二人の胸の内は、穏やかではなかった。変事の予感に突き動かされるように急いだ。会談の結果は、予想していたとは言え、物別れに終わった。二人の頭の中をよぎったのは、双方、剣を抜き連ねての戦いの情景であった。
『帰りを急ごう! オデッセウス。』
『おう!』
二人は、小走りになって船に急いだ。風は凪いでいる。海も静かだ。ひたひたと船の側面を打つ漣の音がするだけである。水夫たちのざわめきも聞こえない。二人の小者たちを波打ち際に待たせて、オデッセウスとメネラオスは、船中に入った。
強い血の匂いが鼻をついてきた。薄暗いあかりで、二人が目にした光景は、血の海の中に横たわった水夫たちの屍体であった。こうなった以上、一時の猶予も許されない。二人の交わした言葉はみじかかった。
『急ごう! 』
二人は、同行した小者の一人に告げた。
『船が、襲われた。』
『帰りを急ごう! オデッセウス。』
『おう!』
二人は、小走りになって船に急いだ。風は凪いでいる。海も静かだ。ひたひたと船の側面を打つ漣の音がするだけである。水夫たちのざわめきも聞こえない。二人の小者たちを波打ち際に待たせて、オデッセウスとメネラオスは、船中に入った。
強い血の匂いが鼻をついてきた。薄暗いあかりで、二人が目にした光景は、血の海の中に横たわった水夫たちの屍体であった。こうなった以上、一時の猶予も許されない。二人の交わした言葉はみじかかった。
『急ごう! 』
二人は、同行した小者の一人に告げた。
『船が、襲われた。』
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