わずか16話で主役の舘ひろしとヒロインの黒木瞳が降板しちゃった『刑事貴族』ですが、新たに郷ひろみを主役に迎えて仕切り直す運びとなりました。(日本テレビ系列・金曜夜8時放映、’90年10月~’91年3月、全21話)
と同時に高樹沙耶(現・益戸育江)と宍戸 開もレギュラーに加わり、それまで舘ひろしの個性を前面に押し出すハードボイルド・タッチだった世界観を、やや明るめのトーンにシフトして行く事にもなりました。
さらに、一応ヒロミGo!を中心としながら、他のレギュラー刑事達も交代で主役を務める、より『太陽にほえろ!』に近いフォーマットへの先祖帰りも図られます。
しかも制作が『太陽~』と同じ日テレ&東宝でメインスタッフも同じですから、ストレートに『太陽~』の名エピソードをリメイクした回もいくつかありました。
(※『太陽~』の#32『ボスを殺しに来た女』が『貴族』の#26『宮本課長の災難』に、#36『危険な約束』が#31『刑事たちの忙しい夜』に、#402『島刑事よ、安らかに』が#36『殺人ビデオへの招待』に)
たぶん、ひろし編が好評だったのを受けて、番組を長期継続型のフォーマットにシフトする目的と、ひろしに比べてひろみは主役として弱いと判断しての、ある意味「テコ入れ」だったんじゃないでしょうか?
ひろみ推しの方には申し訳ないのですが、歌手としてはあんなに強いオーラを発するヒロミGo!なのに、役者としては……こと刑事物の主役としては、驚くほど凡庸で物足りないと私は感じてましたm(_ _)m
なぜ私は、ヒロミGo!を物足りなく感じたのか? 逆に、私の胸を踊らせてくれる刑事役アクターの条件って何なのか? 最近のCS放映を観ながら考えた結論として、2つのポイントが浮かび上がりました。
まず1つ目は「ユーモア」。私にとって、これはかなり重要なポイントです。『太陽にほえろ!』の中で私が特に好きだったゴリさん(竜 雷太)やボン(宮内 淳)、ドック(神田正輝)らに共通するのはこれなんですよね。二枚目一辺倒じゃ駄目なんです。
ヒロミGo!扮する風間刑事にユーモアが無かったワケじゃないけど、私を笑わせるには至りませんでした。(それにしても刑事ドラマの世界は、伊達とか風間って苗字がやたら多い)
ヒロミGo!はマジメ過ぎるんですね。近年はお笑いの人らにイジられる事で面白さを醸し出してますが、それは上手にツッコミを入れてくれる相手がいればこそで、ご本人にユーモアのセンスがあるワケじゃない。
2つ目の条件は「殺気」です。この刑事を怒らせるとヤバイ、下手したら殺されるかも?って感じさせる位の殺気が、ヒロミGo!には有りません。いわゆる肉食系ではなく草食系なんですね。だから拳銃も似合わない。
風間刑事はFBIからリターンして来た男って設定で、アメリカで何人も仲間を殺された経験から「撃たれる前に撃つ」が信条の、かなり『太陽~』のスコッチ(沖 雅也)に近いハードな人物として設定されてるのに、犯人をぶっ殺しそうなヤバいオーラが全然無いもんだから、見ててちっともハラハラしないんですよね。
要するに、迫力がない。ダンスは上手なクセにアクション(殺陣や銃さばき)にキレが無いから、ちっとも強そうに見えない。怒らせるとヤバイ感じが全然しないのが、私にはすこぶる物足りないです。沖さんのスコッチ(特に初期)は本当にヤバそうでしたからねw
前任の舘さんには殺気が、後任の水谷 豊さんにはユーモアが備わってたけど、郷さんはどっちも足りない。その分「華」があるから、女性視聴者にはアピールするのかも知れないけど、私には通じませんからw
萩原健一、松田優作、そしてクリント・イーストウッドやメル・ギブソンといったアクター達が演じた刑事キャラが伝説になったのは、いずれもユーモアと殺気を併せ持ってたからじゃないかと私は思ってます。『あぶない刑事』のコンビが魅力的なのも、舘ひろし=殺気、柴田恭兵=ユーモアの組み合わせだったからじゃないでしょうか。
もっと端的に言えば、ヒロミGo!には「毒」が足りない。笑いに毒は欠かせないし、殺気は毒そのものですから、毒というキーワードで繋がってるんですよね。健康食品だけじゃ物足りない、やっぱジャンキーな食べ物が欲しくなっちゃうワケです。
じゃあ、毒が足りない郷さんが主役の『刑事貴族』はつまんないかと言えば、決してそんな事はありません。なにせ『太陽にほえろ!』のスタッフによる作品ですから、クオリティーは高いんです。
だからこそ、もうちょい毒があればいいのになあって、欲が出ちゃうんですね。同じ『太陽~』でも優しい殿下(小野寺 昭)が主役の回より、怖いスコッチが主役の回の方が(私にとっては)数倍面白かったですから。
高樹沙耶さん扮する青木刑事も、男勝りのフェミニストっていうありがちなキャラで、刑事にあるまじきフェロモンが妙に新鮮だった黒木 瞳さんに比べると、やっぱ面白みに欠けるんですよね。
収穫だったのは宍戸 開くん(村木刑事)で、体育会系のキャラながら天然のトボケた味わい(父親譲り?)があって、ユーモアセンスの無いヒロミGo!を何気にカバーしてくれてました。
だけど一番目立ってたのは、やっぱり布施 博さん(泉刑事)じゃないでしょうか。ヒロミGo!のキャラが弱い分、若手のリーダーとして番組を背負う比重が大きくなるし、主役エピソードの数も他のメンバーより多かった印象があります。
フッくん(岩田刑事)は後輩が出来ても相変わらずでしたね。例によってマイコン刑事扱いでw、最終回に至っては序盤であっけなく爆死ですからね。それも、ちょっと失笑を誘いかねないマヌケな最期でした。
『太陽~』スタッフは裏番組だった『金八先生』シリーズに恨みがありますから、もしかすると仕返しの為にキャスティングしたのかも?w(フッくん@シブがき隊のデビューは『2年B組仙八先生』でした)
そんなワケで、郷ひろみ編のラストでフッくんが殉職、その仇を討った布施さんは転勤、ヒロミGo!も退職という形で番組を去り、『刑事貴族』第1シリーズは幕を下ろしたのでした。
クドカンさんや長渕剛など、好きじゃないタレントさんに全ての責任を押し付けるという、このブログ恒例のギャグなのですが、書くタイミングを間違えたみたいですm(__)m