『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第7章 築砦 ９

　テカリオンは、息つぎもせずに話し続けた。彼は、引き連れてきた者たちを手で招き、持参した荷物を一同の前においた。
　『軍団長殿、持参した土産です。何卒、笑納ください』
　『おう、テカリオン。久しぶりだったな。お前、元気そうで何よりだ。オロンテスに話を聞いて、待っていたのだ。これこの通り、俺の首だが、以前に比べて長くなっているだろう』
　イリオネスは首筋をたたいて、テカリオンと目を合わせた。
　『そして、このように沢山の手土産を持ってきてくれたのか、ありがとう。喜んで受け取るぞ。まあ～、落ち着いて休んでくれ。ところでお前、朝めしは済ませたのか』
　『朝早く、宿を出ましたのでまだですが』
　『宿は、どこにとっているんだ？連れの者たちは何人だ？』
　『6人です、宿はキドニアの西のはずれにとっています。船だまりの近くです』
　『あいや、判った。朝めしを整える』
　『いやあ～、それはありがたいことです』
　『オロンテス、頼む。テカリオンたちの朝めしを整えてやってくれないか』
　『ここに来て朝食をご馳走になるなんて有難いことです。喜んでいただきます。オロンテスどの、お世話になります』
　『テカリオン殿、ここへ来て遠慮はいりませんよ』
　オロンテスは、場を立った。
　『オロンテスから話を聞いて、統領も俺も、パリヌルスたちも、お前の来るのをおそしと待っていたのだぞ。元気な顔を見せてくれてありがとう、積もる話もあるだろう、面白い話を聞かせてくれ』
　『いやあ～、エノスで商いの時、皆に南のほうの話を聞かれた。いま、この事実を目の前にして納得したような次第です』


　　＊お詫びいたします。昨日の投稿で変換ミスをやりました。訂正いたします。＊
　　19行目です。
　　　　　　　　　　出向を　　出航　と訂正いたします。
　　　　　　　　　　　　　　　申し訳ありませんでした。　　山田秀雄