『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1000

2017-03-31 08:18:48 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスら三人の打ち合わせが終わる、オロンテスはアレテスのキドニア行き昼便で集散所へ向かう、パリヌルスとオキテスはドックスに声をかけて建造の場へと向かった。
 三人の話し合いは、試作艇の舵の件に集中した。
 『昼めしを食べながら、この件について話し合う。必ず、パリヌルスからいい知恵が出てくる。ドックス、方向が決まったら、即、取り掛かってくれ』
 『解りました』
 『ドックス、段取りは、装備の造作が出来上がったら、直ちに試走する、いいな。明日、完全仕上げだ。俺の考えでは、舷に装備するも艇尾に装備するも造作、作業はさして変わりないと考えている』
 『艇の舷に装備する櫂舵をそのまま艇尾に装備しても、その形態は、取り付け個所を変えただけで何の意味もない。それは合理的とは言えない。水流に対して斜めにしか作動しなければ、操舵効果を発揮せず、取り付け場所を艇尾にしただけになる。装備する以上、よく考えてその仕事をするということだ』
 『そうか、言われてみればうなずける。パリヌルス、いい装備を考えてくれ。頼む、この通りだ』
 オキテスは、パリヌルスに頭を下げた。
 『心得た。任せておけ』
 パリヌルスは、右手に木炭、膝の上に木板、左手に昼めしのパンをもって口へ運ぶ、咀嚼に口を動かす、その律動が思考のリズムである、脳をしぼる、考え浮かぶ知恵を滴らせた。
 艇の進行先をつかさどる舵の働きを考える、艇が進む、舵構造は水中の水の流れに対応している、水中で水を切っている、操舵する、その抵抗が艇を目指す方向に進ませる。舵構造は、水の流れにまっすぐに対峙する、操舵が構造に意思を伝える、舵の水切り構造が働く、艇が操舵によって目指す方向に進む。
 パリヌルスの頭は、思考の理路を歩んで頭中より答えを引き出した。彼は声を上げる。
 『おう、ドックス、舵のカタチができた。ヒナ型を造る。構造図はこれだ』と言って木板の1枚をドックスに手渡した。
 彼はオキテスに声をかける、2枚目の木板をオキテスに見せる、ドックスにも声をかけてその木板をみせる。
 2枚目の木板には、海上に浮かぶ戦闘艇の艇尾を横から見た図が描かれていた。
 『これが舵の操舵担当が操作する腕木だ。これを動かせば、海中の水切り板が動いて水を切る。艇はいく先を決めて進むということだ。解るな』
 『うっう~ん、解る』とオキテス。
 『よくわかります。理屈も納得です』とドックスが答えた。
 『ドックス、とりあえずヒナ型を造って舵構造のイメージをつかめ。舵構造の概略について、これから説明をする』
 ドックスは、2枚の木板に描かれた舵構造の図をまじまじと見つめた。


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