『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  159

2012-11-06 08:12:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは、自船が左へ回頭するのを確かめた。そして、後続の各船に目をやり、回頭作業の完了を確認した。
 程遠からぬ位置を進んでいるギアスの舟艇を手招きで呼び寄せた。
 『オ~い、ギアス!聞こえるか』
 『聞こえます』
 『パリヌルスに連絡を頼む。上陸したら全員を整列させてほしい、統領の上陸歓迎だ。浜に横隊、向かって右から左へ閲兵だ。以上だ』
 『判りました』
 舟艇は、勢いをつけてその場を離れていった。
 船団は六条の航跡を海面に残して、浜を目指して進んでいる。目指す先の半島の上の空がほのかに明るい、月が昇り始めていた。こがね色をした月である。淡いながらも黄いろみを帯びた見るからにでっかい月であった。
 オキテスは、停船、下船、上陸の一連の作業指示を、何時、発するかを考えて心の琴線を張りつめていた。
 間をおかず、そのときが訪れた。月の高さがほどいい高さにのぼっている。彼は、アミクスに水深を測らせた、胸辺りの深さだ。すかさず、クリテスに状態を質した。
 『浜まで残すところ、この距離です。もう大丈夫です、心配ありません。停船のうえ、上陸指示を発していただいて結構です』
 『おいっ!アミクス、信号だ!『停船、上陸せよ』だ』
 『判りました』