地球にあしあと

地球の色々なところに足跡をつけてきました。

メトロマニラ観光

2011年04月21日 | Weblog
東南アジア唯一のキリスト教国フィリピンでは、今週はHoly Weekでほとんどの会社やお店が閉まっている。
本日、4月21日はHoly Thursday、22日はGood Fridayである。
いわゆるイースターホリデーなのだが、特にEasterという言葉は聞かず、Holy Weekと言う言葉が飛び交っていた。

マニラに来て2か月ほど経つが、まともに観光をしたことがないので、この機会に日本人のガイドによるメトロマニラ観光ツアーに参加してみた。
メトロマニラとは、マニラ市、マカティ市、ケソン市などいくつかの市の集合体で成るいわゆる首都圏である。
ガイドをしてくれたのは、同じ職場のフィリピン人と日本人のハーフの方のお母さんだ。
だから安心。

フィリピンと言えばセブ島やパラワン諸島などのような、ビーチリゾートが有名で、マニラ首都圏というとさほど見どころはない(と思う)。
とりあえず今日は基本中の基本コースを回ってもらうことに。



朝9時にバンでホテルを出発。
普段は1日中渋滞しているマニラだが、今日は不気味なほど空いており、車がスイスイ進む。
さしずめ日本での元旦の朝と言った感じか。

車の中で「カバンは前で持つように。お土産売りが寄ってくるけど、関心を示すとしつこくついてくるので、いらないならはっきり意思表示すること。大通りを見る限り日本とあまり変わらない印象だけど、一本道を外れると日本人には想像もつかない世界が広がっているから気を付けること」などなど注意事項。
分かっちゃいたけど、あらためて注意されると気が引き締まる。
なんてったって治安悪い国だからね。


ここはほんの一握りの大富豪と大多数の貧困層で成り立つ国。
とにかく貧富の差が大きすぎるのだ。
普段通勤の際にかなりローカルなエリアを通り抜けるので、大体の様子は見ているが、本当のスラムには足を踏み入れたことがない。
っていうか、踏み入れるべきではない。


国民性として、「宵越しの金は持たない」主義なので、貯金はない。
貧困層は病気になっても治療費が出せない。
市が運営する病院では診察は無料でも薬は有料だ。
薬が買えない貧困層は、病気になれば死ぬしか道は残されていない。



消防署の前を通りかかった時、ガイドさんの説明によると、「この国の消防署は金持ちの家が火事になるとすぐに駆けつけて消火してくれるけど、スラム街などでの火事には対応が遅い。だから消防車が走っているのを見たとき、その走り方を見て金持ちの家の火事なのか貧乏人の家の火事なのかが分かる」とのこと。
う~ん、あくまでも露骨だ。



さて、最初にやってきたのは、フィリピン人憩いの場、リサール公園。
スペイン人の悪政から市民を救ったという英雄、ホセ・リサールの銅像が立つ、とてもきれいに整備された公園。





銅像の前には2人の衛兵。
銅像には近づけない。



衛兵さんが立っているあたり、ハノイのホーチミン廟を思い出す。



リサール公園のそばには、一時期日本軍が司令部を置いていたというマニラホテル。




その前の道をカレッサ(馬車)が通り過ぎる。




カレッサは下町では庶民の足、観光地では観光客を乗せる用途で使われている。
値段はちょっと高めらしい。




次にやってきたのは、スペイン統治時代に作られた、城塞に囲まれたイントラムロスというエリア。
元々は城壁の周りは皇居と同じくお堀が張り巡らされていたようだが、今はミニゴルフコースが作られたりもしている。

サンチャゴ要塞(Fort Santiago)の中に入る。
入場料は75ペソ(約150円)。
熱帯らしく、ヤシの木などが生い茂る。






マンゴーなどの実もなっている。
基本的にフィリピンでは、木になっているフルーツは取り放題だ。
公共の場にある木はもちろんのこと、他人の所有物である木のフルーツをもぎ取るのも基本オッケー。




ここにもカレッサあり。




園内をカレッサが結構な速さで次々通り過ぎる。
歩いていると後ろから走ってきたカレッサに轢かれそうになるので、あわてて歩道に上がる。



残念ながら博物館は本日休館している。
「モールも閉まってるし、せっかく観光客が来るんだから開けとけばいいのに」とガイドさん。
でもこのHoly Weekは、博物館で働く人たちも休暇を取りたいんだよね。

ちなみにフィリピンでは、公共施設の休館などは突然決まるのが常だ。
あらかじめ予定を発表しておくという習慣はなく、昨日は開いてたのに今日は定休日じゃないのに閉まってるとか、道路にしても午前は通れたのに午後はいきなり通行止めということもある。




サンチャゴ要塞の奥へと続く門。
ここも一時、日本軍が占拠していたという。




お堀はマニラ湾へ注ぐパッシグ川につながっている。




門の入り口が小さいのは、お堀がなく陸続きだった頃に、アメリカ軍の大きな戦車が入ってこれないようにわざと小さく作ったとのこと。







中から門の外へと続く足跡は、ホセ・リサールがスペイン軍により処刑されるために連行された時の足跡を示している。




歩幅が小さいのは、殺されるための行進だったからか。


スペイン占領時代の罪人は、処刑の際背中から撃たれたという。
が、リサールは「自分はやましいことはしていない」と、撃たれる瞬間に身をひるがえして正面から撃たれたそうだ。




サンチャゴ要塞の中には水牢がある。
マニラ湾の満潮時に牢に水が入り込み、捕虜を水死させるのだ。








日本軍占領時に数多くのアメリカ人とフィリピン人がこの水牢で犠牲になったという。
ポルトガルのリスボンにも水牢があったなあ。
結構世界中で満潮を利用した水牢というのが作られていたんだろうなあ。



パッシグ川の向こう側には、高層ビル群。






橋が架かっている付近にはスラムらしきものが見える。
スラムは水場のそばに形成される。





階段を上っていくとさらに廃墟の後。







そしてなぜかチャップリンにしか見えないホセ・リサールの像が、正面玄関でもない場所に置かれている。



シュールだ。



しかし彼は小柄だけどモテモテの男性だったらしく、日本に行った時には日本人の愛人まで作っている。
「おせいさん」という名前の愛人の肖像画が博物館の中にあるらしいが、見られなかったのが残念だ。




博物館のそばの廃墟と化した建物には猫が住み着いている。
お母さん猫のおっぱいを吸う子猫がかわいかった。




ここにもホセ・リサール像。





サンチャゴ要塞を出ると寄ってきたお土産売りの女の子たちは、結構流暢な日本語をしゃべっていた。
「オミヤゲ、ヤスイヨー!」「イラナイノー?」





次にマニラ大聖堂を訪問。






Holy Weekなので、多くのカトリック信者が礼拝に訪れている。
観光客もあいまって、かなりの混雑。




カトリックの教会や大聖堂は、去年スペインで嫌と言うほど見ているが、ちょっと懐かしい気がした。
スペインの時にしていたように、キャンドルを買って火をつけ、募金箱にお金を入れた。





カトリックなのでマリア像が多いのだが、ここでは十字架にはり付けられたキリスト像も多く目につく。
カトリックと言っても細かくセクトが分かれているからかな?





ん?これはまるでチベット仏教の五体投地。
スペインの教会では見かけなかった、フィリピン独特のお祈り方法か??






教会の周りは混んでいるので、徒歩にて世界遺産のサン・オウガスチン教会へと移動。
出店が並んでいてお祭り気分。








Holy Weekの間はお肉を食べてはいけないらしいが、思いっきりお肉を焼く屋台がある。



このイントラムロスだけはスペインの雰囲気。
新しく建物を建てたり修理する際も、スペイン風でないと許可が下りないらしい。




このエリアだけは長いことスペイン語が話されており、今もその名残が根強い。
ガイドさんの話によると30年ほど前は学校でスペイン語が必修となっており、ホセ・リサールが詠んだスペイン語の詩を暗唱できなければ単位が取れなかったそうだ。


サン・オウガスチン教会の向かいにはカーサ・マニラ博物館というのがあり、スペイン統治時代の特権階級の暮らしぶりが再現されているという。
中の豪華な調度品などはイメルダ・マルコス夫人の寄付だとか。
残念ながら、ここも本日は休館。



こちらがサン・オウガスチン教会。
土台が舟形設計になっているため、度重なる地震にも耐えたという。







まずは教会のすぐ隣の博物館に入ってみた。
入場料100ペソ(約200円)。

この中には教会の信者たちによって寄付された数々の骨董品があるらしい。

スペインで散々見た、宗教画。





地震で落下してしまった鐘は、もう元の位置へ戻せずここに鎮座。



カミーノで出会ったベル・フリークのフランス人を思い出すなあ。



エンジェルの銅像たち。








通路には数々の油絵があるが、フィリピンでは気温が40度を超えることもあり、油絵の具が溶け出してしまうので、砂などを混ぜて溶けないようにしてあるらしい。






さらに奥へと進む。







展示品の中には象牙で見事に彫り上げられたマリア像や、きらびやかな王冠など様々な物があり、骨董品好きにはたまらない場所と言える。
また、スペインがフィリピンを発見した時の歴史などを展示した部屋もあった。

そこで「サンティアゴ・デ・コンポステーラを発見したセント・ジェームス」と題された銅像を見た時には、思わず心の中で「ようっ!」と声をかけた。
サンティアゴ行ってきたよ~。




博物館の見学を終え、教会の中へ。
豪華なシャンデリアなどが取り付けられ、マニラ大聖堂よりもきらびやかで明るい雰囲気。





この教会の特徴はこれ。






天井や壁、柱を見ると豪華な彫刻のように見えるのだが、実はこれ全部立体的に書かれた絵なのだ




熱心に祈る信者たち。
ここでは五体投地は見かけなかった。




正面の祭壇の左奥には、スペイン人初代総督レガスピが眠っている。






ここでも最後に寄付をしておいた。
ちゃんとお金を入れる封筒が用意してあったのが印象的だ。




イントラムロスの近くにキアポと呼ばれる下町エリアやチャイナタウンが広がる。
ただし、行ってみた人によると「めちゃめちゃ怖かった」そうだ。
確かにあまり治安が良いエリアではないと聞いている。
今回は特に訪れないことに。




サン・オウガスチン教会を出て最後に向かった先は、フォート・ボニファシオという高級住宅エリアにあるアメリカ記念墓地。

第2次世界大戦中にフィリピンで戦死した1万数千人の米兵が眠る。
ゲートを入ると広大な敷地に広がる芝生(アメリカから取り寄せて植えたらしい)の上に真っ白な十字架が無数に並ぶ。

たまに十字架じゃなく星形の墓石があるが、それはユダヤ教徒の物だという。
一応宗教的配慮あり。





一番奥まで行くと、戦死した兵士たちの名前が刻まれたモニュメントにたどり着く。




そこには、これまでの数々の戦争の軌跡が示されたモザイクが展示されている。









壁に刻まれたおびただしい数の戦死者の名前を見ると、やはり戦争は悲しいと思う。
沖縄の戦争記念館を思い出した。




延々と続く壁。









中には米兵と一緒に戦ったフィリピン人の名前もある。
ここに名前を刻まれることは、フィリピン人の家族にとって名誉なことなのだろうか。


通路には、各州の紋章が掘られている。
それぞれの州の特徴が描かれていて面白い。

アラバマ州。




我がアリゾナ州。




メイン州。





このタワーの中にはモザイクのマリア像。







人は信仰心があるのになぜ戦争をするのだろう、と思った。




この記念墓地もアメリカ大使館もマニラの一等地中の一等地に建っている。






アメリカの国力をまじまじと感じる。


フィリピンはアメリカで成り立っているようなものだとガイドさんは言う。
フィリピン人の夢はアメリカへ出稼ぎに出て一旗揚げること。
アメリカ大使館の前には連日ビザ発給を求める長蛇の列ができている。

子供のころから公用語として英語を習っている強みがあるし、ファストフードなどのアメリカ文化がかなり浸透しているし、目指すはアメリカ。

もちろんそれ以外の国にも結構働きに出ており、サウジアラビアなんかもよく聞く。
とにかく一家の誰かが、あるいは複数名が海外へ出稼ぎに行っているような国だ。
そうでないと暮らしが成り立たない。
フィリピン国内に仕事はなく、あっても低賃金だからだ。

うちの事務所に来ているJanitor(清掃作業員)のチェリーちゃんという女の子は、結構かわいいし英語も上手だ。
この子もいつか海外へ出るのかなあ、などと思ってしまう。
もちろん出稼ぎに行くにもある程度のお金は必要だろう。
それすら工面できない人はフィリピン国内でJanitorなどをしているのだろう。
英語があまりできないJanitorも多いし。

でもこのチェリーちゃんは、掃除をしながら日本語を覚えたりもしているので、かなりやる気がある。
うちのスタッフがたまに彼女に日本語を教えているときもある。
英語も日本語もできれば、海外出稼ぎも夢じゃない?!

が、日本へ公式に出稼ぎに行くには今のところ看護師とか介護福祉士の道ぐらいしかないのでは?
これには大卒だとか看護師資格とかの条件がついているので、チェリーちゃんには無理だ。
じゃあやっぱ、アメリカやヨーロッパで家政婦かなあ。。。




3時間ほどの観光を終えて、リトルトーキョーで降ろしてもらい、日本食屋さんでランチ。
安くてボリュームがあっておいしい。
私は醤油ラーメンセットを注文。
ラーメンと野菜炒めと餃子がついている。
他のセットにも大体野菜炒めがついていたり、餃子か野菜炒めを選べたりする。

みんな野菜に飢えているので、誰もが「野菜炒め!」と注文。
本当に、フィリピンに来てからホテル暮らしの日本人の誰もが野菜に飢えている。



リトルトーキョーの周りのお店もほとんど閉まっており、近くのショッピングモールも午後3時までの営業。
「まにら生活電話帳」という便利な電話帳が欲しくて、そこのモールの中の日本食材屋さんに行ってみたが、すでに2011年版は売り切れとのこと。
3月に知人が行った時はまだ入荷してなくて、4月に入ってからの入荷ということだった。
そして今日行ったらもう在庫切れ。

む、無念。
店の女の子が「もし入荷したら携帯に連絡してあげる」というので電話番号を残してきたが、たぶん無理だろう。


自炊ができないので特に日本食材屋で買うものもなく、久しぶりに文明の香りを感じるスタバでコーヒーを買ってホテルに帰宅。
(私が泊まっているホテルの近隣にはほとんどお店がなく、スタバもない。)

フィリピンでは一番暑い時期に差し掛かっており、半日だけの観光でもぐったり疲れた。
ホテルで昼寝。

明日もまだお店は閉まっているようなので、一日中ホテルでゴロゴロすることになるのだろうか。