ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#708

2019-01-23 12:00:04 | 刑事ドラマ'80年代









 
太宰 準=DJ刑事(西山浩司)の数少ない主演作。つまり橘警部(渡 哲也)が代理ボスを務めた時期の作品です。

山さん(露口 茂)が殉職し、ボス(石原裕次郎)が長期離脱してから、橘警部とDJが同時加入するまでの期間は本当に寂しかった。まるで違う番組を観てるようでした。

渡さんと裕次郎さんとじゃキャラが違うし、西山さんもかなり異色なんだけど、それでも頼りになるボスがいて、活きのいい新米刑事がいてくれると落ち着きます。ちゃんと『太陽にほえろ!』を観てる気分になれるんですよね。


☆第708話『撃て!愛を』(1986.8.29.OA/脚本=古内一成&小川 英/監督=高瀬昌弘)

タバコ屋の主人が改造拳銃で射殺され、いち早く現場に駆けつけたDJとトシさん(地井武男)が、挙動不審な男=前島(小野進也)に職務質問し、怪しいと睨んで連行します。

凶器の拳銃は所持していないものの、袖口に硝煙反応がある上、被害者と揉め事を起こした過去もあり、しかも顔がロッキー(木之元 亮)を殺した犯人そっくりなもんで、刑事たちは前島がやったに違いないと断定しますw

凶器の拳銃さえ見つかれば、恐らく前島の犯行を立証出来る。懸命に捜索する中、DJは緑地公園で風景画を描く画家の卵=祥子(斉藤慶子)と仲良くなります。

ところが2日後、同じ場所で再会した祥子の様子がおかしい。根拠は無いけれど、先日に会った祥子とは何かが違うと直感したDJに、橘警部は渋い声で「デカの勘ってのはそういうもんだ。気が済むまでやってみろ」とゲキを飛ばします。

折しも、一旦釈放し、泳がせていた前島が、緑地公園のある場所を掘り起こし始めたもんだから、ブルース(又野誠治)とマイコン(石原良純=笑)に再び取り押さえられます。

ところが、そこに隠してあったに違いない拳銃が、いくら探しても見つからない。その場所は、祥子が風景画を描いていた場所のすぐ近くなのでした。

この2日の間に、祥子が拳銃を見つけて持ち帰ったのだとすれば、全ての辻褄が合う。祥子は拳銃なんか知らないと言うんだけど、ベテランのトシさんから見ても彼女の供述には嘘がある。

たぶん間違いなく、前島の拳銃は祥子が持ってる。けれど何故、彼女が拳銃を隠し持つ必要があるのか?

捜査の結果、祥子が妻子ある画廊主の男=木村(柴田てる彦)と不倫関係にあることが判明します。しかも木村は、妻と離婚するつもりだの有名画家に祥子の絵を紹介するだのと、嘘八百を並べて3年間も彼女を弄んでいた!

怒りに駈られたDJは、祥子の目の前で木村を糾弾し、トシさんに叱られます。

「お前、彼女が拳銃を持ってることを忘れたのか!?」

恐らく祥子は、木村の嘘に薄々気づいていた。拳銃は、それを確信した時に使うつもりであり、DJのやったことは彼女の背中を押したも同然の行為。

「忘れた方がいいんじゃないですか? 悪い夢だと思って」

DJは何とか祥子を説得しようとしますが、女の恨みはそう簡単には消せません。

「夢と思うには、3年間は長過ぎました」

確かに、年頃の祥子にとってはあまりに重い3年であり、画家としてのプライドや将来まで踏みにじられた悔しさは、悪い夢で済まされるもんじゃありません。

深く反省し、落ち込むDJに、橘警部は渋い声でこう言います。

「気が済むまでやれと言った筈だ。今も、同じことしか言わん。ただし、後で後悔するようなことだけはするな。人間としても、デカとしてもだ」

再起したDJは必死に拳銃を探し回り、そしてある賭けに出ます。祥子の張り込みを1人で引き受け、あろうことか、わざと彼女を逃がしてしまう!

神社の軒先に埋めておいた拳銃を持ち出した祥子は、ついに木村を追い詰め、銃口を向けます。

木村は必死に謝罪するんだけど、祥子はひるみません。そこにDJが現れます。やはり『太陽にほえろ!』の伝統として、如何なる事情があろうとも復讐は阻止しなければならない!

……と思いきや、DJはこう叫ぶのでした。

「撃っちゃえ祥子さん! こんなヤツは死んだ方がいいんだ!」

「ききききき、君っ!?」

うろたえまくる木村に、祥子は拳銃のトリガーを引きます。ところが至近距離なのに、2発、3発と撃っても弾丸は命中しない。木村は腰を抜かし、ぶざまにへたり込みます。

「どうして……」

DJは、祥子が掘り起こすよりも先に神社で拳銃を発見し、弾丸をこっそり空砲と取り替えておいたのでした。

「なぜ、こんなこと……」

「オレ……僕は……」

遅れて駆けつけた橘警部が、渋い声で代弁します。

「太宰は、あなたに撃たせたかったんですよ。撃って、こんなことは終わりにさせたかったんです」

現実的には、いくら空砲とは言え撃たせた以上、DJも橘も始末書どころじゃ済まないでしょうけど、そんなリアリティーはどーでもいいんです。そもそも刑事が常に拳銃を携帯してる時点で嘘なんだから。

それより何より大事なのは、こんな時にどうすれば彼女の心を救済出来るのか? DJという男ならどんな方法を選択するのか?っていうこと。

現実に有り得るかどうかなんかに囚われてたら、「撃っちゃえ!」なんて台詞は絶対に書けません。

ここが、昭和の刑事ドラマと現在の刑事ドラマとの、最大の違いだと私は思います。どっちの方が面白くて、我々のハートに強く響いて来るか? 言うまでもありません。

まぁしかし、いくら昭和とは言えDJのやり方はメチャクチャですw 七曲署の歴代刑事の中でも、こんな事をやってのけられるのは恐らく、初代新人刑事のマカロニ(萩原健一)かボギー(世良公則)ぐらい。

つまり、DJというキャラクターは異色に見えて、実は『太陽にほえろ!』原点回帰を担う存在だった。番組は本来、まだまだ続く予定だったんですよね。

ところで余談ですが、前回レビューした第703話『加奈子』も同じように若い女性の恋愛が描かれ、しかも悪い男に女性が騙されるパターンでした。脚本が同じ古内一成さんって事もあるでしょうけど、番組後期になってこういうエピソードが増えて来たのも事実。

『相棒』みたいな話だ、とも前回書きました。つまり『太陽にほえろ!』後期='80年代から、TVドラマがどちらかと言えば女性視聴者の目線に寄り添うようになり、現在まで続いてる。

それまでは逆に、男が女に騙される話の方が圧倒的に多かった。やっぱり1980年辺りを境に、日本人の価値観が大きく変わったんですよね。そんな気がしてなりません。

ゲストの斉藤慶子さんは、当時26歳。JAL沖縄キャンペーンガール出身でCM、グラビア、バラエティー番組でも活躍し、女優としても数々の映画やドラマに出演。特に私の記憶に残るのは、渡哲也さんと一緒にレギュラーを務められた刑事ドラマ『私鉄沿線97分署』で、同じ国際放映スタジオの撮影だし、今回のゲスト出演はその繋がり(たぶん97分署が終了してすぐ)かと思われます。
 
 


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