第１１章 権謀術数 １６

　今日も朝霧は深かった。霧が晴れる、今日の戦いの火蓋が切られた。
　今日は両軍とも、一進一退を繰り返し、戦闘は膠着した。各所で小競り合いはするものの戦闘は激しくなることはなく日は暮れた。
　アキレスは自陣に帰り、主だった将たちを集めて、テーブルを囲んだ。座は目立った手柄話もなく、明日の戦闘展開を模索しながら、肉を焼き、酒を飲み、夕食を終えて床に就いた。
　昨夜からであったが、アキレスは、落ちつきをなくしていた。異様な胸騒ぎ、目にするものが親しげであった。彼は、プリセイスを伴って寝に就いた。愛合は、激しく睦み会った。ただ、何となく、自分の死が、手の届く近さにあることを予感した。
　明けた朝は、微風がそよぎ、霧はたちこめてはいなかった。アキレスは、朝の儀式を、ネガティブな思いを振り捨てて儀式を行った。プリセイスの目には、アキレスがいつもより輝いて見えていた。