困り顔。何よりスニーカー本人が自分のやったことを許せてない。
そんな時、無罪放免となった浩が一係室を訪ねて来て、スニーカーに言います。
「刑事、辞めないでくんねえか?」
「…………」
「辞めんなよ。……頼む」
「……ムリ言うなよ。オレにはもう、人を逮捕するのが商売のデカって仕事は……」
そんな会話を、あのいぶし銀のマダムキラーが立ち聞きしてないワケがありません。
「それなら辞めろ。だがな、みんなが嫌がってたら、そのツラい仕事をいったい誰がやるんだ?」
かつてボンが辞表を出したときも、ボスがオーラを撒き散らしながら「辞めたいならオレは止めん」とゲキを飛ばしました。知らず知らず、尊敬する先輩刑事の轍を踏みながら、一歩一歩、着実に成長するスニーカーなのでした。
実に『太陽にほえろ!』らしい一編で、中西良太さん(ハマり役!)の好演も相まって見応えある作品になりました。
#442『引金に指はかけない』の片桐竜次さん、#447『侵入者』の志賀勝さんに続いて、今回もマッドポリスのメンバーが良い仕事をしてくれました。
加えて今回は、ゴリさん(竜 雷太)から聞き込みを受ける工場員役で、デビュー前の渡辺徹さんがテスト出演!
実に自然な演技で、ラガー刑事になってからよりも上手い!w
ラガーのオーバーアクションは、やたら「まっすぐな芝居」にこだわる『太陽〜』演出陣の注文を、徹さんが素直に聞きすぎた結果であることがよく分かりますw
この時から本格デビューまでの間に徹さんは緊張しすぎて、ガリガリに痩せて登場しちゃうもんだから、よけいに後の肥満ぶりが際立つんですよね。イイ人なんですよホントにw
そして今回のセクシーショットは、圭子役でゲスト出演された平野真理さん(のちに香野麻里と改名)。以前レビューした#445『人質を返せ!』に続く2度目のご登場につき、今回プロフィールは割愛します。
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