
顧客に役立つサービスを売るのが営業です。
わが社は、使う人の身になって仕事をすると、社是にされています。
それは、長く営業をやっていて、初めてできることかもしれません。
多くの営業は、顧客から注文を受けて仕事をします。
仕事がくるであろうと予測を立てて、製造をします。
営業の姿勢で、聞くが6分話すが4分の配分は、大きく崩れています。
顧客の話を聞くこともなく、自社で開発した新製品や新技術を話されて行きます。
自分の立場が優先されるのです。競争に勝ち、売れれば良いのです
ある時、顧客は空調機を買いました。
総動力80Kwのモーターはインバーター制御されていました。
高調波を規格以上、出すことが予想されました。
インバーター制御は、交流の位相(交流の波をずらす)を制御して回転数を変えます。
電力会社(東電など)から供給された電源に位相による異なる電流を逆流させることがあります。
これが、ノイズとなってテレビの画像を乱したり、各種センサー(トイレ、自動ドアなど)の
誤動作となります。
しかし、顧客が必要ないと判断しました。
営業は、顧客の判断だから対策無用として売りました。
後に、顧客に再度確かめられた時に再計算し、「必要」の回答と共に対策費の追加を要求しました。
眼鏡屋さんで、特価セールスをやっていました。
圧縮レンズの新製品を売り出しです。同時にフレームの特価セールスも実施しました。
顧客は、特価の圧縮レンズとフレームを注文しました。
後に、レンズはたびたび外れるようになりました。
顧客は、三か月後にレンズを落として割ってしまいました。
レンズを買い替えに、売ってくれた眼鏡屋さんに行きました。
このフレームは、細くてこの圧縮レンズの厚みに耐えられないことが分りました。
眼鏡屋さんは、フレームの買い替えを勧めました。
顧客は納得がいきません。なぜ売る時にその(相性が悪い)ことを教えてくれなかったのか。
売る人は、知っていたのか知らなかったのか判断が付かない二つの例をあげました。
少なくとも顧客は、明らかに知識不足です。
これは、顧客に役立っていないのです。
なぜ、売る前に対策が必要だと言い切らなかったのでしょう。
冷凍機の冷媒が漏れる事故が頻発しました。
その度に、便利屋のように冷媒充填をやるサービス業者がいました。
休日返上で対応しました。顧客には便利な業者でした。
業者も、売り上げが上がるので上客でした。
この業者は、いつまでも配管の手直し(漏れ対策)を顧客に強く勧めないのでした。
話を聞くとは、相手の話を鵜呑みにすることではないはずです。
話すとは、自分勝手な話をすることではないのです。
話を充分理解するには、会談の多くを聞くことに集中することを言います。
話すとは、プロフェッショナルとして顧客にベストである話をすることにあるのです。
経験が浅い営業は、言いたいことを話し、顧客の質問は後で回答しますと帰ります。
営業は、会社の看板を背負って商売をしています。
単なる御用聞きではないのです。
その場で、考えられるベストソリューションを、都度話さなければなりません。
会談で出て来た顧客の疑問に、知ってる限りの知識と経験で解答しなければならないのです。
顧客の無知をほったらかしで、商売をすべきではないのです。
その場で解決しないで、多くの質問を社内に持ち帰ることは会社の負担(または混乱)となるのです。
真髄だけを持ち帰って相談すればよいのです。
それには良く聞き、良く話さなければならないのです。
営業が見積もりをし、受注率は5%とします。
ほとんどが負けてしまうのです。
せっかく提案したソリューションがライバルの他社に流れてしまいます。
やきもちを焼くようになります。無駄骨が多くなり社内でも相手にしてくれなくなります。
まったく逆の発想で取り組むとします。
最初から、5%と覚悟をすることから始めます。
あとの95%は自分の勉強と考えるのです。
95%の事例と付き合えることに感謝するのです。
滅多に見せてくれない工場の内部が見られるのです。
その度に、死に物狂いで勉強をさせてくれるのです。
提案をしなくても、会社訪問は続きます。
20社回っても1社くらいしか確実な注文はくれないのです。
歩くだけではだめなのです。
工場を見せていただくことで、会社内で検討することで確実にスキルアップできるのです。
自らチャンスを放棄する必要はないのです。
こうすることで、目が肥えてきて顧客のボトルネックも見えてくるようになるし、
いろんな業態にも対応できるようになります。
一番良いことは、人を見る目が養われることになるのです。
また、いつもよくやってくれるとチャンスが増えていくのです。
その情熱に応えてくれる顧客と信頼関係ができるのです。
聞く耳持たぬ顧客とは、世間話で帰ってくればよいのです。
営業は、エンディングストーリーが描けなければなりません。
仕事の結末まで覚悟した活動の始まりでなければならないのです。
話を持ちかえれば後は技術がやると言うのでは、行き当たりばったりになってしまうのです。
ある商社マンが見たアフリカ人は靴を履いていませんでした。
靴が売れないと判断するのか、これは商売のチャンスだと判断するのか。
前者は賢い選択です。次のチャンスに向かえば良いのです。
後者は、靴文化を伝える覚悟が必要であり、いずれ友達になれるでしょう。
私は、後者の営業を勧めます。
そしてこんな営業からものを買いたいと思うのです。
冒頭の絵は、昭和記念公園で見た晩秋の風景でした。
コスモスが鮮やかに咲いていました。
山の向こうまでコスモスでした。
2015年11月23日