第１２章 攻略 ５

　エペイオスの手による木馬造りは、着々と進んでいた。木馬を載せる台車部分が出来あがる頃になって、綿密な設計による木馬の部材が仕上がった。いよいよ、明日から台車の上に木馬を組み上げていくことになった。エペイオス以下３０人の工人たちは仕事に励んだ。日程は予定通りに進んでいた。
　戦野における連合軍とトロイ軍の戦闘は、小部隊の衝突はあるものの、小競り合いが続いていた。ネオプトレモス、ピロクテテス両軍が攻城戦はやるが、損害が大きくなることを恐れて、大々的な戦闘展開は行っていなかった。しかし、デオメデスとアイアースによる考えで、月末に軍団を編成して攻城作戦が計画されていた。
　オデッセウスは、木馬の腹胴に潜ませる１０人の将の人選について考えていた。予定人員に加える兵は、メネラオスの配下の兵とすることにしていた。大作戦決行の日は、半月後に迫っていた。オデッセウスは、静かに腕を撫したのである。
　このとき、花が咲き、鳥のさえずる五月も下旬にさしかかっていた。